シャンパーニュほど特別感を演出してくれるラグジュアリーな飲み物はないでしょう。
そしてクリエイティブであり、上質。フランス人が好んで使う「エレガント」、この言葉がもっとも相応しいワインでもあります。もっともフランスらしい飲み物がシャンパーニュといっても過言ではないでしょう。
「アール・ドゥ・ヴィヴル Art de Vivre」、これもフランス人が好む言葉です。直訳すると「暮らしのアート」、フランス人は何が必要で、何を優先させるか、どうしたら幸福感を覚え、人生を深く味わえるかということに長けている、といいます。「日々の暮らしをデザインする」ともいえると思います。
花や絵画、オーナメントなど暮らしがより素敵になるようなモノやコトを取り入れるということで、決して高価なモノに囲まれ、贅沢に暮らすということではありません。窓辺に花を飾る、食卓にキャンドルを灯す、好きな絵を掛ける、といったことです。
パリに初めて行った時のこと。ホテルの窓から見える小さなビストロに、家族が入ってゆくのを眺めていました。奥様は小さな花束を抱えていました。普通のジャケットを着た主人は蝶ネクタイをつけていました。こうやってささやかなディナーをハレの時間にするんだなあと感心しました。
そんなアール・ドゥ・ヴィヴルの一つにシャンパーニュがあります。「今日はシャンパーニュを開けよう」、まさに日常のなかのハレとなるひと時になります。
そんな特別な気分を盛り上げるためにはちょっとしたアレンジで雰囲気を創れたら、とても素敵です。花や絵を飾り、いつもと違ったマットやクロス、カトラリーをセットし、キャンドルを灯し、ちょっとしたオーナメントを配してみる。
冷蔵庫でよく冷やしておけば、最適な温度で楽しむこともできますが、シャンパーニュクーラーに氷水を張って、テーブル脇にセットすれば雰囲気がグッとよくなります。
今月のペアリング
ポール・デテュンヌ ブラン・ド・ノワールは、ゴールドにトパーズの鮮やかな反射。緻密で、表現豊か、かつ繊細です。
ピンクグレープフルーツやフレッシュの洋梨、白バラ、さらにジンジャー、コリアンダー、サンダルウッドのアクセント。ビスケットやマッシュルーム、ベイキングスパイスやヘーゼルナッツなど、樽醸造による複雑さも浮かび上がってきます。
味わいはスムースで、フレッシュ感のある酸味が溌剌とした印象で、後半の心地よく、コクを与える苦味と調和します。
最良の銘醸畑アンボネイのピノ・ノワール 100%のシャンパーニュは、家族と、または大切な友人を数名招いた12月のディナーにぴったりです。
豪華さではなく「黒、シック、手づくり、オーガニック」をテーマにしてシーンを創ってみてはいかがでしょうか。黒を基調としたテーブルセッティング、黒と赤をドレスコードにして、手作りのネームカード(席札)とメニューカード。
料理は、芳醇で深みのあるシャンパーニュですので、コースを通して楽しむことができます。
グージェール(チーズを練り込んだプティ・シュー)、タラバ蟹とグレープフルーツのオーガニックサラダ、有機卵のデビルドエッグ ロブスター添え、ローストチキンやチキンクリーム煮に栗とキノコ添えといった季節感満載のおもてなしのメニューにするとよいでしょう。シャンパーニュ地方のウォッシュチーズ ラングルにブランデーを注いで(くぼみがあります)フランベする演出も盛り上がることでしょう。
今回はセオリーからは違ったアングルでペアリングを展開させてみました。冒頭でも言いましたように、シャンパーニュはラグジュアリーで、クリエイティブなワインです。なにより雰囲気が大切です。
ワイン対料理のペアリング ではなく、食空間全体をコーディネートすることでより一層際立ちます。
大変な1年になった2020年の締めくくりに「アール・ドゥ・ヴィヴル」の精神で、華を添えましょう。