シャルドネの謎。

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エノテカタイムス
公開日 : 2026.1.5
更新日 : 2026.1.5
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世界中で親しまれる白ブドウ品種、シャルドネ。名前は知っていても、その背景は意外と知られていないかもしれません。今回はワインジャーナリスト・山本昭彦さんとソムリエ・大越基裕さんが、その謎を徹底解説します。知るほどに味わい深くなる、豊かなシャルドネの世界へようこそ。

目次

改めて…シャルドネってどんなブドウ?

シャルドネはピノ・ノワールとグエ・ブラン(現在ではほとんど栽培されていない白ブドウ品種)の交配による品種で、中世ブルゴーニュ、特にコート・ドールやコート・シャロネーズ、マルヌが起源であるとされています。


香りやテクスチャーに強い個性がない“ニュートラル品種”(ニュートラルは「中立的」という意味)と呼ばれ、気候や土壌、造り手の思想を映し出す品種として「ワインメーカーのブドウ」とも呼ばれています。


冷涼地ではレモンや白桃、温暖地ではグアバやネクタリンなどの香りが感じられ、世界各地の気候を映し出す多様なスタイルのワインを生み出します。

2人のプロがシャルドネの謎を徹底解説!

山本 昭彦さん
山本 昭彦さん

ワインレポート代表。読売新聞記者としてヨミウリ・オンラインのワイン欄を担当。2014年に独立。ワイン王国など専門誌に寄稿。

大越 基裕さん
大越 基裕さん

ワインテイスター/ソムリエ。ワインやペアリングに関する講師や講演、レストラン向けワインセレクター、企業向けドリンクアドバイザーとしても活躍中。

シャルドネの7つの謎

謎1:なぜシャルドネは世界的に人気なの?

山本さん

山本さん

シャルドネは香りや味の主張が控えめな“ニュートラル品種” のため、癖がないことから料理に合わせやすいんですね。例えば、ライチの香りが特徴のアロマティック品種、ゲヴュルツトラミネールはフルーティーな風味が強いため合わせる料理を考えてしまう。ワインはそれだけで飲むより、何かと一緒に飲むことが多いと思いますが、ちょっと飲もう、と思った時でも何にでも寄り添ってくれるシャルドネだから世界的に人気があるのだと思います。

謎2:爽やかな味わいからクリーミーな味わいまで幅広い理由は?

大越さん

大越さん

シャルドネの味わいの違いは、ブドウの産地とそれに伴う造り方が大きいですね。冷涼な産地ではブドウの酸味が高く保たれるため、それを生かしてステンレスタンクで発酵・貯蔵することでフレッシュな味わいに。クリーミーな味わいは主に醸造過程によるもので、マロラクティック発酵(※1)によって加えることができます。 ある程度ブドウの熟度が上げられる産地では、酸が高すぎないため果実味を生かすことができます。このため、生産者によっては、あえてクリーミーさを選択しないこともあれば、酸が十分に保てる場合にバランスを見て取り入れることもあります。 また、樽熟成することで舌ざわりが柔らかく、なめらかになります。そして大切なのが造り手の意図。最終的にどういう味わいのワインに仕上げたいか、それに合わせて醸造方法を選択することで味わいのスタイルが変わってきます。

※1 アルコール発酵の後に乳酸菌の働きによって起こる発酵のこと。リンゴ酸が乳酸に変化することで、高い酸が和らぎ、まろやかな舌触りとバターやクリームの風味や複雑味が生まれる。

謎3:安いシャルドネと高いシャルドネ、何が違う?

山本さん

山本さん

シャルドネに限らない話となりますが、価格は、ブドウの原価 や熟成期間、地価の高騰など生産コストに大きく左右されます。特に人気の高いブルゴーニュ産は高値になりがちですが、オーストラリアや南アフリカなどでは、手頃な価格でも質の高いシャルドネが楽しめるので、探してみるといいと思いますよ。

謎4:生魚に合うシャルドネは?

大越さん

大越さん

鯛のような淡白な白身魚やエビ・カニなどの甲殻類にはシャブリのような果実感が控えめでミネラル感のあるシャルドネがおすすめです。マグロやカツオなどの赤身の魚は、フレーヴァー的に合わせるなら赤ワインですが、中トロや大トロは赤身とは違い、脂の味わいが主体なので、コクのあるシャルドネが合います。 生魚とワインのペアリングは難しく、魚に含まれる不飽和脂肪酸がワインに含まれる鉄分と反応して、生臭さを感じてしまいます。アジなどの青魚のペアリングは特に難しく、注意が必要です。ただし、カルパッチョにしてビネガーとオリーブオイルをかけると、酢と油がその反応を抑えてくれるので、料理の仕方によって生魚とシャルドネも美味しく楽しめます。

謎5:なぜ生牡蠣にはシャブリなの?

大越さん

大越さん

シャブリが生牡蠣に合う理由、それはシャブリが果実感が抑えめで少し塩気があるので、牡蠣の旨味を持ち上げてくれる効果があるからです。シャブリはフランスの中でも最も塩気を感じさせてくれるワインのひとつ。とはいえ、実はすべてのシャブリが生牡蠣に合うわけではないんですよ。 例えば瀬戸内海やフランス産の牡蠣は塩気のあるあっさりした味なので、軽いプティ・シャブリや一般的なシャブリが合い、果実の凝縮感があるグラン・クリュでは強すぎになってしまいます。一方、北の寒い地域の牡蠣は栄養を蓄えていて味わいがミルキー。軽いシャブリではワインが負けてしまうことから、プルミエ・クリュやグラン・クリュといった上級キュヴェがいいですね。

謎6:エレガントなシャルドネはどうやって生まれる?!

山本さん

山本さん

その理由の1つは「樽」にあります。熟成するための樽が大きくなると、樽の風味が付きづらくなり、酸素との接触も少なくなります。すると、マッチを擦ったような香りやミネラル感が生まれ、引き締まった酸のあるフレッシュな印象に。今はこうしたエレガントなシャルドネが好まれています。 ブルゴーニュではピエス(228L)と呼ばれる小樽を使い、樽の風味を効かせたスタイルが主流でした。けれども最近は、風味が強く出る新樽の比率を下げ、ドゥミ・ミュイ(500~600L)やフードル(1000L前後)といった中樽や大樽を使う生産者が増えています。

謎7:シャルドネの飲み頃はいつ?

山本さん

山本さん

熟成の目安は2~3年(※2)。冷蔵庫で保管するなら1年が限界ですね。 「ピークを過ぎてた…(泣)」と開けるタイミングを失敗することが多いのがシャルドネ。飲み頃の判断が難しい理由に、プロが飲んだ白の熟成ワインの記録が少ないというのが挙げられます。 私自身、シャルドネは寝かせすぎない方が良いと思います。ワインによりますが、ブルゴーニュのトップ生産者でも10 年程度が目安という声が多いです。抜栓のタイミングが早かったとしたら、2~3 日かけて飲むと酸化の過程で将来の熟成ニュアンスを予測できます。

※2 シャンパーニュは除く

山本さんが語る、シャルドネの世界的トレンド

山本さん

山本さん

1980〜90年代のシャルドネは、樽香がしっかりと効き、アルコール度数も高めで、酸は穏やか。濃厚で力強い味わいが特徴でした。こうしたスタイルは、当時のワイン愛好家や著名評論家ロバート・パーカー氏に好まれ、フランス、イタリア、カリフォルニアなどの主要産地で広く造られていました。当時の気候が今よりも冷涼だったこともあり、通常の造り方ではシャルドネが引き締まりすぎてしまうため、リッチな味わいが尊ばれていたという背景もあります。 1990年代後半から、グローバル化と技術革新が進み、ワインメーカーとコンサルタントの情報交換が活発になったことで、シャルドネのスタイルは多様化。生産者がより土地や気候に合わせた表現を追求できるようになりました。2010年代からは、酸が引き締まったエレガントなシャルドネが人気を集めています。冷涼で寒流の影響を受ける、カリフォルニア南部のサンタ・バーバラやチリ沿岸部、南アフリカのエルギンなども注目の産地です。 今の世界の潮流は「エレガント」。自己主張が強い味わいではなく、アルコール度数が控えめで、フレッシュな酸とミネラル感、そして過度に豊かすぎないバランスの取れたテクスチャーを持つシャルドネが好まれていると思います。

大越さんが語る、シャルドネのペアリングのポイント

大越さん

大越さん

料理と合わせやすいシャルドネですが、実はシャルドネなら何でも合う、ということではないんです。醸造方法や産地の特徴によって味わいの個性が違ってくるので、そのスタイルに合わせてうまく選べば様々な料理と合わせやすい、ということ。 例えば、カリフォルニアのように日照が強いけど冷涼な新世界のシャルドネは、果実感が強くトロピカルなフレーヴァーを持っている反面、強い酸もある。こういったワインには、白桃とエビのサラダ仕立てがおすすめです。白桃とワインの果実感、味の強い甲殻類とワインのしっかりしたボディがよく合います。フランスのシャブリやカナダなど、日照量はほどほどの冷涼な産地では、果実感が控えめで酸がキリっとしてくる。土壌や海に近いテロワールの影響で、ほのかに塩味を感じられ、牡蠣や魚介と合わせやすいです。 また、フランスのブルゴーニュはそこまで冷涼ではないので、果実感が控えめでありながら酸もそこまで強くない。醸造過程で風味をつけやすく、ワインにミルキーな風味が加わるマロラクティック発酵がほぼ行われるため、クリーミーな料理と相性が良くなります。シャルドネは他の品種のように、こんな味です、と一言で言いにくいからこそ、色々なペアリングに使える可能性があるのだと思います。

多様なシャルドネが今後向かう先とは?

「温暖化が加速する中、消費者の食の傾向は重めの料理よりも軽めの方向に向かっており、それに合わせるシャルドネも今後はエレガントなスタイルが続くのではないか」。そう山本さんは語ります。温暖な時代に濃い味わいはそぐわなくなっており、世界的に見ても今は和食のような油や塩分控えめのミニマムな味が求められているとのこと。生産者はこうした消費者の嗜好を踏まえてワインを造ることもあるため、かつてのパワフルでリッチなスタイルには戻らない可能性があります。


また、大越さんが最近飲んで驚いたというのは、南イングランドのシャルドネ。コクがありながらシャブリのような綺麗な酸を備えたそのスタイルは今まであまりなかったとのこと。こうした濃縮感が十分にありながらも果実の風味が前面に出ていないタイプのワインを造るには、冷涼産地ながらブドウが完熟できる気候が必要です。シャルドネの生産者はエレガントな味わいを造るため、より涼しい環境を探し求めています。今後、気候変動に伴って生まれる新たな産地にも注目が集まりそうです。

イラスト=シャプレ

『エノテカタイムス』は全国のワインショップ・エノテカにて配布中です。ぜひお手に取ってご覧ください。 ※一部対象外の店舗がございます。 ※数に限りがございます。期間中でも配布が終了している場合がございます、予めご了承ください。

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