熱波がワインにもたらす影響は?

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公開日 : 2023.8.21
更新日 : 2023.8.21
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ブドウ畑

マウイ島の山火事、台風の大型化、記録的猛暑。今夏も熱波による様々な影響が地球上で散見されています。


気候変動問題は今、先進国、開発途上国を問わず、国境を越えて人間の安全保障を脅かす喫緊の課題です。


ワインの世界においてもこの問題は深刻であり、その対策は急務となっています。今回は気候変動に伴うワイン生産の現状についてリポートします。

目次

温暖化の影響

太陽

近年、温暖化の影響でブドウの収穫時期が早まっています。地域差はあるものの、20〜30年前に比べて2〜4週間ほど早まってきた産地が多くなっています。


例えばフランスの主要な産地では従来9月から10月初旬にかけて収穫が行われてきましたが、今では8月から始まることも珍しくなくなりました。フランスの8月と言えばバカンスシーズン真っ最中ですから、収穫のための季節労働者の確保は至難の業となります。また、暑さの厳しい8月の畑での収穫作業は、労働者にとっても非常に負荷がかかります。


ボルドーでは、温暖化対策の一環として2021年1月にINAO(国立原産地名称研究所)が新たにAOCボルドーおよびボルドー・シュペリュールの補助品種として、赤ワイン用品種にトウリガ・ナチョナル、アリナルノア、マルスラン、カステ、白ワイン用品種にアルバリーニョ、リロリーナを承認しました。


これらの新品種は生産者が所有する畑のうち5%、もしくはワインに10%までという制限がありますが、伝統と格式を重んじるボルドーですら、規制変更も止むを得ないと判断したことが伺えます。


アルザスでは、ルネ・ミューレが2015年からフランス南部のローヌ地方の品種シラーを試験的に栽培しワインを生産しています。フレッシュでバランスの良いワインを造るためにはブドウの酸度がある程度必要ですが、温暖化が今後も進めば、これまでのアルザス品種では適度な酸度が得られないと考えているからです。


冷涼な気候のドイツではブドウが完熟するのは非常に稀でしたが、最近は夏の最高気温が40度近くまで上昇するようになり、ブドウが熟しやすくなりました。


ドイツは温暖化の恩恵を受けている国の一つと言えますが、一方で、ドイツの名酒であるアイスワインの生産は困難な状況が続いています。気温の上昇でブドウが凍結しにくくなったためです。2019年の冬はドイツでは過去2番目の暖かさだったため、アイスワインの生産はほんの数件に留まりました。


寒冷なシャンパーニュ地方もドイツ同様にブドウが完熟するようになりました。上質な発泡性ワイン造りに欠かせない酸度の高いブドウはシャンパーニュ地方の特産でしたが、今やイギリス南部でも生産できるようになりました。


大手シャンパンハウスのポメリーはいち早くイギリスに投資し、2020年にはイギリス産ブドウを使用した発泡性ワインをリリースしています。

イタリアでの取り組み

ブドウ

イタリアのワイン業界にかかわる人々にとってもまた、近年の南ヨーロッパを襲う熱波とそれによる乾燥は深刻な問題となっています。


もともとイタリアは温暖で日照にも恵まれ、ブドウ栽培に適した環境であるため、国土のほとんどの地域で昔からワインが造られてきました。そのため、気候変動問題に対して生態系と生物多様性の改善を見据えた国家的長期的な戦略が必要とイタリアのワイン専門家は言います。


イタリアにはその土地で育った固有の遺伝子型を持つ土着品種が多く存在しますが、気候変動には外来品種より土着品種の方が耐性が高いとされています。


また、より深く根を張った古いブドウの樹は、地下のより深いところにある水を吸い上げることができるため、干ばつに対する耐性が高いと示唆されています。つまり、その土地に合ったブドウを使用してワインを造ることが対策の一つとして挙げられます。


また、適切な場所にブドウ畑をつくることも重要です。国際標準大気の定義では、標高が100m高くなると気温は約0.65℃(正確には0.649℃)下がるとされていますから、丘陵地隊や山岳地帯のより標高の高い場所に作付けすることも対策となります。


実際にアブルッツォ州では、植栽の標高規定が海抜600mから800mに引き上げられました。

ブドウ樹の保水にコルクを使用!?

コルク

同じく猛暑と乾燥に苦しむポルトガルでは、ブドウの樹の保水にコルクの使用を試み、初期段階で良好な結果が得られたという報告があります。


世界最大のコルク栓製造会社であるポルトガルのAmorim(アモリム)社のオーナーは、自家農園のブドウの植樹の際にコルクを地中に埋め込んだところ、一定の保水効果が得られたと発表。よって、ドウロ川のキンタ・ノヴァにある6ヘクタールの畑にもブドウの根元にコルクを埋め込み、今後効果を測定する予定と言います。


「急速に温暖化が進む中で、これまで通りのやり方だけでは農業を持続させることができない。伝統的な方法を継承しつつ、革新的な対策も行っていくことが大事」とも述べています。

まとめ

気候変動問題は、個々の行動に直結しています。


美味しいワインを飲み続けるためにも、我々は常にこの問題に関心を寄せ、生産現場を想像し、責任ある消費行動を心掛けねばなりません。

参考文献 ・The Drinks business https://www.thedrinksbusiness.com/2023/07/will-heatwaves-doom-italian-viticulture/ https://www.thedrinksbusiness.com/2023/07/could-cork-help-producers-tackle-climate-change/ ・The World Atlas of WINE 8th EDITION / Huge Johnson & Jancis Robinson

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