奇怪な用語が飛び交うワインテイスティング。フルーツや花ならまだしも、スパイスに、ミネラル、焦げ香??しまいには動物臭?!ですが、これにはきちんと意味があるのです。ソムリエ目線で、毎回難解なテイスティング用語や表現などを解明!
あなたもイメージを膨らませてテイスティングに挑戦してみてはいかがでしょうか。
2012年から続く本連載。テイスティング語彙をフォーカスするという主旨でスタートしました。
「ソムリエは森の下草とか表現するのですよね?」というしばしば寄せられる疑問、興味に答えようというもので、ソムリエもより美しく、創造性豊かな語彙に心奪われていた背景があった、つまり「ワインはロマンティックなもの」だったのです。
今でもその要素はあるわけですが、解釈や捉え方は大きく変わり、造るほうも、味わうほうも、ロマンに浸ってばかりではなくなりました。環境問題、産業の持続可能性といった、より切実で現実的なものが求められるようになった昨今、それはワインの在り方、捉え方、愛で方にも変化を起こしています。
Terroir respect
「テロワール」、伝統国が好んで使うこの言葉は、聞く者を戸惑わせました。
何の香りなのか、どういった味わいなのか、どういう特徴なのかを明確に説明できる人はまずいない、そのまさに神韻縹渺としたところを伝統国ワインの独自性と表していました。
今日、「テロワール」という語彙の理解、使い方は変わってきているように感じています。ワイン産業はサステナビリティに非常に熱心なセクターといわれています。持続可能な農業の実現、生物多様性の尊重に重きが置かれています。それは減農薬、有機肥料の使用といった表層的なものだけでありません。
そこで栽培するブドウ品種はどういったものであるべきなのかに目が向けられています。近年、ボルドーでポルトガル品種が、プロヴァンスでギリシャ品種が認められるなど、気温上昇に対応する変化が起きていますが、「もともとあったものを尊重する」という「変化させない」という動きも現れています。
「ブドウには記憶がある」と古樹の研究で高名な南アフリカのローザ・クルーガー氏は言っています。暑い年、乾燥、多湿、天災、虫害などの経験を経て、それらを予測し、対応することができるというのです。古木が若木を助け、教育する、という栽培家もいます。「年の功」はブドウにもいえるようです。
つまり、その土地に長らく根差したブドウがもたらすのは、ワインとしての特徴に留まらず、農地の健全化、リスク回避、生物多様性の保全などサステナビリティに大きく貢献する、テロワールを尊重したワインなのである、と理解することができます。
トーレスクロ・アンセストラル2021は、凝縮感があり、強く、そして鮮やかで、クリーン、洗練された香りが印象的です。ブルーベリー、ブラックベリー。チャコール、ローリエやタイム、リコリスほか地中海ハーブ・スパイス。クミンやターメリックのエスニックなタッチも感じられます。味わいはスムースで、滑り降りてゆくようなテクスチュア、口中でも凝縮感、密度の高さがあり、非常にまとまりがあります。全体に溶け込んだタンニンがフィニッシュにフレッシュ感を与えます。
スペインワインに国際品種を取り入れ、一世を風靡したトーレスが時代を超えて、古来品種を取り入れる。新しさをもたらした造り手が、もともとあったものの大切さを込めたワイン。現代を象徴するようなワインであり、将来に光明をもたらすワインでもあります。それは「テロワールを尊重することで、その表現が可能となる」というメッセージを含んでいます。
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スペインの名門ワイナリー、トーレスが「古来品種復興プロジェクト」を体現するワイン。テンプラニーリョとガルナッチャに、高温や干ばつに耐性のある黒ブドウ「モネウ」がブレンドされています。華やかなアロマと凝縮感のある果実味が魅力の1本です。
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