野生的な自然が残るイタリア・バジリカータ州で造られるワインの魅力

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公開日 : 2020.2.7
更新日 : 2022.5.23
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バジリカータ 風景

太陽の光まぶしい温暖な気候、陽気な人々、そして何より食の宝庫というイメージが強い南イタリアにおいて、周りの州とは異なる歴史を持つバジリカータ州。

知名度も低く、日本でもバジリカータ州のワインはあまり見かけませんね。しかし、バジリカータ州でもイタリア南部を代表する赤ワインが造られており、近年注目されるようになってきました。

そこで今回はバジリカータ州で造られているワインについて紹介致します。

目次

バジリカータってどんなところ?

バジリカータ 地図

イタリア南部に位置するバジリカータ州は、北東にはプーリア州、北西はカンパーニア州、南はカラブリア州に接し、西にわずかにティレニア海、南はイオニア海に面しています。イタリア半島を長靴に例えると、ちょうど土踏まずの部分になります。山岳地帯が州の面積の47%を占め、丘陵地帯が45%、平野部は8%しかありません。

バジリカータ州は、かつては『ルカニア』と呼ばれた地域の一部で、古代ギリシャ人が植民したことに始まり、他の南部の地域と同じく外国勢力に翻弄された歴史を持ちます。アペニン山脈に続く山々により隔離され、交通の便も悪いため他州から孤立しており、残念ながら経済の発展も遅れています。しかし、それゆえに自然が多く残り、独自の民族文化を発展させてきました。

旧石器時代から人々が住んでいたとされる渓谷の岩肌をくり抜いて作った洞窟のような住居郡「マテーラの洞窟住居郡サッシ地区」は1993年に世界遺産に登録され、観光地として有名です。州都は内陸のポテンツァで、今ではイタリア南部の中心地のひとつとなりました。

気候は海岸部は地中海性気候ですが、内陸部は大陸性気候で冬は寒く積雪もあります。海岸部も内陸部も夏は暑く乾燥しているためブドウの栽培に適しており、特に標高の高い位置にある内陸部のブドウ畑は気温の寒暖差も激しく上質なブドウが育ちます。

生産量の多いブドウ品種はギリシャ原産のアリアニコで、内陸の比較的標高の高い場所で多く栽培されており、長期熟成可能な赤ワインを生みます。アリアニコはバジリカータ州周辺のイタリア南部がギリシャの植民地であった紀元前7〜6世紀に、ギリシャの移民によって持ち込まれたという説もあります。

バジリカータ州のワインについて

赤ワイン

前述したようにバジリカータ州で最も生産されているアリアニコ種から造られるワインをはじめ、バジリカータ州で造られるワインをご紹介します。

アリアニコから造られるワイン

南イタリアを代表する偉大な赤ワインの一つである『アリアニコ・デル・ヴルトゥーレ』は、バジリカータ州北部の死火山ヴルトゥーレ山の麓で育てられるアリアニコ100%で造られます。

アリアニコは日照時間が長く乾燥した土地での栽培が適しており、特に火山性の土壌を好む品種です。発芽が早くて晩熟なため、ゆっくりと熟成することでポリフェノールとタンニンをたっぷり含んだブドウとなります。そのため、長期熟成にも絶えうるワインとなります。2年以上熟成させた『アリアニコ・デル・ヴルトゥーレ・スーペリオーレ』は2010年にD.O.C.G.(注1)に昇格しました。

死火山ヴルトゥレ山の麓の標高の高い冷涼な場所で育てられたアリアニコの収穫は遅く、11月になることも珍しくありません。そのため、『アリアニコ・デル・ヴルトゥーレ』はアリアニコのワイン特有の色調が濃く、濃厚で力強いフレーヴァーでありながら、しっかりとした酸を持ったワインとなります。

(注1)イタリアの原産地呼称法に基づき、ブドウの収量・ワインの収量・アルコール度などが厳しく制約され、さらに出荷に際して国の検査を必要とするワインにあたえられる、イタリアワイン最高位の格付け「統制保証原産地呼称」の略。

その他のワイン

その他の赤ワインとして有名なのは『テッレ・デッラルタ・ヴァル・ダグリ』。アペニン山脈の高い山に囲まれた谷間にあるポテンツァ県のヴァル・ダグリでは、メルロとカベルネ・ソーヴィニヨンをベースにしたしっかりとした赤ワインです。

バジリカータ州は白ワインの生産は少ないのですが、世界遺産の「洞窟住居郡サッシ地区」があるマテーラ地区はワインの産地でもあり、マルヴァジア・ビアンカ・ディ・バジリカータを主体とした白ワインが造られています。

マルヴァジア・ビアンカ・ディ・バジリカータはバジリカータだけで栽培されているアロマティックな品種で、日本でも比較的手に入りやすいでしょう。

バジリカータのワインの現状

バジリカータ 風景

バジリカータ州のワインは生産量も少なく、イタリアの他州のワインに比べて知名度が低いことは否めませんが、以前より良質なワインが生産されるようになってきました。国際遺産都市マテーラが2019年の欧州文化首都に認定され、昨年は様々な国際的なイベントでバジリカータ州のワインがアピールされました。

また、2019年のガンベロ・ロッソ(注3)では複数の『アリアニコ・デル・ヴルトゥーレ』が最高賞のトレビッキエリを獲得。南イタリアを代表する力強いワインとして今後ますます注目されるでしょう。

(注3)ガンベロ・ロッソ イタリアのグルメ専門の出版社が制作するイタリアワインのガイド(評価)本。

まとめ

食の宝庫と言われるお隣のカンパーニャ州やプーリア州と違って、山岳地帯が多いバジリカータ州は決して作物が豊かに育つ地域ではありませんし、長い間孤立していたため今なお経済発展は遅れています。しかし、だからこそ、その土地ならではの風土を反映した文化が育まれてきました。

ワインも然りで、そんな歴史や風土を感じられます。見つけたときは手に取ってみてください。

参考文献 ・日本ソムリエ協会 教本 2018

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