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スタイリッシュなジャズを聴きながらワインを飲みませんか?

葉山 考太郎
葉山 考太郎
葉山考太郎のコラム
公開日:2022.1.21
更新日:2022.1.20
スタイリッシュなジャズを聴きながらワインを飲みませんか?

ワインは、食事と共に楽しむのが基本中の基本ですが、ワインとのマリアージュは食べ物だけではありません。


日曜日の遅い時間に目が覚めて、ベッドの中で短編小説を読みながらシャンパーニュをすすったり、愛する人とPCの小さい画面で甘いロマンス映画を見ながら、赤ワインを飲んだりと、いろいろな「芸術とのマリアージュ」もあります。


1月22日は「ジャズの日」。今回は、40年近く前、日本のテレビCMに登場した有名ジャズ・ミュージシャンを回想しつつ、ワインとジャズのマリアージュを取り上げます。

目次

「ジャズの日」の強引な由来

7月10日が「納豆の日」、3月14日が「円周率の日」は分かりやすい記念日ですね。


11月11日が「乾電池の日」はなぞなぞみたいな理由があり、漢数字で「十一」を縦に書くと「±」になるためです。


1月22日が「ジャズの日」はもっと謎が満載で、都内の有名なジャズクラブ、「バードランド」「サテンドール」「オールオブミークラブ」を中心にしたオーナーが「ジャズの日実行委員会」を組織し、「JAZZの『JA』が『January』の2文字であり、『22』が『ZZ』に見える」という強引なこじつけでした。


ちなみに、毎月20日が「ワインの日」で、理由は20のフランス語『vingt』がワインのフランス語『vin』と同じ『ヴァン』の発音だからという力業です。なお、日本の「ジャズの日」は、21世紀の最初の年である2001年から「施行」されました。


海外ではどうでしょう?日本での「ジャズの日」制定の10年後の2011年、ユネスコが4月30日を「国際ジャズ・デー」にしました。


超人気ジャズ・ピアニストであり、ユネスコ親善大使でもあるハービー・ハンコックの発案によるそうですが、なぜ4月30日かはいろいろ調べても分かりません。


1日前の4月29日は、世界的なビッグバンドのリーダー、デューク・エリントンの誕生日ですが、誰か特定の人に由来する日を選ぶと、他のミュージシャンの熱狂なファンから文句が出るのを恐れたのかも知れません。

ミュジニーと『処女航海』

1985年は、ジャズ愛好家にとって奇跡的な出来事がありました。「国際ジャズ・デー」を制定したユネスコ親善大使であり、私がジャズにハマるきっかけとなったハービー・ハンコックがサントリー・ホワイトのテレビCMに出演し、生の声でしゃべったことです。


ジャズ・ミュージシャンがテレビCMに登場するのは、大化の改新以降、初めてで「私と同世代の人がCMを企画しているに違いない」と少し感動しました。


しかもCMでは、あらゆるジャズの曲の中で最もスタイリッシュであり、「ジャズ界のシャンボール・ミュジニー」と私が確信している『処女航海』をハンコックがピアノソロで弾いています(youtubeで視聴できます)。


私が無人島に流されるのなら、コント・ジョルジュ・ド・ヴォギュエのミュジニーと、『処女航海』のCDと、ユニークな語釈で有名な『新明解国語辞典』、通称「新解さん」を持っていきます。

『処女航海』 / ハービー・ハンコック

で、朝の10時ごろ、木陰に座り、『処女航海』をバックグラウンドで流し、少し冷やしたミュジニーを大ぶりのブルゴーニュグラスに注ぎ、『新明解国語辞典』を拾い読みし、「動物園」の定義として、「生態を公衆に見せ、かたわら保護を加えるためと称し、捕らえて来た多くの鳥獣・魚虫などに対し、狭い空間での生活を余儀無くし、飼い殺しにする、人間中心の施設」を読んで、「なるほどなぁ」と感心する至福の時間を過ごすのです。


CMに出演した「ハンコックの奇跡」は第2弾がありました。同じサントリー・ホワイトのCMの別バージョンでは、ハンコックの出世作、『ウォーターメロン・マン』を披露しました。


この曲は、『処女航海』とは正反対の陽気なカリプソ風で、「スイカはいらんかえ~」と行商しているオバチャンの雰囲気が満載。ランチで、スパゲッティを食べ、ラングドック・ルーション辺りの素朴な白ワインを飲みながら聴くのに絶好です。

ロン・カーターにはサンテミリオンを

同じ1985年の同じサントリー・ホワイトのCMで、ハンコックの次に、ベーシストのロン・カーターが単独で登場。自身が作曲した『ダブルベース』を演奏し、もう一度ビックリしました。


ハンコックの『処女航海』ではロン・カーターがベースを担当。ハンコックとは共演が非常に多く、ヘンデルとグレーテル、お染と久松、ロミオとジュリエットなら、ハービー・ハンコックとロン・カーターです。


なので、ハンコックの次にロン・カーターが出てくるのは自然な流れですが、ベースが非常に地味な楽器であることを考えると、CMの企画担当者の大英断だと思います。


その後、ロン・カーターは日本で人気になり、タリーズ・コーヒー、ゼリア新薬、第一生命のCMに登場。遂には、1992年5月15日、『徹子の部屋』に出演し、ベースでバッハを弾きました。


ロン・カーターは、身長が190cmとスタイリッシュで、学者のように知的な風貌があり、しかも、ジャズ・ベース界の超大物なので、日本で大人気なのでしょう。


私の中では、ロン・カーターはブドウならメルロです。主役のカベルネ・ソーヴィニヨンであるハービー・ハンコックを裏から縁の下の力持ち的に支えるのではなく、表舞台でスタイリッシュに「共演」しているように見えます。


メルロの比率が高いサンテミリオンの赤ワインを飲みながら、ロン・カーターのベースソロを是非、聴いてください。時々、微妙に音程を外すのですが、それもロン・カーターの魅力です。

ジャズ初心者には『カインド・オブ・ブルー』

1985年のテレビCMには、実は、もっと大きな奇跡が起きました。ジャズ界の圧倒的なレジェンド、マイルス・デイヴィスがテレビCMに出演し、生の声でしゃべったことです。しかも、焼酎を飲んでいる……。


マイルスは、クラシックで言えば、バッハ、ブラームス、ベートーベンの通称「3B」と、チャイコフスキーと、ドビュッシーと、ラヴェルと、スメタナを足して3倍した超巨匠。しかも、極度の人嫌いで、よくぞ、CM出演を納得させたなぁと物凄く驚きました。


世界で圧倒的に有名な絵画が『モナリザ』、圧倒的に消費量の多いシャンパーニュがモエ・エ・シャンドンのアンペリアルなら、ジャズ界で圧倒的に売れたアルバムがマイルス・デイヴィスの『カインド・オブ・ブルー』です。1959年にリリースしたこのアルバムは、今でもベストセラーで、1,000万枚以上を売り上げました。


なぜ、このアルバムがこんなに売れたのか?答えは「今では当たり前の技法ですが、当時として非常に革新的なやり方を取り入れたから」です。


当時(今でも)、ジャズのアドリブは、和音に基づくのが超基本で、例えばコードがCなら、ド、ミ、ソの3音と、ドから7番目の音であるシ♭を使ってメロディーを即興で演奏します。マイルスは、「これでは制限が多くて自由にアドリブができない」と考え、コードではなく音階をベースにしてアドリブを演奏する方式を編み出しました。


C→Dm7→G7→Cみたいに、ちまちまコロコロとコードが変わるのではなく、「ここの8小節は沖縄音階、次の8小節はアラビア音階で、次はド演歌音階に変えて……」という「モード奏法」をマイルスがジャズ界で初めて取り入れたのです。これが、『カインド・オブ・ブルー』の1曲目の『ソー・ワット』です。


レコーディング当日、マイルスから「コードではなく音階を換えてアドリブをするんだ」と突然言われたジョン・コルトレーン、キャノンボール・アダレイ、ビル・エバンスはビックリします。


特級畑、シャンベルタン・クロ・ド・ベーズで、ピノ・ノワールだけを使ってヴィンテージ・ワインを造っていた醸造家が、突如、エペルネに連れてこられ、いろんな畑の、いろんなヴィンテージの、白黒ブドウを使って自由にシャンパーニュを造れと言われたようなものです。


メロディーに関係ないドラムスのジミー・コブ以外が、マイルスの無理難題に驚いて「そんなの、できっこありません」と言ったところ、マイルスは口癖の「ソー・ワット(だから、どうだと言うんだ?)」と返答したところからこの曲のタイトルになったとか。


気持ちが動揺したままのビル・エバンスは、いつものリリカルなメロディーのアドリブではなく、コードを弾いてお茶を濁しているのでは?と思うのは私だけではないと思います(その代わり、同アルバムの3曲目、『ブルー・イン・グリーン』では、ビル・エバンスの生涯最高のアドリブを披露しています)。


ちなみに、『ソー・ワット』で使っている音階であり、ロックンローラーにもお馴染みの、「Dのドリアン」は、『君が代』と全く同じ音階で、『ソー・ワット』を再生しながら『君が代』を演奏すると、ピタリと合います。両者は、シャンベルタン・クロ・ド・ベーズとシャンパーニュほど大きく違いますが、ピノ・ノワールを使うという共通点があり、実は、『ソー・ワット』と『君が代』は根っこで繋がっているのです。


ジャズのCDを買ったことがないけれど、1枚買いたいなら、間違いなく『カインド・オブ・ブルー』を買うべきです。60年以上も前、まだジャズが異端の音楽だったころ、雑木林だった荒野に道を切り開いたのがこのアルバムです。シャンベルタンとシャンパーニュを交互に飲みながら、聴いてはいかがでしょうか?

葉山 考太郎
葉山 考太郎

シャンパーニュとブルゴーニュを愛するワイン・ライター。 ワイン専門誌「ヴィノテーク」、「神の雫(モーニング)」等にコラムを執筆。 2010年にシャンパーニュ騎士団オフィシエを受章。 主な著書は「クイズでワイン通」「今夜使えるワインの小ネタ(以上講談社)」、「30分で一生使えるワイン術(ポプラ社)」など

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