世界最高の醸造家が語るルイ・ロデレール ブリュット・ナチュール誕生秘話

シャンパーニュ・メゾン、ルイ・ロデレールの醸造長を務めるジャン-バティスト・レカイヨン氏が、ルイ・ロデレーの中でも特別なワイン「ブリュット・ナチュール」の新ヴィンテージを引っ提げて来日。

シャンパーニュだけでなく、ボルドー・メドック2級のピション・ラランドやポートワインの名門ラモス・ピントなど世界中のトップワインを手掛け、優れた醸造家に贈られるワインメーカー・オブ・ザ・イヤーを5度も受賞した天才醸造家に「ブリュット・ナチュール」について語っていただきました!

ナチュール=自然

(左)ルイ・ロデレール社長フレデリック・ルゾー氏とフィリップ・スタルクス氏

ブリュット・ナチュールは、フランスが誇るデザイナーのフィリップ・スタルク氏とルイ・ロデレールがコラボレーションした特別なキュヴェ。パッケージデザイン以外にも、スタルク氏の哲学が反映されています。

「建築物から家具や船まで、様々なものをデザインしてきたフィリップ・スタルク氏は、物事の”本質”を捉え、表現することに長けた人物だ。ワイン造りに直接口を出すことはしなかったが、ワインの本質とは何か?ということについて議論した」とレカイヨン氏は言います。

そして彼らは、ワインの本質は自然から来るものという結論に至りました。

つまり「自然」を表現するということが、ブリュット・ナチュールのコンセプト。そのためにワイン造りから、可能な限りの人の手が加わることを避け、ありのままの自然を表現したそうです。キーワードは”less is more”(もっと少なく)。

「ワイン造りに本質的に必要でないものは、醸造においては過剰な亜硫酸や人口酵母、乳酸発酵、ブレンディング、ドサージュによる糖分の添加。畑では殺虫剤、除草剤などだ。一方でブドウ木の剪定やキャノピー・マネジメント、収穫のタイミングを選ぶことは必要だと考えた」

根っからのワインメーカーであるレカイヨン氏はブドウ栽培とワイン醸造の話になると止まりません。

例えばブリュット・ナチュールは3種類のブドウ品種(シャルドネとピノ・ノワール、ピノ・ムニエ)を使用していますが、人為的なブレンドを行っていません。全てのブドウを同じ日に収穫し、そのまま果汁を絞ってワインを造っています。同様にシャンパーニュで一般的なヴィンテージ間や生産地のブレンドも。もちろんドサージュもしていません。

「ブリュット・ナチュール」は極辛口を意味するシャンパーニュの表示用語ですが、「ナチュール=自然」の意味も含んだ自然派ワインなのです。もちろん栽培においても、畑は2004年から認証を取得しており、100%ビオディナミ栽培で育てられたブドウを使っています。

ブリュット・ナチュールが表現するテロワール

自然派ワインしか飲まないというスタルク氏は、それまで数多くのシャンパーニュ・メゾンから声をかけられていましたが、全て断っていました。このプロジェクトが始動したのも、ビオディナミ認証を取得しているブリュット・ナチュールの畑があったからだそうです。

ブリュット・ナチュールの畑は、シャンパーニュ地方ヴァレ・ド・ラ・マルヌ地区の1級畑キュミエール村にあります。完璧な南向きの斜面に拡がっている10haほどの畑は、真っ黒な粘土質土壌なことから地元民にブーダン・ノワール(黒ソーセージ)と呼ばれています。

「石灰質が支配的なシャンパーニュ地方で、これほど粘土質が豊富な土壌は珍しい。ピュアな石灰質土壌から造られるクリスタルとは対照的だ。この畑の特異なキャラクターは、冷たく湿った粘土質土壌と、真南を向いた急斜面による豊富な日照量が生み出す暖かさの相反する二つの要素を内包していることだ」とのこと。

実際にブリュット・ナチュールは、口に含むと太陽が与える果実の成熟度を感じますが、すぐに冷たい土壌由来のフレッシュな酸が口蓋を貫きます。このコントラストのある味わいが畑の個性だと言います。

これは温暖なヴィンテージにより明確になるとのこと。だから偉大な年として知られていますが冷涼だった2008年は生産されず、2006年や2009年、そして今回リリースされた2012年のような暖かい年にのみ生産しているそうです。

「忘れてはいけないのがブリュット・ナチュールはゼロ・ドサージュだということ。ゼロ・ドサージュはスティルワイン造りに近いが、この畑の土壌はシャブリと似ているからゼロ・ドサージュが可能なんだ。実は400年前のキュミエールはピノ・ノワールの赤ワインが有名だったんだ」と驚きの情報も教えてくれました。

ピノ・ノワールが祝福された2012年と初のロゼ

一口に暖かい年といっても、今回リリースとなる2012年は果たしてどんな年だったのか尋ねてみました。

「2012年は冷たく湿った春から始まり、特にシャルドネがカビ病の被害を受け、栽培家の不安が高まった。春の時点で予測される収穫量は例年より30%も少なかったからだ。

しかし、それまでが嘘のような7月が訪れてから、夏の生育期は完璧な天候だった。この少ない収穫量と完璧な天候のコンビネーションによって、ブドウの成熟度は非常に高くなった。

ヴィンテージの特徴としては、近年の偉大な年、大柄な2002年とクラシックな2008年の中間的なキャラクターで非常にバランスが良い。特にピノ・ノワールにとっては祝福されたヴィンテージだ」

そこで2012年は、ブリュット・ナチュールでは初となるロゼを造ることにしたそうです。

このロゼについてもスタルク氏と相談。彼は色は人生にとって重要な要素と考えており、こだわったと言います。

「最初スタルク氏は灰色のワインを造れないのかと聞いてきた。私は灰色のワインの造り方は知らないけど、美しい淡いロゼ色なら造れると答えた」

そこでレカイヨン氏は、世界最高峰のロゼ・シャンパーニュと名高いクリスタル・ロゼと同じ特殊な製法を採用。あらかじめ低温浸漬法で作った淡い赤ワインを発酵前のジュースとまぜ、もう1度発酵させるという手法で、驚くほど淡く美しい色合いのロゼに仕上げました。

このようにブリュット・ナチュール・ロゼにとって色はとても大事な要素。

もちろん、味わいも引っかかりのあるタンニンや苦味は一切感じないエレガンスあふれる仕上がりですが、世界的なデザイナーと醸造家がこだわった色調も魅力の一つとなっています。

進化し続けるルイ・ロデレール

5年前、ブリュット・ナチュールはルイ・ロデレール40年ぶりの新作として話題を集めましたが、それからルイ・ロデレールの勢いは止まりません。

2017年にはメゾンの地下セラーで特殊な熟成をしたクリスタル・ヴィノテック、そして今年はブリュット・ナチュール・ロゼをリリース。さらに2020年には100%ビオディナミ栽培となったクリスタル2012年、そして2021年以降に世界中で話題となっているピノ・ノワールとシャルドネのスティルワインのリリースが控えています。

今後もルイ・ロデレールから目が離せません。