フランスのトップソムリエが語るペアリングの極意

メインディッシュ:鴨胸肉のロティ 柑橘の香り

昨年9月に日本橋髙島屋にオープンした「レ・カーヴ・ド・タイユヴァン 東京」。フランス・パリで最も予約が難しいレストラン「タイユヴァン」とエノテカがパートナーシップを結び、オープン以来「L’accord Mets & Vins(食とワインの調和)」をコンセプトに様々なペアリングを提案してきました。

オープンから1年の節目にタイユヴァンの総支配人であるアントワーヌ・ペトリュス氏が来日。同店でペアリングセミナーを開催しました。

アントワーヌ氏の監修、そして貴重な解説のもと提供された絶妙なペアリングをレポートします!

フランスでたったの5名!アントワーヌ・ペトリュス氏の快挙

今回、来日したタイユヴァンの総支配人アントワーヌ氏はタイユヴァンにとって欠かすことのできない人物であるのと同時に、フランスという国においても重要な人物です。

というのも、彼はフランスの国家勲章に当たる「フランス国家最優秀職人章(MOF)(注1)」を弱冠27歳の若さでソムリエとして受章。さらに昨年は、メートル・ドテル(注2)として二度目のMOFを受章しました。

100年以上続く歴史においても2冠を達成したのはたったの5名。これはアントワーヌ氏がワインや食の世界を牽引していく存在として期待されている証です。

そんなトップソムリエの来日の際にペアリングセミナーが催され、アントワーヌ氏監修の料理とともにペアリングのコツも伝授されました。

(注1)フランス文化の最も優れた継承者にふさわしい、高度な技術を持つ職人に授与する国家称号。パティシエやショコラティエなどが有名だが工芸やガーデニング部門など多岐に渡る職種がある。

(注2)レストランやホテルにおいて給仕を行うサービスの責任者

「生産者の個性が表れた」ワインをセレクト

ペアリングセミナーで提供されたワインは全て「コレクション・タイユヴァン」というタイユヴァンのプライベートブランド。実際にアントワーヌ氏が現地を訪問し、どの生産者のどのワインにするかを決め、タイユヴァンのためだけに瓶詰めを行っています。

ワイナリー名よりも大きく「TAILLEVENT」の文字があることからも、コレクション・タイユヴァンに選ばれることが生産者にとってどれだけ名誉なことであるかが分かります。

アントワーヌ氏によると「ワインの選定の際に一番のキーになるのが生産者の個性がワインに表れているか」だそうで、30年続くコレクション・タイユヴァンのプロジェクトも常に同じワインがリストアップされることはないそうです。

ペアリングセミナーではそんなコレクション・タイユヴァンの中から4種のワインに合わせた料理が提供されました。

提供されたワインと料理

N.V. クレマン・ド・ブルゴーニュ / ヴィトー・アルベルティ
× ホタテのタルタル

2017 ルイィ / ドメーヌ・ラフォン
× 茄子と蟹のミルフィーユ仕立て

2012 コート・ド・ブール / シャトー・ファルファ
2012 シャトーヌフ・デュ・パプ / ドメーヌ・ド・ラ・ジャナス
× 鴨胸肉のロティ 柑橘の香り、きのこのソテー ボルドー風添え

今日から使えるペアリングの基本!

セミナーの最初にお話されたのがペアリングのポイント。アントワーヌ氏は下記のように説明しました。

①生産地を合わせる
②似た特徴のものを合わせる
③逆の特徴を持っているものを合わせる

「①と②は皆さんもよくお分かりかと思いますが、対比させることによってもペアリングは成り立つのです。」とアントワーヌ氏。

一体、どんなことなのかと不思議に思う説明でしたが、その後1品目に提供されたワインと料理がこれを体現していました。

真逆の特徴がうまくペアリングする

N.V. クレマン・ド・ブルゴーニュ / ヴィトー・アルベルティ × ホタテのタルタル

1品目のホタテのタルタルにはコレクション・タイユヴァンのクレマン・ド・ブルゴーニュが合わせて提供されました。

「ホタテのタルタルの塩味とスパークリングワインの泡の刺激は真逆のようなもの。どちらも刺激という意味では同じですが、その刺激のニュアンスは対比しています。ですが、その対比がうまくペアリングし、余韻は非常にまとまりがあるんです」とアントワーヌ氏。

泡が強すぎないことで繊細な味わいにも寄り添うペアリングで、ワインが食事の邪魔をしないかというのもペアリングを決める大きなカギになるとアントワーヌ氏は語りました。

「酸」がキーワードの繊細なペアリング

2017 ルイィ / ドメーヌ・ラフォン × 茄子と蟹のミルフィーユ仕立て

次の料理は、ビネガーが香る茄子と蟹のミルフィーユ仕立て。こちらにはロワールの白ワインが一緒に提供されました。

アントワーヌ氏が今最も注目する産地がロワール。白ワインにおいても辛口から甘口まで、赤ワインも軽めから重めまで、さらにロゼワイン、スパークリングワインなど実に様々なワインが造られています。そんな産地で造られるワインからは常に新しい発見が期待できるとのこと。

そして「一番大事なことは高品質なワインが今もなお、リーズナブルな価格で手に入れられること!」と語気を強め、価格が高騰する産地もある中でロワールの可能性について述べました。

こちらのペアリングのポイントは「酸」とのことで「ワインの酸味とビネガーの香りを合わせること、こちらの場合は似た特徴を合わせることでペアリングが成立しています」とアントワーヌ氏は解説しました。

料理の繊細さをワインの味わいで邪魔することなく、非常に上品なペアリングでした。

タイプの異なる赤ワイン

2012 コート・ド・ブール / シャトー・ファルファ

メインディッシュに合わせて、ボルドーとローヌの赤ワインが同時に提供されたとき、私も含め参加者の多くが「グラスは逆ではないのか」と疑問を抱きました。

ボルドーワインは重厚な味わいの赤ワインで大ぶりのグラスのことが多いため、これは間違っているのでは?と思ってしまったのです。

しかし、アントワーヌ氏は説明しました。「ボルドーワインでありながら、ブルゴーニュのワインのようにエレガントで繊細な味わい。典型的なボルドーワインとは真逆の印象があると思います。そのためこのグラスを選びました。もちろん逆でも問題ありません。」

ワインを一口含むと、確かに上品な味わいでこれがグラスによって引き立てられているのだと実感しました。

このワインはもちろんメインディッシュの鴨胸肉とも合いましたが、きのこのソテーと相性抜群。食事を引き立てる上品な味わいが魅力的で、もう一口と料理が進み、もう1杯とワインが進む絶妙なペアリングでした。

2012 シャトーヌフ・デュ・パプ / ドメーヌ・ド・ラ・ジャナス

アントワーヌ氏曰く、最後に提供されたシャトーヌフ・デュ・パプは「一番旨みを感じるワイン」とのこと。

シャトーヌフ・デュ・パプは赤ワインには珍しくシトラスの香りを感じることができ、これが付け合せの柑橘とマッチ。

「鴨肉は完全に火を通さないレア状態なので、赤ワインの血っぽさとどちらも共通点があることでうまくペアリングしています」と語りました。

自分の好みを信じることが一番大切

最後に、参加者の方から「ワインの飲み頃」について質問があり、毎年10万本以上のワインの買い付けを行っているトップソムリエにとっての「ワインの飲み頃」を教えてくれました。

「多種多様ある好みは人それぞれ唯一無二のもの。

例えば、良い年のワインだからと言って2年後に飲もうと決めて飲んでもそれが自分の好みでないことは多々あります。私もそういうことをたくさんやってきました。

購入する前に飲み頃を知りたいときはそのワインを飲んだことがある人のアドバイスを聞くことが一番ですが、その好みがわかるのは自分だけ。自分の好みを信じてワインを楽しんでほしいと思います。」

「ワインの飲み頃」というワインラヴァーにとって永遠の課題はトップソムリエにとっても大きな課題であることが分かりました。

ワインのペアリングも同じで、アントワーヌ氏から伝授していただいたペアリングの基本をもとに、ご自身の好みともマッチするものがあなたにとっての究極のペアリングなのかもしれません。

今回イベントが行われたタイユヴァン 東京

LES CAVES de TAILLEVENT TOKYO (レ・カーヴ・ド・タイユヴァン東京)
住所:〒103-8265 東京都中央区日本橋2丁目4番1号 日本橋髙島屋S.C. 本館8F