ブルゴーニュの新潮流、ミクロ・ネゴシアンとは?

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公開日 : 2020.4.3
更新日 : 2023.7.12
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神々に祝福された土地ブルゴーニュ。

その価格高騰に頭を抱えているのは、実は消費者だけではなく生産者も。近年そんなブルゴーニュの内情を反映したミクロ・ネゴシアンと言われる新しいスタイルの生産者たちが台頭しています。

ドメーヌやネゴシアンといった括りで、何かを語ることはできない時代が到来しました。

目次

生産者が頭を抱えるワケ

ブドウ収穫量の増減はあれど、ワインを生産するためのコストは基本的には毎年同じ。それに対して、需要と供給のバランスによってワインが高値で売れるようになれば、生産者は嬉しいはずと考えていませんか?

ところが、現実はそう簡単ではありません。ブルゴーニュに対する需要の高まりが、ワインの価格以上に、地価を異常なほど高騰させてしまっているのです。

フランスの農村土地整備公社の報告によると、2014年のグラン・クリュの1ヘクタールの平均地価は435万ユーロ(約6億円)でした。しかし中々売りに出されない特別な畑が売りに出された場合は、価格はさらに上がります。

史上最高額は、2017年にシャトー・ラトゥールを有するアルテミス・グループが7.53haのクロ・ド・タールを買収した金額で、およそ2億8,000万ユーロ(約360億円)と言われています。その他にも、近年の取引は下記のように驚くような高額で行われています。

2012年:バタール・モンラッシェ 2,500万ユーロ/1ha
2014年:クロ・デ・ランブレイ 1,166万ユーロ/1ha
2017年:クロ・ド・タール 3,718万ユーロ/1ha
2017年:コルトン&コルトン・シャルルマーニュ 1,818ユーロ/1ha

※これらの取引価格はあくまで推定されている価格かつワイナリーなどの設備も含んでいます。

このような地価の高騰により、生産者に様々な問題を引き起こし、ブルゴーニュというワイン産地の構造が徐々に変わってきています。

常軌を逸した土地代を、ワイン生産の利益で回収することは到底できません。1980年代初頭はグラン・クリュの畑を買っても、3年分の収穫で投資を回収できたようですが、現在の価格では3世代以上かかると言われています。並大抵の資本では、特級畑や有名な一級畑への参入は不可能です。

そしてもう一つの問題は、相続税や相続を分割する際の支払いが問題となり、昔ながらのブルゴーニュに根ざした家族経営のドメーヌが代替わりできず、企業に買収されることが増えていること。

特に相続税のプレッシャーはドメーヌに重くのしかかっています。農村だったブルゴーニュが、企業色の強いボルドーのように変化しているのです。

しかし多くの消費者と同じように、生産者にとってもシャンベルタンやミュジニーといった特級畑は、一度は造ってみたい憧れの畑。そこで誕生したのがミクロ・ネゴシアンという新しいスタイルの生産者でした。

ドメーヌとネゴシアンの違い

ミクロネゴスについて理解するためには、まずドメーヌとネゴシアンという従来のブルゴーニュの生産者の業態について知る必要があります。

伝統的なネゴシアンは、ブドウ農家が造ったワインを樽で買い付け、ブレンドと熟成をして、自分たちのラベルを貼って販売する生産者です。商人という言葉のイメージに近いかもしれません。

ネゴシアンはブドウ畑を所有しないため、ブドウ栽培とワイン醸造において、自分たちでコントロールすることが難しいという欠点があります。

※現在はワインではなく、果汁やブドウそのもので購入するネゴシアンも増えています。

一方でドメーヌは畑を所有するブドウ農家が栽培から瓶詰め、販売まで一貫して行う業態です。

農家の負担は増えますが、最初から最後まで品質のコントロールができるため、現在のように高品質なワインを造る小規模なドメーヌが1930年代ごろから増え始めました。

ミクロ・ネゴシアンとは

ミクロ・ネゴシアンという言葉に厳密な定義はありませんが、ミクロ・ネゴシアンは1998年設立のルシアン・ル・モワンヌや2007年設立のオリヴィエ・ヴァーンスタインに代表される小規模なネゴシアンのことです。

彼らは1樽(=220L)や2樽分という極少量の単位で買い付け、畑ごとにオートクチュールなワインメイキングをしています。

ミクロ・ネゴシアンのほとんどは、すでに出来上がったワインを買うのではなく、彼らが契約しているブドウ畑の仕事を手伝い、果実や果汁の状態で買い付けて醸造を行っており、土地を所有していないだけで仕事の内容はドメーヌとほとんど同じ。“ネゴシアン”という呼び方ではありますが、ドメーヌとネゴシアンの中間的な存在と言えるでしょう。

このようにして造られたワインは高品質で、高い評価を獲得しています。

まとめ

一昔前はネゴシアン物、ドメーヌ物といった括りでブルゴーニュのワインが語られることがありました。しかし現在では、生産者もネゴシアンとドメーヌの境界線はぼやけてきていいます。

もしも生産者をネゴシアンだから、ドメーヌだから、といった区別をしているのであれば、それは少し古い考えかもしれません。

幅広いランナップで、テロワールの違いをハッキリと教えてくれるネゴシアンのワインも楽しんでみてはいかがでしょうか。

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