海外の生産者も注目!北海道で造られるワインの魅力

お気に入り追加

ナレッジ
公開日 : 2019.9.26
更新日 : 2022.5.23
シェアする
北海道風景

近年、北海道のワインが国内外から注目を集めています。道内のワイナリー数は2000年以降急増し、現在では35軒となり(注1)、今後も増えていくと予想されています。

今なぜ北海道でワイン造りが活発化しているのでしょうか?そもそも寒さの厳しい北海道でブドウが育つのでしょうか?

今回は北海道におけるワイン造りついて詳しく紹介したいと思います。

(注1)国税局課税部酒税課 平成29年度調査分による

目次

北海道の気候風土

北海道風景

北海道の面積は8万3456km2と東京都の約40倍、オーストリア一国の広さに匹敵します。

周囲は日本海、オホーツク海、太平洋に囲まれ、中央部の西側に天塩山地、夕張山地、東側に北見山地、日高山脈の山並みが走っています。そのため、北海道の気候は周囲を流れる海流や山脈の影響を受けるので、気温、降水量、日照時間には地域差があります。

北海道は多くの地域が冷帯多雨気候に属しており、冬にはたくさん雪が降りますが、梅雨がなく台風の影響も少ないため、夏の降雨量は少ないのが特徴です。

フランス北東部のシャンパーニュ、アルザス、ドイツのラインガウといった白ワインの銘醸地は北緯49度に位置しますが、北海道は北緯42度から45度の間になります。それでも冬の寒さが非常に厳しいため、これらの銘醸地にほぼ近い気候風土と言えるのです。

よって、冬の寒さと積雪対策には工夫が必要ですが、低湿でブドウの成熟期に雨が少ない北海道はヨーロッパ系のブドウ品種の栽培に適した気候であることがわかります。

北海道のワインの歴史

北海道に最初にブドウ樹が植えられたのは1875年。北海道開拓使から生食用のブドウの苗木を配布されたのが始まりでした。

その翌年には札幌に「開拓使葡萄酒醸造所」が設立され、ヤマブドウからワインが造られ、これが北海道のワインの歴史の始まりです。しかし当時、ワインは人気が出ず、1913年に廃業しました。

それからワイン造りは50年近く中断しますが、1960年、十勝地域にある池田町で山ブドウ(野生ブドウ)を使って再びワインを造る計画がスタートします。

1970年代にはヨーロッパ系のブドウの苗木がドイツから寄贈されると、1979年にようやくミュラー・トゥルガウというスイス原産の白ブドウの収穫に成功。このようにして北海道ではヨーロッパ系ブドウ品種からワインが造られるようになったのです。

2000年以降は日本ワインブームの追い風を受け、各地でワイナリーの設立ラッシュとなり、その勢いは現在も続いています。2000年に果実酒製造免許の規制が部分的に緩和されたこともあり、家族経営の小規模ワイナリーも増え、近年では大手の飲料メーカーだけでなく、異業種からワイン造りに参入する企業も増えています。

北海道の代表的な産地

ブドウ畑

余市町

現在、余市町は北海道の中でもブドウ栽培が非常に盛んな地域です。

今から30年ほど前に余市町でヨーロッパ系のブドウ品種の栽培が始まって以来、ブドウ農家が少しずつ増加しました。

そして2010年に余市町に設立されたワイナリーが、ピノ・ノワールから高品質なワインを生産して話題となり、2011年には北海道初のワイン特区にも認定されました。それ以降、ワイナリーの新設が相次いでいます。

余市町は日本海に面した町で、海以外の三方向が山に囲まれているため、余市湾を望む丘陵地帯がブドウの産地となっています。気候は暖流の影響もあって北海道の中では比較的温暖で、ブドウ畑は丘陵地帯の斜面にあるため日照時間も長く、ブドウの成長に非常に適しています。

主な栽培品種はケルナー、ツヴァイゲルト、ミュラー・トゥルガウなどのドイツ系品種、そして近年はピノ・ノワールの栽培面積が急増しています。

小樽市

港町で有名な小樽市も隣の余市町同様日本海に面しており、海側を除いて山に囲まれた地形です。冬の積雪量は多いものの北海道の中では温暖な気候と言えます。

小樽市は北海道で初めてドイツ系ブドウ品種の栽培に成功した北海道ワイン株式会社の本社醸造所があることでも有名です。北海道ワイン(株)は日本ワインのみを生産する道内最大のワイナリーで、小樽市や余市町の多くのブドウ農家と契約し、毎年安定した生産量のワインを造っています。

ケルナーやピノ・ノワールの他に、生食用品種であるナイアガラやキャンベル・アーリーのワインも多く生産されています。

十勝地方

北海道中部の太平洋側にある十勝平野は、大きな台地性の平野で畑作が盛んな地域です。山に囲まれ、南部は太平洋に面していることから、北海道では雪が少ないのが特徴です。

雪が積もる地域ではブドウは雪によって寒さから守られますが、極低温で乾燥した気候の十勝平野では、ほとんどのブドウの苗木は冷害で枯れてしまいます。そこで、十勝地方の池田町では1960年代に厳冬でも毎年秋になれば実る野生の山ブドウを使ってワイン造りを始めました。

現在は冷涼な気候でも育つツヴァイゲルトやケルナー、セイベル種をクローン選別した清見や、交配品種の清舞、山幸といった耐寒性に優れたブドウ品種からワインが造られています。

栽培されている主なブドウ品種

ブドウ

北海道は冷涼なため栽培されるブドウ品種もヨーロッパ系の品種が多く、中でもドイツ系品種が多いのが特徴です。また、最近はピノ・ノワールの栽培面積が増えています。

ケルナー

北海道を代表する白ワインと言えば、ケルナーのワインでしょう。

ドイツ原産のブドウ品種で、そのほとんどがドイツで栽培されています。北海道ではケルナーをはじめ、ミュラー・トゥルガウ、バッフスなどのドイツ系品種の栽培が盛んで、日本における全醸造量の大半を占めています。

ケルナーからは辛口、中甘口、極甘口、スパークリングワインと様々なスタイルのワインが造られており、価格も比較的手頃です。

近年、ワインの品質は原料となるブドウの品質に依存することが認識されるようになったことから、北海道の冷涼な地域で栽培されたケルナーならではの爽やかで瑞々しい酸味が感じられるワインは、日本の他の地域では生まれない個性を持ったワインと言えるでしょう。

その他の白ブドウ品種に置いては、シャルドネやソーヴィニヨン・ブランの栽培面積も増加してきています。

ピノ・ノワール

フランス・ブルゴーニュ原産のピノ・ノワールは、まだ栽培面積は小さいものの、余市町を中心に急速に栽培量が増加しています。北海道のワイナリーの受入数量は既に100tを超え、日本のピノ・ノワールの半分以上を占めています。

長年、日本ではピノ・ノワールの栽培は難しいと言われていました。しかし余市町の生産者によって和食に合う良質なピノ・ノワールのワインが造られるようになったことがきっかけで、北海道のピノ・ノワールの可能性が注目されています。

その他、北海道ではツヴァイゲルトや、セイベル13053、山幸など寒さに強い黒ブドウ品種が栽培されています。

北海道のワインの現状

赤ワイン

地球温暖化の影響もあり、北海道はワイン用ブドウの産地として世界からも注目されています。2017年にはブルゴーニュの老舗ワイナリー「ドメーヌ・ド・モンティーユ」が函館にブドウ畑を購入し話題になりました。

また、ブドウの栽培から醸造までを行う小規模生産者が、余市町をはじめ函館や空知地域で北海道のテロワールを反映したワインを生産するようになりました。それらの高品質な日本ワインは、小規模ゆえ生産量が非常に少なく、また日本国内で非常に人気が高いので、なかなか手に入らない状態となっています。

まとめ

本州に比べてまとまった土地を入手しやすい北海道ではワイナリーの自社畑率が高く、特に近年増え続ける小規模ワイナリーは、原料が全て自社畑産というところも多くあります。つまり原料となるブドウの栽培に重きを置いてワイン造りを行っているということです。

北海道の気候風土を反映した、良質なワインが今後ますます増えていくと思われます。

参考文献 ・日本ソムリエ協会 教本 2018     ・イカロス出版 WINES OF JAPAN

この記事をシェア

公式SNS・APP

最新情報やワインの読み物を 毎週お届けします

line お友達登録

お買い物に便利! アプリ限定クーポンも随時配信

公式アプリ

ストップ!20歳未満飲酒・飲酒運転。
妊娠中及び授乳中の飲酒は、胎児・乳児の発育に悪影響を与える恐れがあります。

ほどよく、楽しく、良いお酒。のんだあとはリサイクル。

エノテカ株式会社はアサヒグループです。