奇怪な用語が飛び交うワインテイスティング。フルーツや花ならまだしも、スパイスにミネラル、焦げ香??しまいには動物臭?! ですが、これにはきちんと意味があるのです。ソムリエ目線で、毎回難解なテイスティング用語や表現などを解明! あなたもイメージを膨らませてテイスティングに挑戦してみてはいかがでしょうか?

ワインに香ばしさを感じることがあります。それは多くの場合、木樽熟成によるものです。木樽は内側をローストさせていますので、その木が焦げた香りがワインに移るのです。
しかし違う場合もあります。シャンパーニュで香ばしい香りがあると「木樽醸造をしているのでロースト香がある」と理解している人も多いようです。またソーテルヌなど貴腐ワインにはカラメルのような香りがあります。これも木樽からくるものではありません。
では何に由来するかというと、「長期熟成」です。ワインは熟成により、酸化熟成をしていきますが、同時に還元熟成といい、ワイン中の成分の重合などにより変化をしていきます。その変化の一つに、メイラード反応と呼ばれるものがあり、色合いは褐色を帯び、ローストしたような香ばしい香りが生まれるのです。玉ねぎを炒めてゆくと、飴色になり、香ばしく、甘い香りが上がってきますよね、それと同じ反応です。
実はこの化学変化は複雑で、褐色化はメイラード反応、焦げ香は炭化、カラメルの香りはカラメル反応と、細く分類されるのですが、複雑過ぎますので、熟成により起こる、糖分やアミノ化合物(アミノ酸やたんぱく質など)のワイン中の成分の反応と理解していただければよいと思います。とはいえ、難しいですね。
この香ばしい香り、長期熟成を行ったワインのみがもつ長所で、まだ若いうちにこの香りがある場合は、熱を受けたなど、つまり変質を示しますので、ご注意ください。
-ヴィンサント・デル・キャンティ・クラシコ アンティノリ 2008-
このワインは収穫後、年末まで乾燥させたトレビアーノ種、マルヴァジア種といったブドウから作られる、特別な甘口ワインです 。外観はアンバーがかったトパーズ、マホガニーのニュアンス。香りは複雑かつ濃密、濃厚で、ドライイチジク、オリエンタルスパイス、サンダルウッド、葉巻、腐葉土、燻製香、モカクリーム、オードヴィと芳香性に富んでいます。もっとも印象的なのは、焚き火の跡のような小枝の焦げた香りとモカクリームです。味わいは、スムース、ほどよい甘さのアタック、バランスがよく、とろりと流れるような厚み、きめ細かな酸味がフレッシュ感と繊細さを与える。余韻にかけてアルコールと苦味が広がりドライフィニッシュとなります。デザートにはオールマイティですが、食後にシガーとともに楽しむのも粋ですね。
「ロースト香とカラメル香」を感じるワイン
マルケーゼ・アンティノリ・ヴィンサント・デル・キャンティ・クラシコアンティノリ(イタリア トスカーナ )
5,500 円 (5,940 円 税込)