奇怪な用語が飛び交うワインテイスティング。フルーツや花ならまだしも、スパイスに、ミネラル、焦げ香??しまいには動物臭?!ですが、これにはきちんと意味があるのです。ソムリエ目線で、毎回難解なテイスティング用語や表現などを解明!
あなたもイメージを膨らませてテイスティングに挑戦してみてはいかがでしょうか。
「昔はよかった」ワインの世界でなくとも、よく聞かれる言葉です。ワインは特にグローバリゼーションが進み、世界中でカベルネ・ソーヴィニヨンやシャルドネによるワインが生まれ、高度なノウハウが広く紹介されることにより、歴史の浅い生産地、ワイナリーが特筆すべき品質のワインを産出するようになりました。また成熟した市場は、より洗練された国際基準のワインを求めます。結果、ワインはそのスタイルにおいて変換を求められるのです。
そんなある種の画一化、洗練を、もの寂しく思う気持ちも分からないでもありません。しかし時代が移り変わる以上、儚いものと認識するしかないと思います。そんなノスタルジーに浸っている人も、昔とは違う自分になっているわけで、それは万事に通ずるものだといえるのです。
現代の食事時間は短くなり、量も少なくなり、料理はフレッシュで、洗練されています。ライフスタイルも然り。そんな時代をワインは反映するわけです。
伝統的なワイン産地はその往年の個性を本当に失ってしまったのでしょうか? 近年、原産地呼称の限界をうそぶく声もあります。造り手、醸造技術の個性が原産地呼称の個性より際立っていると。
Authentic
レ・ラニャイエブルネッロ・ディ・モンタルチーノ2017は、クリーンで洗練された印象、広がりを感じます。サワーチェリー、野バラ、リコリス、カルダモン、さらに生肉、マッシュルームと鮮やかな芳香に複雑さ、奥行きが融合します。味わいはしなやか、やわらかく、エアリーな広がり。舌を掴むような、かつ溶け込んだタンニンが際立った酸味と見事に協調し、直線的な食感を作り出しています。
テイスティングコメントからは、絶対的な品格と風格を放つブルネッロ・ディ・モンタルチーノとは一線を画した、現代的なスタイルを読み取ることができます。しかし、私はこのグラスからは、今も変わらぬ個性、ドライフルーツやドライフラワー、枯葉やタバコの複雑な香り、味わいのふくよかさ、エアリーな広がり、力強く吸い付くような渋み。クラシックなスタイルのワインが共通して持つ、懐かしさを含んだ安心感というブルネッロの真髄ともいえるものをしかと感じることができました。
このワインに「昔とは変わってしまった」という評価は決してフェアではありません。ワインを、造りや造り手で語るのは容易なことのように思えます。木樽の個性は分かりやすいし、凝縮感、長期熟成はグラスではっきりとその特徴を表します。やはり人間は分かりやすいほうになびき、影響を受けやすいものなのでしょう。変わったとしたら、それは飲み手のほうなのかもしれません。
第一印象に囚われ過ぎてはいけない、ワインは生産地、特に伝統産地は、我々が思うよりもっと強くて、もっと深い。原産地呼称はやはり確かで永続的なもの、そう実感させてくれました。オーセンティック、それは言葉の響き以上に「本物」なのだと。
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レ・ラニャイエは、モンタルチーノにおける新進気鋭の造り手です。こちらは様々な標高で育つブドウをブレンドして造られる彼らのフラッグシップ・キュヴェ。凝縮した果実味と上質な酸がバランス良く調和した、洗練された味わいです。
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