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銀河系で最も派手なシャンパン「アルマンド」

葉山 考太郎
葉山 考太郎
葉山考太郎のコラム
公開日:2021.4.1
更新日:2021.10.18
アルマン・ド・ブリニャック

世界最高価格のワインがロマネ・コンティなら、銀河系で最も派手なシャンパーニュがアルマン・ド・ブリニャック、通称「アルマンド」でしょう。

一度、このピカピカのシャンパーニュを見れば、強烈に印象に残ります。宅配のピザをオーダーしたところ、ドアのチャイムがピンポーンとなり、「お待たせしました」とフェラーリに乗ったカトリーヌ・ドヌーヴがデリバリーに来た感じでしょう。

私の周囲のワインのプロや、熱烈なワイン愛好家に聞いたところ、「アルマンド」を飲んだことのある人が皆無でした。

今回は、派手なのに謎だらけのシャンパーニュ、アルマン・ド・ブリニャックを解説します。

目次

アルマン・ド・ブリニャックの7つの特徴

アルマン・ド・ブリニャック

「アルマンド」には、いくつも珍しい特徴があります。派手な外見に似合わず、結構、真面目な優等生なのです。主な特徴を7つ紹介します。

1.マルチヴィンテージ

世界中のワインの生産者の最高価格のフラグシップワインやトップキュヴェは、ほぼ、ヴィンテージ物です。

複数年のブドウをブレンドする「マルチヴィンテージ」が最高峰という数少ない例外が世界に3つあります。

ヴェガ・シシリアが造るスペインの至宝、「ウニコ・リゼルヴァ・エスペシアル」、シャンパーニュの老舗、ローラン・ペリエの「グラン・シエクル」、そして、アルマン・ド・ブリニャックです。

最高の品質を追求したらマルチヴィンテージになったのです。

2.出席番号が1番

ワインリストや解説書では、ボルドーのシャトーや、ブルゴーニュのドメーヌを並べる場合、北にある村から列記します。ボルドーなら、サンテステフ村、ポイヤック村、サン・ジュリアン村、マルゴー村、グラーヴ地区、右岸のサンテミリオン地区、ポムロル村のシャトーの順番でしょうし、ブルゴーニュなら、ジュヴレイ・シャンベルタン村、モレ・サンドニ村、シャンボール・ミュジニ―村……の順に並びます。

シャンパーニュの場合、いろんな村のいろんなブドウをブレンドするため、村の位置ではなく、生産者の名称をアルファベット順にリストアップすることが慣習になっています。

で、シャンパーニュの出席番号1番は、長い間、「アヤラ」でした(アンドレ・クルエと、アルフレッド・グラシアンは、それぞれ、「C」と「G」です)。この出席番号1番が、「転校」してきたアルマン・ド・ブリニャックになりました。

それまで、秋田晶子ちゃんが3年C組の出席簿の最初だったのに、青山愛ちゃんが転校してきてから、出席番号1番が変った感じでしょうか。

3.創立者が存命

ワイン愛好家は先刻ご承知ですが、自分が所有する畑のブドウだけでシャンパーニュを造る小規模生産者がレコルタンで、栽培農家からもブドウを購入してシャンパーニュを造る大規模生産者がネゴシアンです。レコルタンが川口や大森にある職人技を競う町工場としたら、ネゴシアンはトヨタや日産の大手企業の雰囲気があります。

大手の生産者、ネゴシアンで設立年が最も新しいのがブルーノ・パイヤールで、1981年でした。パイヤール氏が来日した折、試飲会を開き、その時に氏が最初に威張って言った言葉が、「ウチはネゴシアンの中で最も新しく、しかも、創立者が生きているぞ」でした。

この記録は、アルマンドが破りました。アルマン・ド・ブリニャックは1996年の創立で、創立者のジャン・ジャック・キャティア氏は存命です。

4.21世紀に初出荷

アルマン・ド・ブリニャックは、創立が1996年で、しかも、シャンパーニュの初出荷は2006年と21世紀になってからです。

初出荷が21世紀というネゴシアンのシャンパーニュはアルマン・ド・ブリニャックだけでしょう。

5.超巨大ボトルが揃っている

ワインエキスパートやソムリエの資格試験を受ける場合、ボトルの種類を覚えねばなりません。

シャンパーニュの場合、1,500ml(2本分)がマグナム、3,000ml(4本分)がジェロボアム、4,500ml(6本分)がレオボアム、6,000ml(8本分)がマチュザレム、9,000ml(12本分)がサルマナザール、12,000ml(16本)がバルタザール、15,000ml(20本分)がナビュコドノゾールで、受験勉強ではこの大きさまで暗記しなければなりません。

この覚えにくい名前は聖書に出てくる王様の名前で、日本風に言えば、スサノオ・ボトル、イザナミ・ボトル、ヤマトタケル・ボトルみたいなものです。

マニアックな知識ですが、シャンパーニュには、ナビュコドノゾールより大きいボトルが存在します。それが、18,000ml(24本)のサロモン、27,000ml(36本)のプリマ、最大容積が30,000ml(36本)のメルキゼデックです。

30リットルのメルキゼデックは、別名、ミダス。ギリシャ神話では、ミダスは、触った物を全て黄金に変える力を持った神様で、アルマン・ド・ブリニャックそのものですね。

もちろん、アルマン・ド・ブリニャックは、この最大容積のミダスボトルも造っています。

ミダス・ボトルとレギュラーボトル

ミダスボトルとレギュラーボトル

ミダスボトルの重量は50kgはあるでしょう。中学2年生分の重さですね。どうやって抜栓して、どのようにグラスへ注ぐのか、とても興味があります。

ちなみに価格ですが、ネット検索したところ、950万円でした(なので、1本のワインの価格としてはロマネ・コンティより高価です)。ピカピカの金色に輝くミダスボトルは、王様のシャンパーニュであり、シャンパーニュの王様ですね。

6.世界的なラッパーがオーナー

アルマン・ド・ブリニャックのオーナーは、なんと、グラミー賞を21回も受賞した超大物ラッパー、ジェイZです。

1996年に自分のレーベルである「ロッカフェラ・レコード」を立ち上げ、自身の初アルバム、『リーズナブル・ダウト』を発表。この大ヒットを皮切りに、以降、リリースしたアルバムがメガヒットします。

2006年に発表したミュージックビデオ、『ショウ・ミー・ワット・ユー・ゴット』の中でアルマン・ド・ブリニャックを取り上げてから、同メゾンとの提携を開始しました。2008年には、人気歌手にして女優、ビヨンセと結婚。世界一稼ぐカップルとなります。

2014年には、同メゾンの株式を100%買収し、オーナーになりました。1,000億円以上の個人資産を持つジェイZには、同メゾンの買収は、普通のワイン愛好家がアルマン・ド・ブリニャックを1本買う程度のことなのでしょう。

これにより、「大富豪ラッパーのメゾン」という「豪華な勲章」が加わりました。

7.世界的な贅沢品企業、LVMHと提携

アルマン・ド・ブリニャックの贅沢路線は止まりません。

今年、2回目の天皇誕生日となった2月23日、世界的な贅沢品企業、LVMHの子会社、モエヘネシーが、ジェイZからアルマン・ド・ブリニャックの株式を50%取得すると発表しました。

これまでモエヘネシーのグループには、クリュッグ、ドン・ペリニヨン、ヴーヴ・クリコなどの高級シャンパーニュが揃っていましたが、アルマン・ド・ブリニャックが新たに参画したことで、シャンパーニュで最も豪華なブランドが勢ぞろいしたことになります。

全ラインナップの紹介

アルマン・ド・ブリニャックの基本であるフラグシップがゴールドで、初出荷が2006年。以降、ロゼとブラン・ド・ブランを2008年に、また、2015年には、ドゥミ・セックとブラン・ド・ノワールもリリースしました。

現在、「6人兄弟」で、そのラインナップを紹介します(正確には、日本限定版があるため、7種類ですが)。

ブリュット・ゴールド

一番上の「お兄さん」がこのゴールドです。ブドウは、ピノ・ノワールが40%、シャルドネが40%、ピノ・ムニエが20%。ドサージュは1リットルあたり9.5g、フレンチオークで12ヶ月間熟成させています。

ボトルのサイズが非常に豊富で、750ml、1,500ml、3,000ml、4,500ml、6,000ml、9,000ml、12,000ml、15,000ml、30,000mlの9種類もあります。9本すべてをまとめて購入するには2500万円かかるそうです。

アルマン・ド・ブリニャック・ブリュット・ゴールド

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ロゼ

ゴールドにつづく2種類目が2008年にリリースのロゼです。ブドウは、ピノ・ノワールが50%、シャルドネが10%、ピノ・ムニエが40%。ドサージュは1リットルあたり8.5g、ゴールド同様、フレンチオークで12ヶ月間熟成させています。

ロゼもボトルのサイズが非常に豊富で、750ml、1,500ml、3,000ml、4,500ml、6,000ml、9,000ml、12,000ml、15,000ml、30,000mlの9種類もあります。9本すべてをまとめて購入するにはゴールドより高価で、3800万円もかかるそうです(30リットルのミダスボトルが1200万円)。こうなると、文字通り、「飲むフェラーリ」ですね。

アルマン・ド・ブリニャック・ロゼ

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ブラン・ド・ブラン

これは、シャルドネだけのマルチヴィンテージ物で、初リリースは2008年です。

シャルドネは、コート・デ・ブラン地区とモンターニュ・ド・ランス地区のものを半分ずつブレンドしています。ドサージュは、1リットルあたり8gと辛口で、ゴールドやロゼ同様、フレンチオークで12ヶ月間熟成させています。

ボトルのサイズは、750mlと1,500mlの2種類で、メタリックのシルバーのボトルに入っています。

アルマン・ド・ブリニャック・ブラン・ド・ブラン

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ブラン・ド・ノワール

ブラン・ド・ブランの次は、お約束のマルチヴィンテージの「ブラン・ド・ノワール」です。初リリースは2015年で、次が2019年。

生産本数は3,535本で、ロマネ・コンティの半分。「白いカラス」より稀少なワインと言えます。ロマネ・コンティ同様、ボトルに1から3,535までナンバリングがしてあり、デゴルジュマンの日付が入っています。

ボトルのサイズは、750mlのみで、メタリックのグレーのボトルに入っています。

アルマン・ド・ブリニャック・ブラン・ド・ノワール

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ドゥミ・セック

ドサージュを1リットルあたり33gに増量した半甘口です。初リリースは2015年で、それ以前は、メゾンの訪問客しか試飲できませんでした。

ブドウのブレンド比率はゴールドと同じで、ピノ・ノワールが40%、シャルドネが40%、ピノ・ムニエが20%です。容量は750mlのみで、ロゼより赤いメタリックのボトルに入っています。

アルマン・ド・ブリニャック・ドゥミ・セック

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ブリュット グリーン ゴルファーズ エディション

アルマン・ド・ブリニャックの中の変わり種が「ブリュット・グリーン ゴルファーズ・エディション」。中身はゴールドとほぼ同じです(ブドウの比率は同じですが、ドサージュの量が1リットルあたり9gで、ゴルフの後の乾杯用に少し減らしてあります)。

ゴルファー御用達を意識して、グリーンのメタリックボトルに入っています。毎年、このボトルの生産番号1番は、ジョージア州のオーガスタ・ナショナル・クラブで開催するマスターズ ゴルフトーナメントの優勝者に贈呈されます。

アルマン・ド・ブリニャック・グリーン

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上記の6種類をセットにしたのが「ラ・コレクション」で、特製のアタッシェ・ケースに入っています。

アルマン・ド・ブリニャック ラ・コレクション

6種類入った「ラ・コレクション」。
 左から、ゴールド、ゴルファーズ・エディシオン、ロゼ、ドゥミ・セック、ブラン・ド・ブラン、ブラン・ド・ノワール

気になるお味は?

アルマン・ド・ブリニャック

これだけボトルが派手だと、外見ばかりに目が行き、なかなか味や香りには注目してもらえません。実は、アルマン・ド・ブリニャックがこれほど有名になる前の2010年、来日した社長のジャン・ジャック・キャティア氏主催の試飲会で飲んだことがあります。

当時の私は、「キラキラした派手なボトルに入っていて、大阪のオバチャン風だなぁ。メッキしたみたいにピカピカで、正面に大きなスペードが浮き彫りになっていて、そのスペードが、滋養強壮ドリンクに見えるよね。ギラギラしたオヤジが豪傑笑いをしながら飲むシャンパーニュに違いない」と思っていました。

で、一口飲んだところ、めちゃくちゃエレガントでビックリしました。系統でいえば、ジャック・セロス、サロン、エグリ・ウリエ、クリュッグに通じる凝縮感の高さがあり、精緻でエレガント。

ボトルの外見と中身にこれほど巨大なギャップがあるのはアルマン・ド・ブリニャックだけでしょう。

アブラギッシュな親父の着ぐるみのジッパーを下ろしたら、中から現れたのは、『昼顔』に主演していた頃のカトリーヌ・ドヌーヴという感じでしょうか。

官能はまだまだ続きます。1時間経つと空気となじんで、香りが大きく開きました。白い花を敷き詰めたベッドで、伯爵夫人がまどろんでいるみたいに高貴でセクシー。私には「エッ、なにこれ!」でした。髪をゴールドに染め、耳にピアスを6個も付け、超ミニスカートの転校生、青山愛ちゃんは、実は、芥川賞作家だった……みたいな感じですね。

あまりにボトルと中身のギャップが大きすぎて、特に、滋養強壮のシンボルマークみたいなスペードが気になって、どんな意味があるのか社長の息子のアレキサンドル・キャティアさんに聞いたところ、「このスペードは、貴族のシンボルなんだ。百合の花(フルー・ド・リー)もそうだけど、高貴さを表していて、真ん中にアルマンの『A』を入れた。スペードのエースみたいでイイだろ?」と誇らしそうでした。

正しい飲み方

アルマン・ド・ブリニャック

これだけ派手で、しかも、中身がキチンとしたシャンパーニュはアルマン・ド・ブリニャックしかありません。

この金ピカのゴージャス感は、優勝トロフィーそのものです。ゴルフだけでなく、あらゆるスポーツでの優勝カップの代わりにこれほど相応しいシャンパーニュはありません。

実際、2011年6月15日、ボストンの名門アイスホッケーチーム、ブルーインズが、バンクーバー・カナックスとのスタンレーカップ(北米プロアイスホッケーリーグの優勝決定戦)の最終戦となる第7戦を4対0で勝って39年ぶりに優勝。その時に、アルマン・ド・ブリニャックのミダスボトルで優勝を祝いました。当時の価格で1本10万ドル。世界に6本しかないアルマン・ド・ブリニャックの30リットルボトルの1本でした。アメリカの新聞では、ボトルの大きさと価格が大きな話題になりました。

実際のスタンレーカップのトロフィーは88cm、15kgもあり、銀色の金属製で、スコッチのボトルのような形をしています。このトロフィーに対抗できるのは、金色に輝く30,000mlのミダスボトルしかありません。

スポーツや芸術のあらゆる分野の勝利者に、是非、金色に輝くアルマン・ド・ブリニャックをトロフィーとしてプレゼントしてください。この重さと大きさと輝きは、勝利者にこそ相応しいシャンパーニュです。

アルマン・ド・ブリニャック
葉山 考太郎
葉山 考太郎

シャンパーニュとブルゴーニュを愛するワイン・ライター。 ワイン専門誌「ヴィノテーク」、「神の雫(モーニング)」等にコラムを執筆。 2010年にシャンパーニュ騎士団オフィシエを受章。 主な著書は「クイズでワイン通」「今夜使えるワインの小ネタ(以上講談社)」、「30分で一生使えるワイン術(ポプラ社)」など

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