【長谷川あかりのわいん泥棒】スパークリングワインと、ブリと春菊のカルパッチョ風サラダ
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レストランで「乾杯はスパークリングになさいますか?」と聞かれると、だいたい抗えない。本当は別のお酒を頼もうと思っていたとしても、そう聞かれてしまうとつい頷いてしまう。ビールの勢いに身を委ねるほどテンションは高くなくても、じっくりと向き合う赤ワインほどかしこまらなくてもいい。このちょうどよさが、こちらの心の隙をついてくるのだ。
スパークリングは大好きなのに、外では少しだけ背筋が伸びてしまう。 お店の人に「泡はどうですか?」とすすめられれば素直に頷くくせに、自分の口から「泡で」と言うのはかなり照れる。誰も気にしていないとわかっていても、気取っているように聞こえたらどうしようと考えてしまう。
ところが家で飲むスパークリングは、途端に話が変わる。食卓を整える必要もなく、むしろ少し雑なくらいのほうがしっくりくる。買ってきたお刺身でつくる気楽なカルパッチョ、簡単なサラダ、袋から出しただけのハムやチーズを並べるだけでも不思議と全部成立する。形の崩れたオムレツでさえ、グラスの横に置けば「今日はこういう気分」と言わんばかりの表情になるからありがたい。泡の力は偉大だ。
ちなみにフランスやイタリアではアペリティフとして食前酒にスパークリングが楽しまれているらしい。食欲を刺激してくれるし、口の中が軽くリセットされる。食事の始まりとしてこんなにも優秀なものはないだろう。日本でも「アペロ」なんて言葉が聞かれるようになったけれど、まだ明るい夕方に軽く一杯飲みたくなる気持ちはたしかによくわかる(アペロ、も、まだちょっと照れる)。
クリスマスが近づくと、街がだんだん騒がしくなってくる。その空気に引っ張られて、「今日はスパークリングでも開けるか」と思う日も増える。特別な店を予約しなくても、家で作ったグラタンや簡単なマリネ、なんなら普段よく作る鶏のから揚げでも十分。きっと今年のクリスマスも特別な何かが起きるわけではないと思うが、それでもグラスの中で立ちのぼる細かな泡を眺めていると少しだけいい夜になりそうな気がしてうれしい。
わいん泥棒なレシピ:ブリと春菊のカルパッチョ風サラダ
食事の序章にちょうどいい、気負わず作れるカルパッチョ風サラダ。春菊、海苔、ブリ、柚子といった和のイメージが強い組み合わせに、まさかのナンプラー!
和でも洋でもエスニックでもない、どこにも属さない味わいになるのが面白い。このちょっと不思議な一皿を、スパークリングワインがすっと受け止めてくれる。
【材料 2~3人分】
ブリ(刺身用) 120g
春菊 1/4袋(柔らかい葉のみを使用)
焼き海苔 1/2枚
ナンプラー 大さじ1
柚子 1個(果汁大さじ1・皮も使用)
太白ごま油またはこめ油(香りの少ない油) 小さじ2
【作り方】
1.ブリの刺身をできるだけ薄く切る。
2.春菊は柔らかい葉だけを摘み、食べやすい長さにちぎる。よく洗って水気をしっかり切り、器に盛っておく。
※残った茎はさっと炒めて食べると美味しい。
3.小さなボウルにナンプラー大さじ1と柚子1個の果汁大さじ1を入れ、よく混ぜておく。
4.焼き海苔1/2枚を手で小さくちぎり、2の春菊の上に散らす。ぶりを春菊と海苔の上に並べる。3を全体にかけ、太白ごま油またはこめ油をまわしかける。柚子の皮をすりおろし、全体に軽く振りかける。
脂ののったブリのコクに、春菊・海苔・ナンプラーの旨味が重なって、スパークリングと驚くほどよく合う。全体にまとわせた柚子の香りがふわりと立ち、ワインの柔らかな旨みと酸味をそっと後押ししてくれる。
堅苦しくはないのにほんの少しごちそうっぽい雰囲気が出るところがうれしい。この一皿とスパークリングワインさえあれば、なんでもない夜も少しだけ特別になる気がする。
今回合わせたワインはこちら
カルテット・アンダーソン・ヴァレー ブリュット
泡
エレガント&コンプレックス
『シャンパーニュ超え』と呼び声高いクオリティを誇る1本。ルイ・ロデレールがカリフォルニアで手掛けるエレガントなスパークリング。 詳細を見る
4.5
(147件)5,500 円
(税込)
JS 94