奇怪な用語が飛び交うワインテイスティング。フルーツや花ならまだしも、スパイスに、ミネラル、焦げ香??しまいには動物臭?!ですが、これにはきちんと意味があるのです。ソムリエ目線で、毎回難解なテイスティング用語や表現などを解明!
あなたもイメージを膨らませてテイスティングに挑戦してみてはいかがでしょうか。
ボルドー、特にオーメドックという産地を説明する際に、「世界でもっとも優れたワイン産地」と始めます。
秀逸な、さらに「偉大な」と評されるワインは常に限られた生産量です。その希少性も相まって、高額で取引されるわけです。品質の極めて高いワインを大量に生産できる、という点においてオーメドックを凌ぐ産地はないでしょう。
ボルドー特級格付けワインは年産約3300万本。ブルゴーニュは320万本ですから、その多さが分かります。
なぜ偉大なワインを大量に生産することができるかというと、ワイン生産用のブドウに適した気候に恵まれています。海洋性気候はフランスだけでなく、世界的にみても限られた生産地にしかみられません。湿潤で、寒暖差が大きくなく、秋が長いという気候特性はブドウにはとても好条件なのです。
寒暖差があるのはよいとよく聞かれると思いますが、大き過ぎるのは逆のブドウの成熟の妨げともなります。あと地勢も優れています。土地が開けていて、なだらかな起伏に富んでいます。ジロンド河による日照の反射、放射熱、風通しのよさといった恩恵もあります。
そして生産者、つまりシャトーの財力と技術の高さが際立っています。特級シャトーは50から100haもの広大な畑を所有します。そして、植樹がヘクタール当たり8000〜10000本と非常に密植です。ブドウ樹が多ければ、手入れにも手間がかかります。その分、高品質なブドウを収穫することができます。近年では精密栽培とよばれる衛星、GPSなどを用い、区画ごとに生じる成熟度の違いを正確に認識し、栽培、収穫のタイミングの判断に活かすといった先進的な栽培が行われています。バイオダイナミックスを実践するシャトーも話題になっています。
醸造においてもボルドーは常に先を行っています。ブドウは区画ごとに醸造されます。大量生産的な大型タンクはより小型なタンクに切り替えられています。ブドウ、およびジュース、ワインはポンプで吸い上げられることなく、グラヴィティフロー(重力に反しない移動)で仕上げられます。また出荷後の品質保証、トレーサビリティの確保に努めているシャトーも数多く見られます。特級シャトーの品質とブランド力向上の取り組みはまだまだあります。このような品格を表すともいえるたゆまぬ努力はワインに表れます。
Elaboratedは、精巧な、入念に作り上げられた、詳細な、といった意味で、グランヴァンの品格、気品、複雑さ、緻密さ、巧妙さを表現するタームです。
シャトー・ダルマイヤック2016は、力強く、リッチ、かつ洗練されていて、ブラックベリーやカシスといった濃縮感のある果実香に木樽からのロースト香が抱合されています。ヴァニラ、丁子、甘草などのスパイス、加えて杉や生肉のニュアンスが深みを与えます。
リッチで活力のあるアタック、エアリーでふくよかな広がり、きめ細かな酸味がボディをリフトし、同時に透明感とテンションをつくります。グリッピー(舌を掴むような)でスパイシーなタンニン。ほんのりただようメントールフレーバーがさわやかさを醸し出します。ハイテックで精巧な作り、ポーイヤックの個性をきちんと表しています。
精巧なワイン
シャトー・ダルマイヤック
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シャトー・ムートン・ロスチャイルドと同じくバロン・フィリップ・ド・ロスチャイルドが所有する格付け5級シャトー。
約69haの畑は、ボルドーワインの最高峰ともいえる格付け第1級のシャトー・ムートン・ロスチャイルド、そしてシャトー・ポンテ・カネに挟まれた絶好の立地です。
最新の2016年は多くの評価誌で過去最高得点を獲得した、見逃せない1本です。