ブルゴーニュの銘醸地ムルソーを再発見!

ムルソー村

ピュリニー、シャサーニュの両モンラッシェ村と並ぶブルゴーニュ最良の白ワイン産地として知られるムルソー。ワイン愛好家としても知られるアメリカ合衆国3代目大統領トーマス・ジェファーソンもお気に入りと称した、その芳醇で円熟した味わいは世界中で愛されています。

ブルゴーニュ愛好家であれば、知らぬ者はいない白ワイン産地ですが、今回は少しディープにムルソー村を語ります。

ムルソーはなぜリッチなのか?

今でこそ世界的なトレンドもあり、フレッシュで細身なスタイルのワインも増えていますが、やはり、昔からムルソーと言えばバターとヘーゼルナッツの甘美な香りと芳醇な味わいが特徴です。

その理由を「テロワール」と一言で済ますことは簡単ですが、事象には原因があるもの。ブルゴーニュワインの権威ジャスパー・モリスMWが唱えているムルソーがリッチな味わいの要因をご紹介します。

地下水位の違い

ピュリニーは繊細で上品、ムルソーは濃厚で芳醇。隣あった村でこのような違いが出るのは、単一品種で土地の違いを表現するブルゴーニュワインらしいですが、これには土壌の違いだけでなく村を通る地下水位の違いも関係しているそうです。

というのもピュリニー・モンラッシェ村は地下水位が高く、ワインを熟成させるセラーを深く掘ることが出来ないため、冷房設備のない時代、夏場は低温に保てずにワインが2回目の冬を過ごすことが出来なかったそうです。つまり、樽熟成によって甘い樽香や酸化による複雑な風味を、ワインが纏う前に瓶詰されていたということになります。

一方ムルソー村の辺りは地下水位が低く、十分な深さのセラーを掘ることが出来るため、昔から長い熟成期間を確保することが出来ていたとのこと。甘美な香りと円熟した味わいはこうして生まれていたのですね。

ブレンド

また、昔はワイン商が生産者からワインを買い取り、無作為にブレンドして販売することが一般的でした。ジャスパー・モリス氏は、この慣習によって斜面下部の柔らかく芳醇な畑のキャラクターが強く出ていたことも原因の一つとして挙げています。

ムルソー村は、ピュリニー・モンラッシェ村などに比べると面積が広く、斜面下部の畑も多いことからでしょうか。古くからブレンドされずに瓶詰されていたであろう、モンラッシェなどの特級畑がないことも影響していそうですね。

 

これらの人為的要素を「テロワール」と考えるかについては議論がありますが、個人的には立派なテロワールの一つだと思えます。最近は樽熟成のニュアンスを控えめに、繊細なワインを造る生産者も増えています。改めてムルソーを飲み比べてみるのも面白いですよ。

特級畑がないムルソーは劣っているのか?

ブルゴーニュの、ひいては世界最高峰の白ワインを産出しているムルソー、ピュリニー・モンラッシェ、シャサーニュ・モンラッシェと連なる3村。その中で特級畑のないムルソーは劣って見られがちですが、果たして本当に劣っているのでしょうか?

ムルソーに特級畑がない理由については、格付け当時に生産者たちが特級畑になることで税金が高くなることを嫌ったためという説もありますが、実際のところは定かではありません。しかし前述のジャスパー・モリスMWは、ムルソー最高の1級畑の品質は特級畑にも滅多に劣らないと語っています。

このムルソー最高の1級畑とは、ペリエール、ジュヌヴリエール、シャルムの3つの畑のこと。特にペリエールは、AOC制度以前に行われた専門家の私的格付けでは幾度も特級に格付けされており、そのポテンシャルは疑いの余地がありません。

また、たとえ最高の畑が劣るとしても、村名クラスの安定した高い品質はプロならば知っているものです。色眼鏡をかけずに飲んでみれば、素晴らしいコストパフォーマンスのワインに感じられるかも知れません。

ムルソーの怪奇?ブドウによって名前が変わる畑

冒頭から述べているとおり「ムルソーと言えば白ワイン」ですが、実はわずかながら赤ワインも生産されています。しかしムルソーの赤ワインを見かけることは、非常に稀です。

それもそのはず。ムルソー村にはシャルドネか、ピノ・ノワールか、植えられるブドウによってラベルに表示される村の名前が変わる奇妙な1級畑がいくつも存在しているからです。

畑名 白の場合 赤の場合
ラ・ジュヌロット ムルソー ブラニ
ラ・ピエス・スー・ル・ボワ ムルソー ブラニ
スー・ル・ド・ダーヌ ムルソー ブラニ
スー・ブラニ ムルソー ブラニ
プリュール ムルソー ヴォルネ
サントノ ムルソー ヴォルネ

このような畑では、シャルドネからワインを造れば「ムルソー」として販売できますが、ピノ・ノワールでワインを造ると、「ヴォルネ」だったり「ブラニ」といった隣村の名前になってしまいムルソーと表示することが出来ません。ムルソーの赤ワインが少ない理由はこの奇妙な法律が原因の一つでもあります。

加えて、「ムルソーの白ワイン」として販売すれば飛ぶように売れますから、そもそも植えられているピノ・ノワール自体が少ないということもあります。

ブルゴーニュワイン委員会によると、ムルソー村のピノ・ノワールの栽培面積はわずか13haほど。特級畑並みに希少ですので、見かけることがあればぜひ一度手に取ってみてください。

ブルゴーニュ好きなら誰もが知っているムルソーですが、違った角度から改めて飲んでみると新しい発見があるかも知れませんよ。