奇怪な用語が飛び交うワインテイスティング。フルーツや花ならまだしも、スパイスにミネラル、焦げ香??しまいには動物臭?!ですが、これにはきちんと意味があるのです。ソムリエ目線で、毎回難解なテイスティング用語や表現などを解明! あなたもイメージを膨らませてテイスティングに挑戦してみてはいかがでしょうか?
世界のワインはますます多様に富んでゆき、これまでの認識、価値観を塗り替えています。
ワインの公用語が英語になったことで、世界中のプロフェッショナルがワインを評価するようになったことも大きく、ヨーロピアンテイストからアメリカンテイスト、そして新しい世代、新しいフィールドの人たちの嗜好も加わってきています。
そんななか圧倒的な存在感を示しているのがニューワールドで、テイスティングターム(語彙)もニューワールドのワインに対するものが数多く生まれました。
その流れもあって、昔ながらのスタイルのワイン(conventional=従来の)に対して、ややネガティブな表現が聞こえてくるようにもなりました。そんな伝統あるワインを評価するプロフェッショナルももちろんいます。
オーセンティック(authentic=正統派、王道の)、シリアス(serious=本格的な、威厳のある、思慮深い)、オースティール(austere=厳しい、厳格)といった表現がそうです。いずれも、ヴィンテージや時代の変化の表現をしつつも、変わらぬ安定感、安心感のあるものです。
そんな語彙集のなかで、今回はコンフィデント(confident=自信に満ちた、確信して)という表現を取り上げてみたいと思います。
この語彙は新しいスタイルのワインにも用いられないこともないのですが、伝統ある生産者のワインの表現と理解してよいでしょう。
嫌気的醸造、クリーン、またはコマーシャル、またはファンキーなスタイルとは一線を画したもので、その土地、そのファミリー(またはワイナリー)、ワイン造りの伝統を貫いた、安定感のあるスタイルを表しています。
つまり、その土地と自分たちのワインに確固たる自信をもった造り、ということです。
具体的に言うと、よく熟した果実の印象はあり、木樽やスパイスの香りも確かにあるのですが、前面に出ているわけではなく、香りの広がりが抑制されている。空気に触れさせても、香りは安定していて、その個性は崩れません。
マルケス・デ・ムリエタのマルケス・デ・ムリエタ・レゼルヴァ 2014年は、香りはよく熟した印象ですが、抑えが効いていて、ディテールに富み、際立ったブラックチェリーと野ばらの香りが主体でチリペッパーのアクセントが加わります。スモークウッドや土っぽさが深みを与えます。
伝統的なリオハに感じられるバルサミックさ(樹脂っぽい)はなく、緻密さと気品を感じます。味わいはソフトな口当たりで丸みがあります。きめ細かな酸味と渋みが特徴的です。アルコールは強く、中盤の広がりとボディをつくります。
後半にかけて酸味、タンニン、アルコールのヴォリュームが調和し、パンジェント(辛味のある)・フィニッシュとなります。
まさにオーセンティック、コンフィデントなスタイルで、その土地の伝統とワイナリーのスタイルが確固たる表現をしています。
仔羊と赤ピーマン煮込み、唐辛子が効いていても美味しそうです。ワインにスモークの香りもあるので、ブドウの枝で仔羊をグリルする料理はリオハのスペシャリティです。
驚きを求める時代から、安心、安定へと指向は切り替わってきている昨今。コンフィデントなワインはゆるぎない、そのスタイルで安心感を与えてくれます。
コンフィデントを感じるワイン
マルケス・デ・ムリエタ・レゼルヴァ / マルケス・デ・ムリエタ
(スペイン リオハ)
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マルケス・デ・ムリエタは、1852年にリオハ・アルタに設立された名門中の名門。伝統を守りつつ、ボルドーの近代技術を融合させた高品質なワインは、数々のコンクールで”ベスト・リオハ”を獲得しています。
こちらは、「王の中の王」と呼ばれるイガイ・エステートの特徴とスタイルが集約されたスタンダード・キュヴェ。テンプラニーリョ84%、グラシアーノ9%、マスエロ5%、ガルナッチャ2%と4種類の土着品種をブレンドして造られます。