フランス・パリに構える「ル・タイユヴァン」は、1946年に創業し、1973年から30年もの間三ツ星の座を守り抜いた老舗レストランです。

2020年11月にはタイユヴァンにとって世界初のカジュアルダイニング業態である「エスプリ・ド・タイユヴァン」を東京・丸の内にオープンしました。

「エスプリ＝精神」とあるように、気軽にタイユヴァンのワインや料理を楽しめだけでなく、そこにはタイユヴァンの精神が詰め込まれています。

今回はそんな「エスプリ・ド・タイユヴァン」の魅力を店舗開発担当者である中杉さんに訊きました。

「エスプリ・ド・タイユヴァン」の魅力は、フランスの星付きレストランを東京で、手軽に、手の届く価格帯で楽しめることにあります。

そしてエスプリ・ド・タイユヴァンはタイユヴァンの強みとエノテカの強みが融合したものだと思っています。

エノテカの強みはやはりワインです。ワインのプロであるスタッフがいて、ワインショップを長年運営していること。

ショップ全体がワインリストとなって、お店でワインが飲めるという空間を提供したいという強い想いがあります。だからこそただのレストランだけではなくワインショップが併設されたお店となりました。

そしてタイユヴァンの強みはパリの老舗であるということ。本場の知見があるというのは何にも変えられないことだと思います。

店舗の立地を考え、タイユヴァン初のカウンターメインのダイニング、パリのカフェの雰囲気を出すようテラス席を設けるなど、お店のコンセプトが固まりました。内装のデザインはパリのタイユヴァンのチームが主導で行ったので、よりタイユヴァンのエスプリが詰まっている空間に仕上がりました。

料理においては彼らがパリで実際に提供しているメニューを出すことも案にはありましたが、それではエノテカがやる理由が見出せません。タイユヴァン側も日本が大好きなので、日本の旬の食材を使い彼らのエッセンスを取り入れた料理を提供することになりました。

パリとロンドンで、タイユヴァンが運営するブラッスリー「レ･サンディス･ド･タイユヴァン」の料理をベースにしながら、日本の食材を使ってアレンジしたものを提供しています。

このようにワイン、料理、サービス、そして空間においてエノテカの強み、そしてタイユヴァンの強みが融合して完成しました。

そして店名にあるようにタイユヴァンの“エスプリ”、精神を手軽に体感できるのが「エスプリ・ド・タイユヴァン」なのです。

私がタイユヴァンの精神を最初に感じたのは2018年6月、初めてパリのタイユヴァンを訪れた時です。この訪問は私にとって、ものすごく衝撃的なものでした。

それまでパリの名門レストランに行ったことがなかったので、フランスのサービスマンに対して勝手なイメージを持っていました。

フランスのソムリエやメートル・ドテルなどはフロアにおいて彼らが主役になるのではないかと思っていたのです。派手にサーブをしたりおしゃべりをしたり「俺が、俺が」と主張してくるのかなと……。

そんな先入観を持ってタイユヴァンに踏み入れたので、驚きました。言ってしまえば、足音一つしなかったのです。

私がタイユヴァンの方々と談笑をしながら食事をしていても、料理をサーブするときも引くときも気配を感じませんでした。まさに黒子です。

私が想像していたフランスのサービスと全く逆だったので、それはすごく衝撃を受けました。

元総支配人も「フランスにおいても主役は当然お客様だ」とよく言っていましたね。

こういった厳かなサービスがタイユヴァンの流儀であり、タイユヴァンの精神の一つなのだと実感しました。

タイユヴァンを日本で展開するにあたり、こういったタイユヴァンのサービスも学びました。

2018年以降は毎年パリに赴き、タイユヴァンのサービスを受けたり、タイユヴァンだけでなく参考になるお店を紹介してもらい行ったりと、フランスの“今”というものを勉強しました。

そして実際に店舗で働くスタッフに対しては、年に2回パリから総支配人を招いてレクチャーをお願いしていました。

歩き方やサーブの仕方をはじめ、ワインの銘柄ごとにおすすめの仕方を教えていただくだけでなく、料理の試食をしていただきシェフに対してもアドバイスがありました。

それらすべては「フランスのタイユヴァンと同質でありたい」という思いが込められています。だからこそ所作一つとっても、本場フランス直伝のものでないとならないのです。

タイユヴァンが掲げるコンセプト“食とワインの調和”を、フランス・パリと同じ質でお客様に体感してもらうのが私たちの役目だと思います。

カジュアルダイニングなので、気軽に楽しめる空間ではありますが、料理、ワイン、サービスにおいてもすべてが本物です。

そんなパリの星付きレストランのエスプリを東京で感じられる「エスプリ・ド・タイユヴァン」にぜひ一度足を運んでいただきたいです。