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ワインが飲みたくなる映画『ナイル殺人事件』

葉山 考太郎
葉山 考太郎
葉山考太郎のコラム
公開日:2020.8.14
更新日:2021.10.20

今回、ご紹介する「ワインが飲みたくなる映画」は、女帝として今も世界のミステリー界に君臨するアガサ・クリスティーの名作、『ナイルに死す』の映画版、『ナイル殺人事件(1978年、英)』です。

この映画には、ワインが好きな人なら誰もが一度は飲みたいボルドーの女王「ペトリュス」が出てきますし、俳優陣も超豪華。ピラミッドやスフィンクスやバザールなど、エジプトの雰囲気までたっぷり楽しめます。

トリックも上手く決まっていて、鮮やかなどんでん返しや、意外な結末があります。ミステリーには辛口の私が見ても、非常に良くできていて、上映時間の144分があっという間に過ぎるでしょう。

土曜日のランチ、二人でサンドイッチやピザをつまみながら、ボルドーの美味しい赤ワインをゆったりと1本飲むのに絶好です。

目次

3つの豪華

この映画には、3つの「豪華」があります。

「豪華その1」は俳優。俳優陣があり得ないほど豪華です。本来なら、一人で主役を張れる個性の強い大物俳優が12人も揃っています。

これほど豪華なキャスティングは、映画史上、本作だけではないでしょうか?

ワインで例えれば、友人に招待されたディナーで、ラフィット、ラトゥール、マルゴー、オーブリオン、ムートンの五大シャトーに、サンテミリオンのシュヴァルブランとオーゾンヌ、ソーテルヌのイケムという、いわゆる「ボルドービッグ8」が勢ぞろいしたようなものです。普通の晩餐会なら、どれか1本をメインにするはずですね。

俳優名と役どころは以下で細かく解説しますが、なぜ、こんなにスゴイ俳優を揃えたのでしょうか?

日本でもミステリー映画は多数作っていますが、普通のミステリー映画やテレビ番組では、探偵役と犯人役が主役で大物俳優が演じるため、原作を読んでいない人にも、誰が犯人か簡単に予想できます。

『ナイル殺人事件』では、全員が大物俳優。キャスティングから犯人を推測できません。

高校生の時に原作を読んで犯人を知っている私には、「おぉ、よく考えた配役だ」と感心しました。しかも、キャスティングにはもう一つ伏線があり、見終わった後、映画の製作側が仕掛けたトリックが見えるという仕掛けです(ネタバレになるので書けません)。

なお、音楽担当は『ゴッドファーザー』の音楽を担当した大物、ニーノ・ロータ。全てが豪華ですね。

「豪華その2」は、登場するワインです。名探偵、エルキュール・ポアロが飲む赤ワインが、ボルドーで最も高価なペトリュスです。

ナイル河をさかのぼって観光地を巡るクルーズ船で、殺人の前夜、ポアロと、友人の大佐(シャーロック・ホームズでのワトソンに相当)が船で夕食を取るシーンがあります。クルーズ船のマネージャーがうやうやしくテーブルに持ってきたワインがペトリュスです。

1978年に私がこれを映画館で見た時、ペトリュスのラベルがスクリーン一杯に映って「うわぁ、ペトリュスだぁ」と、まずビックリし、ペトリュスがクルーズ船の食堂のハウスワインであることに2度ビックリしました。

ペトリュスのラベルをここまで大映ししたシーンは見たことがありません(ビデオ版では、大写しのシーンがカットされています)。

ちなみに、偽造ワインが最も多いのがペトリュスです。ペトリュスでは、昔は、リコルクを受け付けていましたが、コルクを抜いた結果、あまりに偽物が多かったため、20年以上前からリコルクは受け付けていません。

ペトリュスでは、ラベルの偽造を防ぐため、ヴィンテージにより、微妙に聖ペテロの顔や、周囲のブドウや蔓のデザインを変えています。以下の1969年と2013年では、かなり違いますね。

左から1969年のラベル、2013年のラベル

「豪華その3」は、ロケ地です。エジプトがロケ地で、外輪式の蒸気船でナイル河をさかのぼり、世界的に人気のピラミッドとスフィンクス、アブシンベル神殿、カルナック神殿を巡り、たっぷりと見せてくれます。外輪方式の蒸気船を1隻と、エジプトの名所も貸し切りにし、豪華俳優陣が演技をするのは巨額の製作費が必要ですね。

『ナイル殺人事件』の製作費は800万ドル。いろいろ調べると、製作した1978年は、1ドルが225円、貨幣価値は今の68%(今の100円は当時の68円の価値)なので、今の貨幣価値で25億円ぐらい(興行収入は45億円)。ハリウッド映画としては普通の製作費ですが、イギリス映画としては破格です。

あらすじ

この作品のストーリーはかなり単純です。

ジャッキー(ジャクリーン)が、大富豪の親友、リネットに自分のフィアンセであるサイモンを紹介し、「オックスフォードを出た秀才なんだけど、仕事がないの。こちらで働かせてもらえない?」と頼むところから始まります。

紹介した瞬間、リネットとサイモンの目に100万ボルトの電気が流れ、お互い一目ぼれ。サイモンはジャッキーを捨て、リネットと結婚してしまいます。

収まらないのはジャッキーで、大親友にフィアンセを奪われた腹いせに、二人の新婚旅行にまとわりつくのです。そして、ナイル河を上る蒸気船、カルナック号でリネットが殺され、続けて二人も死ぬ連続殺人事件が起きます。

関係者は全部で13人。全員、リネットを殺害する動機を持っています。

登場人物と俳優

登場人物が多いのは、アガサ・クリスティーのミステリーの特徴です。たくさんの人物のキャラクターをキチンと書き分けるのがクリスティーのすごいところ。

40を越えるベースワインをブレンドするクリュッグみたいですね。以下、この映画の登場人物と演じた俳優を紹介します。

リネット:リッジウェイ財閥を率いる美女で、連続殺人の最初の犠牲者。銃で殺されます。

俳優はロイス・チャイルズ。ゴージャスで金のかかるイイ女というイメージが満載です。

ワインなら、ミュジニーでしょうか?庶民的な雰囲気のジャッキーとは対照的で、フィアンセのサイモンが心変わりするのも無理はないと思ってしまいます。

なお、ロイス・チャイルズは007シリーズの『ムーンレイカー』のボンド・ガールで、ボランジェRD1990と共に登場しました。

リネットの召使い:召使いを辞めて、その退職金を持参金にして結婚するはずだったのですが、リネットが「アンタの結婚相手はまだ離婚が成立していないので、止めることを許さない」と支払いを拒否します。

ワインなら、アルザスのリースリングでしょうか?

演じるのは、ファッション界のアイコンにして女優のジェーン・バーキンです。歌手としても有名だし、何でもできる人っているんだなぁと羨ましくなります。

ジャッキー:素朴ながら芯の強い女性で、ワインならボージョレーのモルゴンでしょうか?

フィアンセのサイモンをリネットに取られ、恨み骨髄。でも、犯行時間にはモルヒネを打たれて昏睡状態にあり、物理的に殺人は不可能という状況です。酔っぱらったジャッキーは、「牧師の娘は水しか飲まないけれど、やがてジンに手を出す「酒を飲まない司祭の叔母さんにはシャンパンを飲ませるべし(1978年当時、シャンパーニュという言葉は一般的ではありませんでした)」「ワインを知らない神学者の妻は、必ずやスコッチにハマる」と不思議な文句を言ったのが印象的でした。

俳優はミア・ファーロウ。乾し草の中から出てきたみたいに貧相で垢抜けない女性を演じさせると実にウマいと思います。

実生活では、ウディ・アレンと一緒に暮していましたが、ビックリするスキャンダルが起きて喧嘩別れしました。

恋愛小説の女流作家:自分の著書の中でリネットを「色情狂の雌ヒヒ」と書き、リネットから名誉毀損で告訴されていました。映画では、いつも酔っており、コニャックがお好きなようです。

ワインなら、クセのあるシャトー・シャロンでしょうか?

俳優は、アンジェラ・ランズベリー。この映画では、「カリギュラ」みたいにジャラジャラした満艦飾の衣装を着て、芝居がかった物言いをしています。1988年からNHKが放映した女性版刑事コロンボである『ジェシカおばさんの事件簿』のジェシカ役で有名。「ジェシカおばさん」という響きから、小柄な人を連想しがちだけれど、肩幅があり小山のように立派なガタイをしています。

女流作家の娘:母の名誉を守らないと、裁判で負けて破産する状況。

ワインなら、プロヴァンスのロゼでしょうか?

演じるのはアルゼンチン生まれのオリビア・ハッシー。1968年の『ロミオとジュリエット』のジュリエット役により、清純派の世界的スターになりました。

カネボウ化粧品のCMに出演した際、CM曲『君は薔薇より美しい』を歌った布施明と1980年に結婚。布施明がイギリスから日本人初となる世界的女優を獲得したと話題になりました。

ハッシーは、2003年、映画『マザー・テレサ』に主演してスクリーンに復活。「ジュリエットとマザー・テレサを演じられたのは幸運としか言いようがない」と語っています。

財産管理人:リネットの財産を一括して管理していますが、横領したことがバレそうな状況です。

ワインなら、ローヌのコート・ロティ―でしょうか?

俳優はジョージ・ケネディ。1977年、松田優作主演の『人間の証明』でアメリカの刑事を演じました。ヨーロッパにいるアメリカ人の少し垢抜けない感じがよく出ています。同じピノ・ノワールでも、ブルゴーニュ産とカリフォルニア産の違いに似ていますね。

ケネディは、パニック映画の元祖として有名な『エアポート』のシリーズ4作全てで、役柄は違えど「ジョー・パトローニ」の名前で出ています。

医者:ドイツ人のモグリ病院の経営者。リネットの友人にアルマジロの尿を処方するなどインチキ診療の証拠を握られて、スキャンダル化寸前で破産の危機に。

ワインなら、コトー・シャンプノワでしょうか?

演じるのはジャック・ウォーデン。元ウェルター級のプロボクサーという異色の経歴を持ち、少し荒っぽい役柄がはまり役です。

社会主義者:資本主義を敵視し、富豪を抹殺しようと機会を狙っています。

ワインなら、ラングドックのカベルネ・ソーヴィニョンでしょうか?

俳優はジョン・フィンチ。ロマン・ポランスキーの映画『マクベス』で主人公のマクベス、アルフレッド・ヒッチコックの『フレンジー』にも主演するなど、イギリスを代表する大物俳優です。

富豪の老女:ワインなら、シャンベルタンのような女性だと思います。

宝石狂で、リネットが首に巻いている豪華な真珠のネックレスがほしくてたまりません。殺されたリネットの隣の部屋にいて、ポアロから何か物音を聞かなかったかと聞かれ、「ええ、ポンとシャンパンを抜いたような音を聞きました。それも良いヴィンテージのものではなく、安物でした。極上物は音に重みがありますし、派手な音はしませんから」と答えています。

俳優は、キャサリーン・ヘプバーンとともに「ハリウッドの演技派の双璧」と言われるベティ・デイヴィス。サマー・ハウスで過ごす二人の老姉妹を描いた超名作映画、『八月の鯨』で姉を好演した実力派。

富豪の老女の召し使い:リネットの父親のあくどい商売により自分の父が破産し、召し使いに身を落としています。

ワインなら、ヴォルネイでしょうか?

俳優は、マギー・スミス。『ハリー・ポッター』シリーズでは、ずっとネルバ・マクゴナガル先生役を演じました。三角形に尖った大きな黒い帽子の怖いオバサン先生といえば思い出すでしょう。

サイモン:ジャッキーに膝を撃ち抜かれて動けない状態だし、妻のリネットを殺された被害者で、妻を殺す動機は見当たりません。

演じる俳優は、いかにも純粋培養の英国人の顔つきの新人俳優、サイモン・マッコーキンデール(この映画で、役名と俳優名が同じなのはこの人だけ)。ワインなら、ロワールのミュスカでしょうか?

この映画では、チャールズ皇太子みたいに、ガチガチのクイーンズ・イングリッシュです。この映画の大ヒットを背に受けてハリウッドへ進出しましたが、アメリカ英語にうまく転換できず、ブレイクしませんでした。

ポワロ:ベルギー人の探偵で、ワインなら、ペトリュスでしょう。この人が犯人でないのは、ミステリーの暗黙の規則です。

演じるピーター・ユチノフは、アカデミー賞受賞俳優であり、監督、小説家とマルチタレント。

今回のポワロ役が大当たりし、以降、『地中海殺人事件(1982年、英)』、『名探偵ポワロ/エッジウェア卿殺人事件(1985年、英)』 『名探偵ポアロ/死者のあやまち(1986年、英)』『名探偵ポアロ/三幕の殺人(1986年、英)』『死海殺人事件(1988年、英)』でもポアロ役を演じました。

レイス大佐:ポワロの友人。この人も「ミステリーの暗黙の規則」で、犯人であってはなりません。

俳優はデビッド・ニーブンで、渋い性格俳優。

ワインなら、シャトー・タルボでしょうか?『007カジノロワイヤル』では007役を演じました。

ペトリュス降臨す

通常、ペトリュスは、映画では豪華さを出すために登場しますが、この作品では、重要な役割を担当しています。

リネットが殺される前夜、ポアロと大佐が蒸気船の食堂で夕食を取る席に、エジプト人のマネージャーがペトリュスを持ってきます。

殺人の翌日の夕食では、大佐が、遅れて食堂に来て着席したポアロに言います。

「昨夜のワインの残りにはカビの味がしてゴミのような物が浮いていたので別のワインに替えさせた」

ワイン通で美食家のポアロが、さも残念そうに言います。

「ペトリュスの澱はそれが普通だ」

実は、大佐の言う「ペトリュスのカビの味」は、ブショネや熱劣化ではなく、睡眠薬でした。犯人は、ペトリュスに睡眠薬をブレンドし、最初の殺人の際、眠りの浅いポアロを熟睡させて銃声で目が覚めないようにしたのです。

ラストの30分では、ミステリーの定石である「名探偵 みなを集めて さてと言い」が始まります。

ポアロが犯人を指摘する際、「犯人は、私が飲むワインに睡眠薬を入れたのです」と言い、スクリーンにはペトリュスのボトルを後ろから撮影し、睡眠薬を入れて混ぜる「再現シーン」が映ります。後ろからの撮影なので、ラベルの横が1cmしか見えませんが、ラベル上部の蔓や中央の赤い文字でペトリュスであると分かります。

となると、大佐は、初日には睡眠薬入りのペトリュスに異常を感じず、同じボトルの飲み残しを翌日に飲んで、おかしいと感じたことになります。

この映画には、「製作のうっかりミス」が結構あります。例えば、一行は、蒸気船で同じ日にカルナック神殿とアブシンベル神殿を観光しますが、両寺院は400km離れていて、1930年代という時代設定では、そんな短時間での往復は不可能です。

また、ポアロが、夜の11時、酔っぱらった富豪の老女を船室へ送り届け、別れ際に「おやすみなさい」の意味で「ボン・ジュール」と言いますが、正しくは、「ボン・ニュイ」です。

大佐が「カビを感じた」も、この種のウッカリでしょう。いずれのウッカリも、本筋のプロットには無関係なので「謎解きのキズ」にはなっていません。クリスティーの小説の特徴の一つが、「面白ければ少々の矛盾や無理は気にするな、何でもあり」です。

ポアロの対抗意識

昔から、「隣国同士は仲が悪い」と言われています。イギリスとフランス、オーストラリアとニュージーランド、日本と韓国、そして、フランスとベルギーです。

ベルギーもフランス語圏ですが、フランスに強烈な対抗意識を持っています。ポアロは、フランスのワインが大好きなのに、フランスに対する微妙なライバル心が見えます。

例えば、「ベルギーではカエルは食いませんぞ」と言ったり、ポアロから殺人の嫌疑をかけられた富豪の老女が腹を立てて、「このフランスの成り上がりが」と悪態をつくと、ポアロは冷静な表情で、「ベルギーの成り上がりです」と返答します。

ポアロが、アメリカ人の管財人の部屋をこっそり捜索していると、戻ってきた管財人が、「パリじゃ、勝手に人の物を捜索するのか?」と怒り、ポアロは「ブリュッセルです」と答えます。

このあたりは、登場人物の書き分けが見事なクリスティーの筆がしなっています。

クリスティーの人気投票

クリスティーは、「ミステリー界の女帝」として、今でも君臨しています。世界100ヶ国以上に翻訳され、人気は衰えません。

クリスティーの誕生125周年記念の今年、クリスティーの作品の大規模人気投票がありました。結果は以下の通りです。

1位『そして誰もいなくなった』→私の銀メダルがこれです。
2位『オリエント急行殺人事件』
3位『アクロイド殺し』→これが、最大の問題作です。
4位『ナイルに死す』→今回の『ナイル殺人事件』の原作です。
5位『ABC殺人事件』→私の中で金メダルがこれです。
6位『予告殺人』
7位『パディントン発4時50分』
8位『白昼の悪魔』
9位『五匹の子豚』
10位『カーテン』

クリスティーがミステリーを書いた時代、ミステリー作家が今ほどおらず、どんなトリックでも「世界初」でした。この人気投票を見ると、クリスティーがオリジナルのプロットを考え出した『アクロイド殺し』『オリエント急行の殺人』『そして誰もいなくなった』が大人気ですね。

この3作は、処理方法がやたらに難しいため、普通のミステリー作家は手が出さなかったアクロバティックなトリックを使っています。読者の好き嫌いも真っ二つに分かれ、特に、『アクロイド殺し』は、フェアかアンフェアで今も議論のタネです。

私は、アンフェアだと思います。未読の方は、ワインを飲みながら、是非、ご自分で判断してください。この場合、シャンパーニュがいいでしょう。

最大のミステリー、クリスティー失踪事件

「ミステリーの女帝」、アガサ・クリスティーの最大のミステリーが、「11日間の失踪事件」です。当時36歳のクリスティーが、1926年12月3日から11日間、行方不明になったのです。

日本では、大正15年12月9日付けの朝日新聞の朝刊で、「ロンドンを揺るがす奇怪な事件 美人の探偵小説家 突如行方不明になる」との見出しで報じています。

この原因が『アクロイド殺し』の出版とのことです。同年に同書を出版したところ、この作品のプロットが社会的な大論争になり、しかも、同年に母親が死亡し、夫が浮気するなど、いろんな精神的な重圧が重なり、失踪したのです。

11日後、クリスティーは見つかりました。1927年1月13日(1926年12月25日から昭和なので、夕刊の発行日は昭和2年1月13日です)付けの朝日新聞の夕刊では、「クリスチー夫人 行方が判明 全く精神を喪失した あはれな夫人の姿」との見出しで、クリスティーの発見を報じています。クリスティー事件は、地球の反対側の新聞に載るほどの大事件だったようです。

後に、失踪の原因は、記憶喪失との診断が下ったそうですが、この事件を取り上げた映画、『アガサ』では別の解釈をしています。夫とは2年後に離婚し、1930年に14歳年下の考古学者と再婚。これも、ミステリーですね。

クリスティーは、華麗なミステリーを多く書き、今でも愛好家が世界中にいます。ミステリー映画が圧倒的に多いのがクリスティーの作品です。

猟奇殺人やスプラッターが多い現代物ミステリーに比べ、品の良い殺人が多く、安心して見られるのもクリスティーの魅力です。

人気投票第1位の『そして誰もいなくなった』の映画版は、200分の超ロング版で、ボルドーを二人で2本飲めるでしょう。

ゆったり時間かけて上質のワインを飲みながら極上のミステリー映画を見る。これに優る幸せな時間はありません。

葉山 考太郎
葉山 考太郎

シャンパーニュとブルゴーニュを愛するワイン・ライター。 ワイン専門誌「ヴィノテーク」、「神の雫(モーニング)」等にコラムを執筆。 2010年にシャンパーニュ騎士団オフィシエを受章。 主な著書は「クイズでワイン通」「今夜使えるワインの小ネタ(以上講談社)」、「30分で一生使えるワイン術(ポプラ社)」など

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