【わたしのハレワイン&ケワイン】vol.4 齋藤 まゆさん(Kisvinワイナリー醸造責任者)

お気に入り追加

公開日 : 2023.6.21
更新日 : 2023.6.21
シェアする

あのひとの、特別な日に飲む「ハレ」ワイン、日常に馴染む「ケ」ワイン。


ワイン好きで知られるあのひとに、それぞれのワインと楽しみ方を語ってもらいました。

齋藤 まゆさん
齋藤 まゆさん

早稲田大学在学中に日本でのワイン醸造を志し、同大学を中退。カリフォルニア州立大学ワイン醸造学科卒業後、優秀な成績を修めたことが評価され、同校のワイナリーにて醸造アシスタントに抜擢。その後はフランスのブルゴーニュ地方のドメーヌ・ジャン・コレ、ドメーヌ・ティエリ・リシューなどのワイナリーで研鑽を積み、2013年よりKisvinワイナリーにて醸造責任者として活躍。『ワインの真実/ジョナサン・ノシター著』「訳者あとがきにかえて」にて執筆を行う。

▼ハレワイン

「フランスにブドウの収穫に行った際、ワインに出会い感動して醸造家になった。」これが私の醸造家としての始まりですが、ワインとの出会いはもう少し前に遡ります。


フランスへ降り立ち、真っ先に訪れたボルドー。最初に見学したのがシャトー・オー・ブリオンでした。シャトーのロゴが入ったグラスがずらりと並ぶ試飲スペースで私は初めてワインを口にしました。ワインのワの字も知らなかった当時、音楽や文学などの偉大な芸術を前にして、言葉では説明できないけれどもすごいことがわかる、私にとってのシャトー・オー・ブリオンがまさにそれでした。


我ながら自分は良い感性をしているなと思います(笑)。つまり、私のワインはボルドーから始まりました。なので、特別な日にはシャトー・オー・ブリオンを飲みたいと思いますし、そのために仕事を一生懸命頑張りたいと思えます。

 

醸造家は食えない職業といわれます。ですが、たまにはいいワインを飲んで、特別な日に特別な人と上質なワインを飲めるように醸造家という仕事の価値を上げたいと思っています。


そのためにも最近、次の世代にどのように楽しく働いてもらうか、どうすれば一生の仕事としてワインを選んでもらえるかを考えるようになりました。私のいたブルゴーニュのドメーヌ・ジャン・コレは、現在4代目。ワイナリーの祖父母、両親の家の地下には巨大なセラーがあります。そこには、子供たちのバースデーヴィンテージやその近辺のヴィンテージのワインが大量に熟成されています。


ブルゴーニュでは子供が生まれると、その年からワインを買い集め、そうして熟成されたワインは、家族が集まる機会に振舞われます。ワインにはワインそのものでしか教えられないことがある。そうやって代々、ブルゴーニュでは文化として、ワインを伝えています。


私も2013年に息子が誕生し、エノテカのレンタルセラーでブルゴーニュやボルドーのワインを寝かせています。これは私のハレワインではなく、息子のハレワイン。文化としてのワインを伝えるために、買いためています。びっくりするほど美味しい経験を次の世代に伝えるために。

▼ケワイン

醸造家として、普段ワインは勉強用に購入することが多いため、ケワインは主に自分が造っているワイン(甲州、シャルドネ、ピノ・ノワール)です。


私自身は仕事に対してさほどストイックではないと思っているのですが、ワインに対しては普段から鋭敏な神経で向き合う必要があると考えています。価格に対する品質、市場でどんな味わいが求められているのか、醸造上のミスはないか、私だったらこんな風に造るだろうな…など、つい考えてしまうため、ワインを飲んで酔っぱらうということはないかもしれません。


ただ、そんな中でも「うわ、美味しい」と、醸造家でなく一人の人間として安らぎを与えてくれる美味しいワインに出会うこともあります。


キスヴィンでは畑に冷蔵庫があって、私が勉強用に開けたワインは社内でシェアするようにしています。「これ持って帰っていいよ~」と声をかけ、スタッフは各自ワインを小瓶に入れて持ち帰ります。自分の仕事をどうやって後進に伝えていくか、大変ですがやりがいを感じながら取り組んでいます。

    この記事をシェア

    公式SNS・APP

    最新情報やワインの読み物を 毎週お届けします

    line お友達登録

    お買い物に便利! アプリ限定クーポンも随時配信

    公式アプリ

    ストップ!20歳未満飲酒・飲酒運転。
    妊娠中及び授乳中の飲酒は、胎児・乳児の発育に悪影響を与える恐れがあります。

    ほどよく、楽しく、良いお酒。のんだあとはリサイクル。

    エノテカ株式会社はアサヒグループです。