グラスを傾けながら「こんな話があるんだけど…」と、つい誰かに話したくなる。そんなワインのささやかなお話をお届けするコラム、ワインのネタ帖。
ワインを愛してやまない語り手・葉山考太郎さんが、ワインにまつわる逸話や裏話などをくすっと笑えるユーモアとともに紐解きながら、「頭で味わうワイン」の楽しさをご紹介します。
読めばきっと、これからワインを飲むひとときがほんのちょっぴり豊かになるはず。今日の一杯を、物語ごと味わってみませんか。
葉山考太郎さん
シャンパーニュとブルゴーニュを愛するワイン・ライター。 ワイン専門誌「ヴィノテーク」、「神の雫(モーニング)」等にコラムを執筆。 2010年にシャンパーニュ騎士団オフィシエを受章。 主な著書は「クイズでワイン通」「今夜使えるワインの小ネタ(以上講談社)」、「30分で一生使えるワイン術(ポプラ社)」など
「赤ワインと白ワインは何が違うの?」の次によく聞かれるのが、「赤ワインは白ワインより偉いんですか?」。ワイン通は赤ワインを集めている雰囲気がありますし、高額ワインには赤が圧倒的に多いように見えます。
ではなぜ、赤ワインが偉い(ように見える)のでしょう?
まず理由の1つとして、長期熟成に適した赤ワインの資産的な価値の値上がりが挙げられます。
赤ワインの特徴であるタンニン分の渋み。煎茶や紅茶の渋みと同じタンニンにより、赤ワインは長期熟成します。若いうちは、口の中にサンドペーパーを敷き詰めたようにギシギシする渋みが、20年、30年と熟成させるとチョコレートのような甘みに変化し、これが通には堪りません。そういった“通好み”である長期熟成の副次的な効果として資産的な価値が上がり、「格上認定」に繋がりました。
2つ目の理由は、超高額ワインは赤が多くを占めていること。最高価格の白ワインは、ブルゴーニュで造るモンラッシェで、1本200万円。赤は、ご存じロマネ・コンティの500万円。ここから、「赤ワインの方が高額=赤の方が格上」との誤解に繋がりました。
また、そういった高額ワインの流通量も、赤が圧倒的に多いのです。「光の魔術師」として有名なヨハネス・フェルメールは日本で大人気の画家ですが、現存する作品は35点ほどしかありません。一方、ピカソは、最多作画家としてギネスブックに載る15万点も制作しました。フェルメールの市場は成立しませんが、ピカソは単独でもマーケットで活発に取引されています。
超高級白ワインのモンラッシェは、多くて年産4000ケース。一方赤ワインはボルドーのトップである五大シャトーを合わせて10万ケース超。フェルメールとピカソと同じ状況で、「有名、かつ、数が多い」ことはビジネスではとても重要なのです。これも、「赤が偉い」を後押ししています。
最後の理由は、フレンチ系のコース料理のメインが肉料理で、肉料理には赤ワインを合わせることから、「赤の方が格上」との誤解が広まったように思います。
白ワインも、赤に劣らず美味い!
本当のワイン通は、料理に合わせて赤白ロゼを飲みます。序列は気にせず、是非、自分の「特別マリアージュ」を見つけてください。