みなさま、こんにちは。神戸三田店の藤原です。
いつしか花の盛りも過ぎ、春の日差しに葉桜がまぶしい頃となりました。学生時代、古文の授業で習った「世の中にたえて桜のなかりせば春の心はのどけからまし」という名歌を思い出すなど、惜春の情に駆られています。
見事だった桜が葉桜になっていくのを見ると、なんとも言えない物悲しい気分になるのですが、明るい気分を取り戻すべく、今日はイタリアの中でも底抜けに明るいイメージのある産地のワインを試してみることにしました。
イタリアのトップワインメーカー、アンティノリ社が南イタリアのプーリア州で手掛ける「ボッカ・ディ・ルポ」です。
このワインに使われる品種、アリアニコは南イタリアらしい活力に満ちたブドウで、しっかりとしたタンニンや酸があり、長期熟成が可能。深い果実味、スパイスやチョコレートなど、複雑なニュアンスを持っています。また、火山質土壌との相性がよく、バジリカータ州やカンパーニア州、プーリア州など南イタリアでよく栽培されるブドウです。
抜栓直後の印象は、非常に強い果実味と堅牢なタンニンなど、熟成のポテンシャルの高さを感じます。
デキャンタージュすると時間とともに様々な香りが溢れ出します。黒系果実にスグリ、甘草、バルサミコ、コショウや香りの強いアニスのようなスパイス。小樽を使っていることにより、カカオのような樽香も豊かです。
タンニンと果てしない深みのある豊かなボディを感じますが、フルーティな表情もあり、フレンドリーな印象です。更に時間が経つとドライフルーツやチェリーなどの、密度の高いジャムのような風味も顔をのぞかせてくれます。
特徴的なのは、石灰石と砂で構成された火山質土壌由来の涼やかなトーン。暖かい気候で作られる豊かな果実味のあるタイプの、いわば南イタリアの要素が強い味わいのなかから、ミネラル感も感じられました。
「南のバローロ」の異名もあるこのワインですが、時間とともに味わいが変化し、複雑な印象がある部分は確かにバローロのような雰囲気がありました。
しかしバローロよりもはるかにフレンドリーで、香りが開いたあとは陽気なキャラクター性が見えてきます。「バローロのようなワイン」ではなく、「バローロのような複雑みと南イタリアの陽気さを併せ持ったワイン」であると感じました。
お料理を合わせるなら、ローズマリーの効いたシンプルな羊のロースト。バルサミコソースを合わせるのもよさそうです。香り高い樽やカカオの要素は、ビターで濃厚なガトーショコラにもよく合いました。
こういう明るい要素のあるワインはいいですね。気分が上向きになってきました。
時間をかけて複雑な要素の変化を楽しんでいたら、このワインを飲む前の「惜春の思い」はどこかへいってしまいました。これも一種の花より団子でしょうか。
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