中国は今、かなりのワイン大国であることをご存知でしょうか?コロナ禍以前のインバウンド需要からもおおよそ察しがつく通り、ここ数年の中国のワイン消費量はアメリカやフランス、イタリアなど世界のワイン大国に追随しています。
また、最近はフランスの大手ワインメーカーが中国に進出、世界トップレベルのワインと同じ価格帯のワインを世に送り出しています。
しかし残念ながら中国ワインの知名度は、同じアジア圏の日本においてもまだまだ低いのが現状です。そこで今回は中国のワイン事情をお伝えしたいと思います。
近年の中国ワイン
第二次世界大戦後からワインの世界は目まぐるしく変化してきましたが、中でも中国のワイン市場は21世紀初頭から驚くべきスピードで進化しています。
日本がバブル経済に湧き高級ワインやボジョレー・ヌーヴォーが人気を集めた1980年代、中国でワインはあまり知られていませんでした。
しかし今や中国のワイン消費量は2020年で世界6位(O.I.V:国際ブドウ・ワイン機構による)、さらに驚くべきはワイン生産量も世界6位〜8位内のアルゼンチンや南アフリカと同程度とされており(正確な統計入手は困難ですが2017年予測では8位)、中国は既に世界の主要ワイン生産国に仲間入りをしています。
そんな中国で都市部の社会にまでワインが入り込んだのは20世紀後半以降のことです。
大都市の中産階級や富裕層による需要の高まりで2000年代にはボルドーワインが中国のワイン市場を独占。当時ボルドーワインの最大の輸出先は上海や北京でした。
ワイン造りに関しては、2008年にシャトー・ラフィット・ロートシルトを筆頭にシャトー・デュアール・ミロン、チリやアルゼンチンでもワイン造りを行うドメーヌ・バロン・ド・ロートシルトが山東省煙台に、2009年にはシャンパーニュメゾンのモエ・エ・シャンドンをはじめ多くのブランドを有するLVMHグループが雲南省に進出し、プレミアムワインの生産を始めました。
中国では2世紀頃には中国西部でワインが造られていたのではと言われていますが、ヨーロッパのブドウ品種が中国東部にもたらされたのは19世紀後半です。
ボルドーワインが中国の市場を席巻していた2000年当初、中国で造られたワインは国内でも不人気でした。というのも、中国産のワインは輸入ワインの偽造や模倣、濃縮果汁や未発酵果汁をブレンドされたものなどが多く見受けられたからです。
しかし昨今は、中国で国産ワインの品質とイメージを向上させる取り組みが活発になっており、ブランドワインの本拠地とみなされるようになった山東省煙台市に続いて、寧夏、新疆、河北などの地方政府でもワイン産業を地元の基幹産業に育てようとする取り組みが進んでいます。
なお、2020年の中国のワイン消費量は1240万へクトリットルで2019年より17.4%減少しました。これはコロナウイルスによるロックダウンとホスピタリティ産業の不振が響いたと見られています。
中国ワインの概要
中国は広大ですから標高や緯度も幅広く、気候は極端、風土も多様です。
内陸部は典型的な大陸性気候で、特に冬の厳しい寒さでブドウ樹が凍結しないよう、毎年秋になるとブドウ樹の株の周りに土を盛り、凍結からブドウ樹を守らなければなりません。
一方、沿岸部や南部、中央部は冬から春にかけては非常に乾燥していますが、夏はモンスーンの影響で大雨が降ります。多くのワイナリーがある山東省は、海洋性気候のため比較的温暖で、冬の防寒対策は不要です。
現在、中国で栽培されているブドウ品種は当初のボルドーワイン人気の影響を受け8割近くが黒ブドウで、カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロなどの国際品種が主流です。
その他、1961年にカベルネ・ソーヴィニヨンとグルナッシュの交配品種として生まれたマルスランや、カルメネールの一種とされるカベルネ・ゲルニシト(蛇龍珠)も主要品種となっています。
主な産地
ここからは中国のワイン産地をご紹介します。
山東省
山東省は中国東部の沿岸にあり、日本人もよく知る青島があります。その青島から北東に200kmほど行った山東半島にある煙台(エンタイ)が有名なワイン産地です。
海洋性気候で比較的温暖のためブドウ樹の冬の防寒対策も不要、水捌けの良い南向きの斜面に恵まれた土地です。
1892年、中国ワインの草分け的存在である「張裕(チャンユー)葡萄醸酒公司」が設立されたのがここ煙台で、現在、中国の多くのワイナリーが本拠地を置いています。前述のドメーヌ・バロン・ド・ロートシルトも煙台でワイン造りを行なっています。
河北省
内陸の河北省はワイン生産量では山東省についで2番目で、北京に近く、万里の長城へ向かう経路途中にあります。
山東省より雨が少なく長い生育期間に恵まれていますが、冬は極寒のためブドウ樹の防寒対策のため、樹を土に埋めておかなくてはいけません。
生産量が多い沙城(サジョウ)地区は、河北省の北部に位置する盆地で、日照時間が長く昼夜の寒暖差があるのでブドウ栽培に適した産地となっています。
まとめ
今のところ日本では中国産ワインを見かけることはあまりありませんが、中国は世界が最も注目しているワイン産地であることは確かです。
これからどんなワインが生まれるのか、非常に興味深いですね。
参考文献:The World Atlas of WINE 8 EDITION 世界のワイン図鑑第8版