vol.5 食材をフォーカスする

前回は料理の加熱法による違いをペアリングに活かすというお話をしました。

今回は主食材にフォーカスしたいと思います。「魚には白、肉は赤」というベーシックなことからさらに踏み込んだ、その食材がどのような性質、特徴を持っているかによりワインを考える、ということです。

食材をみてゆくポイントは以下の通りです。

① 大きさ
② 脂質
③ 身質
④ 産地
⑤ 旬

大きさ

まず素材となる原型そのものの大きさがあります。

例えば肉でいうと、牛、仔牛、仔羊、鹿、鴨、鳩など。魚であれば、イサキ、メバル、カサゴ、ヒラメ、スズキ、サーモン、カジキと、大きさは様々です。

身質や風味を考慮せずに考えると、大きい食材には、より強さのあるワインとなります。同じ食材でも同様です。

例えば、車海老は、「さい巻き」、「中巻き」、「巻き(=車海老)」と大きさにより呼び名が変わります。さい巻き→巻きと大きくなるにつれ、ワインは力強いものにします。さらに赤座海老、伊勢海老、オマール海老、、、。

「今日は真鯛でも立派なものが手に入ったから、ワインはしっかりしたものにしよう」ということです。大雑把な考え方ではありますが、まず最初に意識するポイントとしては大切です。

脂質

非常に重要なポイントです。肉にしろ、魚にしろ、脂が多いもの、また同じ素材でも脂ののり方に違いがあります。脂の多いものには味わいに厚みのあるものが求められます。

酸味もポイントです。ただ素材の脂分に合わせる場合は、なめらかな印象の酸味がよいです。

白ではグルナッシュ・ブラン、ヴィオニエ、クレレット、ピノ・グリやアルネイスなど。酸味をなめらかにするMLF(マロラクティック発酵。ワインに含まれるリンゴ酸を乳酸に変える醸造過程)を行ったものも良いので、シャルドネは脂質を考慮した場合に筆頭のワインとなります。特にバターぽい風味は素材の脂質には非常によく合います。

赤ワインはほとんどの場合、MLFを行いますので、「肉には赤」はやはり原理原則なんですね。

「脂を流す」という言い方がありますが、ペアリングの観点では「洗い流す」はありません。脂がのっていることが価値なのに、それを取り除くというのは「料理を引き立てる」というペアリングの原点から外れているからです。

身質

つまり食べた時の咀嚼時間は、ワインを選ぶ上で重要なポイントになります。肉に赤ワインを合わせる際、「脂質と渋み」を考慮する以上に大切なのが素材とワインの口中に残る時間になります。

例えば、牛肉でも黒毛の霜降りと赤牛では後者が長く、エイジングビージュは豊かな風味を伴い、より長くなります。当然、ボディのしっかりした余韻の長いものを選ぶ必要があります。

また、これは素材の大きさと加熱法とも関連してきます。薄くスライスして、サッと焼いたものと、大きな塊を炭火でじっくり焼いたものでは食べた時の身質と残留時間が違います。

魚でも真鯛やクエ、カジキのように身質のしっかりしたものと、身がほろっとしたハタでは変わってきます。

産地

私はペアリングを考える際に産地を重視します。その素材がどこの産地かというより、どこが名産地として知られているか、です。

例えば、ウニに合わせるワインを考えます。フランス料理ではウルシナード Oursinadeといってクリーム合わせたソースがプロヴァンス地方では有名です。クレレットやヴェルメンティーノがよいでしょう。またイタリアではシチリアのパレルモも名産です。カタラットの白ワイン。チリも実はウニの名産で日本に大変多く輸出されています。ソーヴィニヨン・ブランと合わせられます。

シーズンを迎える生牡蠣。ボルドーは牡蠣のメッカといえます。一大養殖産地のアルカションがジロンド河河口にあるからです。牡蠣はブルターニュも有名ですから、お膝元のムスカデも候補に上がります。またオレゴンといえばアメリカの牡蠣の代表選手です。

その食材の旬はいつか、そんな季節に楽しめるワインは何か、という視点で考えることができます。

この季節感については、第2回で取り上げていますので、ぜひ読んでみてください。

今月のペアリング

香りは開いていて、ニュアンスに富んでいます。野苺、萎れかけた牡丹、オレガノやカルダモンなどのスパイスがアクセントとなります。

燻製肉や熟成肉のような深みを与える香りもあります。複雑さと、華やかさも備えた多層的な特徴を持っています。味わいはソフトで丸みがあり、エアリーな広がり。緻密さのある触感が心地よいです。

中盤からの直線的で際立った酸味がテンション(凛とした張り詰めた感覚)を与えるとともにボディをリフトします。後半では苦味とやさしくグリップする渋みの調和が感じられ、活きいきとしたフィニッシュをつくります。

キアンティ・クラシコとしては、ボディに柔らかみ、優しさが感じられますし、渋みもしなやかなほうだと思います。

キアンティ・クラシコといえば、ビステッカ(Tボーンステーキ)です。複雑さがありながらも、若々しさもありますので、30日程度の(熟成期間のあまり長くない)ドライエイジング。やわらかみのあるボディですから、サーロインなど口溶けのよい部位をあまり厚切りにせずに。

厚切りハラミの炭火焼も、大変よく合うでしょう。