ソーヴィニヨン・ブランの銘醸地「サンセール」と「プイィ・フュメ」を解説!

サンセールの風景

フランスを代表する白ワイン、サンセールとプイィ・フュメ。

いずれも中央山塊を源とし大西洋へ注ぐ大河ロワール川の渓谷で造られるワインです。ロワール川渓谷には多くの古城が現存し「フランスの庭園」と呼ばれることでも知られています。

ロワール渓谷のワイン産地は非常に広大で造られるワインの種類も多い中、サンセールとプイィ・フュメの知名度は抜群です。

しかし、二つのワインの違いがいまいちわからないという声もよく聞きます。そこで、今回はサンセールとプイィ・フュメの違いを解説したいと思います。

サンセールとプイィ・フュメの違い

サンセールとプイィ・フュメの地図

サンセールとプイィ・フュメはともにロワール川上流域のサントル・ニヴェルネ地区にあるアペラシオンで、文字通りフランスの中心部(サントル)に位置します。大陸性気候で夏と冬の気温差が大きく概ね冷涼なため、この地方で作られるブドウにはしっかりと酸が残り、フレッシュでシャープな酸味が特徴のワインが生まれます。

サンセールはロワール川左岸に位置する標高の高い位置にあり、14カ所の村で構成されます。

ソーヴィニヨン・ブラン100%で造られる白ワインが主流で生産量の大半を占めますが、ピノ・ノワール100%で造られる赤ワインとロゼワインもあります。

一方、プイィ・フュメはロワール川を挟んでサンセールの対岸に位置するアペラシオンで、ソーヴィニヨン・ブラン100%で造られる白ワインです。

プイィ・シュール・ロワールなど七つの村からなり「ブラン・フュメ・ド・プイィ」とも名乗ることができます。プイィ・フュメのフュメはフランス語で煙や燻製を意味しており、これはワインに火打ち石のようなスモーキーなニュアンスがあることに由来すると言われています。

プイィ・フュメのブドウ栽培面積、ワイン生産量はサンセールのおよそ半分です。

 

サンセール(白)とプイィ・フュメは同じ品種から造られるワインで産地も近いですから、実際、味わいはとても似ています。一般的にサンセールはフレッシュでシャープな酸味があり、プイィ・フュメはフレッシュながらもまとまりがあってよりふくよかな味わいになります。

サンセールとプイィ・フュメの特徴

二つのワインについてさらに詳しく見ていきましょう。

サンセール

サンセールの風景

ロワール川上流にあるサンセールは、他のロワールの産地より標高が250mほど高い位置にあるため、周囲より冷涼な気候となります。また、サンセールはブルゴーニュ地方のシャブリ地区に近いため土壌もシャブリに似ています。

サンセールの土壌は大きく3種類に分けることができ、一つはシャブリと同じミネラル豊富な粘土石灰質(キンメリジャン)からなるテール・ブランシュ、もう一つは石灰岩の小石からなるカイヨット、そして火打ち石や粘土を含んだシレックス土壌の三つになります。

一般的にテール・ブランシュからはまろやかでふくよかなタイプのワインが生まれ、カイヨットからは軽く、どちらかと言うと早飲みタイプのワインができると言われています。また、シレックスからは独特な火打ち石のような香りがするワインが造られています。

かつてサンセール一帯は、ブルゴーニュよりやや軽いタイプのピノ・ノワールのワインが主に造られていました。しかし、19世紀にフィロキセラによって壊滅的な被害を受けたため、害虫に比較的強いソーヴィニヨン・ブランが対岸のニエーブル県から導入されました。そして、そのままソーヴィニヨン・ブランが主流となり現在に至ります。

サンセールはハーブのような清涼感のある香りとレモンやグレープフルーツなど柑橘系のフレッシュな果実味、引き締まった酸とミネラル感を特徴とするワインで、一般的に熟成させず若いうちに楽しまれます。

ロワール渓谷地方は比較的冷涼な気候のため、有機栽培でブドウを育て醸造においても野生酵母を使うなど自然な造りを行う生産者が多く、サンセールではパスカル・ジョリヴェが自然派の生産者として有名です。

プイィ・フュメ

プイィ・フュメの風景

対岸にあるプイィ・フュメの土壌は、サンセールと同様にテール・ブランシュ(キンメリジャンの粘土石灰質)、カイヨット(石灰岩の小石)、そしてシレックス(火打ち石)の3種類ですが、サンセールの半分以下の面積しかないプイィ・フュメは、より一貫した個性を持っていると言われています。

特にシレックス土壌がワインにもたらす独特な香りやミネラル感がプイィ・フュメの個性であり、サンセールとの違いです。

最良の畑はプイィの街の北側にあり、丘の頂上にあるサンセールの街のちょうど対岸にあたります。この辺りのブドウから造られるワインはシレックス土壌に由来する性格を強く持ち、極辛口で長期熟成にも耐えうるワインとなります。

プイィ・フュメの畑の歴史は古く、紀元前のガロ・ローマ時代からあったと言われています。中世のベネディクト修道会に属するようになってからは白ワインの銘醸地として名声を博すようになりました。

覚えておきたいプイィ・フュメの有名生産者はディディエ・ダグノーです。

ディディエ・ダグノーはブルゴーニュの巨匠アンリ・ジャイエを師と仰ぎ、有機栽培でブドウを育て、新樽を使った醸造も行いました。その結果、これまでのプイィ・フュメとは一線を画す濃厚なプイィ・フュメを造り上げ、一躍スター生産者としての地位を確立しました。

相性の良い料理

シェーブルチーズ

サンセールとプイィ・フュメは味わいもとても似ていますが、それぞれ相性の良い料理を紹介します。いずれも魚料理との相性がとても良いことで知られています。

サンセールは白身魚料理とよく合います。フランスのレストランでは鱒と合わせることが多いようですが、日本なら鯛や平目、鱈で良いでしょう。塩で食べる刺身、塩焼きやムニエルにはレモンを絞るとさらにおいしくいただけます。

また、清涼感のあるサンセールはハーブともよく合います。ハーブを効かせたサラダやハーブでマリネした鶏肉や豚肉のグリルもおすすめです。

是非試していただきたいのがシェーブルチーズです。ロワール渓谷一帯はシェーブルチーズの産地でもあります。よく冷やしたサンセールと酸味のあるシェーブルチーズとは抜群の相性を見せます。

プイィ・フュメには、なんと言ってもスモークサーモンです。ワインのスモーキーなニュアンスと燻製の香りや風味がよく合います。

また、貝類やエビやカニなどの甲殻類とも好相性です。刺身も良いですが、牡蠣や帆立のフライもおすすめです。

まとめ

白ワイン

近年、ニュージーランドやアメリカなどのニューワールドの産地でも、サンセールやプイィ・フュメと同じソーヴィニヨン・ブランから大変高品質なワインが造られています。もちろんそれらのワインも美味しいですが、サンセールやプイィ・フュメには他の産地に真似のできない気品があります。

サンセールもプイィ・フュメも比較的手に取りやすい価格帯のものがたくさんありますから、一度飲み比べてみてはいかがでしょうか?

参考:日本ソムリエ協会「教本」2020