長野県・高山村「信州たかやまワイナリー」

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レポート
公開日 : 2023.7.12
更新日 : 2023.7.21
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1杯のグラスワインにどれだけの想いが込められているのか……。そう想いを馳せてみると自然と広大なブドウ畑が思い浮かびます。


フランスやイタリア、アメリカ、チリなど日本で手に入るワインの産地に行くのはなかなか難しいかもしれません。しかしワイン産地は思いのほか近くにあるのです。


そう、ここ日本には現在400(※)を超えるワイナリーが存在し、なんと47都道府県のうち45都道府県にワイナリーがあります。


そんなワインができる土地の風や空気、匂いを感じて、ワイン産地全体を味わってみませんか?


第1回は長野県・高山村にある信州たかやまワイナリーを訪れます。1杯のグラスワインに込められたストーリーを知る旅に出かけましょう。

(※)酒類製造業及び酒類卸売業の概況(令和4年調査分)によると468場

目次

ワイン造りを通して村を活性化

高山村の風景

今回訪れた信州たかやまワイナリーは2016年に村の支援のもと、13人のブドウ栽培者が出資して設立されました。


ワイナリーが位置する高山村は、長野市中心地から北東方向へおよそ20㎞にあります。村の面積の約85%が森林・原野で占められるなんとも自然豊かな村です。


高山村は標高が高く、年間の平均気温が11.8度と冷涼なうえに昼夜の寒暖差が大きい場所です。また、雨は少なく、土壌も水はけの良い砂礫質でブドウ栽培に適切な環境が整っています。


そんな恵まれた環境では古くからリンゴや生食用のブドウ栽培などが盛んに行われてきました。


この地でワイン造りを行う信州たかやまワイナリーの鷹野永一さんは「良いワインは良いブドウから、そして、ブドウ栽培には人が欠かせません。高山村では良質なブドウを作れますが、何より携わる人の想いが大切だと思っています」と言います。


ワイナリーを訪れると鷹野さんが迎え入れてくれ、そんな想いや高山村でのブドウ栽培の歴史を青空の下聞かせてくれました。

鷹野永一さん
醸造責任者、鷹野永一さん

「高山村のワインの歴史は1996年に初めてブドウ樹が植えられスタートします。ただその頃は村外のワイナリーに供給されワインが造られていたんです。


当時、私はシャトー・メルシャンで働いており、その高山村のブドウも醸造していました」


高山村にブドウ樹が植えられた当初からこれまで20年以上、鷹野さんは高山村のブドウを見続けていることになります。


ブドウにとって恵まれた環境のため、質の良いブドウが採れました。一方で農業従事者の高齢化や耕作放棄地が増加しているという問題も直面。そこで2006年にブドウ栽培者の研究グループ「高山村ワインぶどう研究会」を発足し、そこに村もブドウ栽培のサポートを始めたそうです。


「高山村ワインぶどう研究会ができてすぐの頃、フランスへのワイナリー研修がありましたが、その時ボルドーに駐在していた私が村の方々を案内しました。なんだかつながっていますよね」山梨県出身の鷹野さんですが、高山村には不思議な縁を感じるそうです。


ワイン用ブドウ栽培が盛んになると、栽培者は「自分たちの作ったブドウでワインを造る」という新たな夢を抱き始めます。この情熱が信州たかやまワイナリー設立へとつながっていきました。

信州たかやまワイナリー

そうして運命に導かれるように鷹野さんが高山村のワイン専門職員に抜擢され、ワイナリー設立とともに信州たかやまワイナリーの醸造責任者に着任したそうです。


このような高山村ワインぶどう研究会の村を挙げた取り組みが評価され、2015年に「豊かな村づくり全国表彰事業」で農林水産大臣賞を受賞しています。


高山村のワインの歴史とともにあるのがこの信州たかやまワイナリーなのです。

良いブドウを作る熱い想い

醸造場の様子

ワイナリーの中に入ると窓から醸造場を見ることができます。実際にワイン造りの工程などを説明いただきました。排水溝など一つとっても、徹底した衛生管理のこだわりが詰まっているそうです。


また、ワイナリーではワインの販売も行っています。時にはワイナリー限定のワインが並ぶこともあるそうです。


生産量に限りがあるため、ワイナリーをはじめ高山村の酒屋や販売店でしか購入できないのが「Naćho(なっちょ)」。信州北部の方言で「どう?」「どうしてる?」と相手を思いやる言葉からとったワインです。

Naćho(なっちょ)

高山村を訪れた者にしか手にすることのできないこの1本には、高山村のブドウ畑の風景や空気を感じ取ってほしいという想いも込められています。


そんな想いの根源はやはりブドウ。そんなブドウ栽培を担う栽培者さんに特別に集まっていただきました。


集まっていただいたのは宮川栄一さん、春日薫さん、松田知也さんの3名。高山村の魅力を伺いました。

宮川栄一さん
宮川栄一さん

高山村ワインぶどう研究会の現会長でもある宮川さん。「高山村ワインぶどう研究会の会員は今では130人ほどになりました。村全体で情熱をもってブドウ作りに取り組める体制があるのが高山村の魅力ですね」

春日薫さん
春日薫さん

「ワイン用ブドウについて熱い想いで語れる場があるのは大きいですよね」と春日さんも続きます。


「“良いブドウを作ること”がやっぱり1番重要ですし、鷹野さんのような素晴らしい醸造家にワインにしてもらえる環境はとても良いです。


きちんとした栽培をしていく中でその思いに共鳴してくれた松田くんのような若い人が増えたので、これからもどんどん広がっていくと嬉しいです」

松田知也さん
松田知也さん

松田さんはブドウ栽培に最適な高山の地に魅了され移住を決めたんだとか。


「初めて高山村を訪れたときにこの景色に心を奪われたんです。住むならここだな、と。


そして僕みたいな移住者を招き入れてくれる体制がこの村にはありました。人や畑を紹介してくれるつながりがあったからここでブドウ栽培をすることができています」

ワイン用ブドウの栽培者

ブドウ作りで心がけていることを伺うと口をそろえたのが「綺麗なブドウ畑にすること」。


「これからの時期、ちょっと目を離しただけで草が伸びる。それでも除草剤は使わずに手をかけて虫のとっつきにくいブドウ畑にしていきたい」と宮川さん。春日さんも「いつでも綺麗なブドウ畑にしておけば、訪れた人々に丁寧にブドウが育てられていることを理解してもらえる。また高山村のワインを飲む際に、その綺麗なブドウ畑の情景を思い描きながら味わってもらえる、そんなブドウ畑を作っていきたい」」と続けました。


自然に恵まれていることで美味しい山菜やジビエも有名な高山村。松田さんは「こういう場所は日本全国いくつかあると思うんです。でも高山村にしかない魅力はそこにいろんなことにチャレンジする人がいること、そしてワイン造りの歴史があること。この組み合わせがこの村の面白さですね」とまとめてくれました。


今回、ワイナリーを訪れたことで、良いブドウができるその根源を知れました。

高山村を感じる

信州たかやまワイナリーを訪れたら立ち寄りたいのが温泉。高山村は八つの源泉があるワイン産地なのです。


ワイナリーを訪れた後は温泉で疲れを癒す、なんとも最高なワインツーリズムができそうです。鷹野さんも栽培者の3名も村の魅力の一つに挙げていました。


そんな高山温泉郷の中心的な温泉地が山田温泉です。信州たかやまワイナリーからは車で10分ほどに位置しています。


山田温泉に向かう道中には、高井橋という温泉街の玄関口を通ります。


四季折々に赤い橋が松川渓谷に映えます。取材時は新緑とのコントラストが綺麗でしたが、秋には紅葉を楽しめるようで、これもまた絶景とのことです。

高井橋

温泉街に到着すると山田温泉のシンボル、共同浴場の「大湯」が見えてきます。

山田温泉 大湯

趣のある建物からも感じられる歴史は約200年。古くから多くの人に親しまれ、若山牧水や森鴎外、与謝野晶子などの文人にも愛された温泉です。


現在は広場に足湯も設置されており、気軽に温泉情緒を楽しめます。

文の蔵

そして高山村を訪れて高山村を感じるのに欠かせないのが食。信州たかやまワイナリーの近くにある「文の藏」は高山村産にこだわったお蕎麦屋さんです。


できる限り地産地消で高山村の味を噛みしめてもらいたいという想いが込められています。

また、山田温泉街にある「常盤屋」は、山菜やきのこなど地元特産品を取り扱っています。お土産にもピッタリな食材がたくさんあります。


自宅に帰って思い出話とともにその土地のワインと食材を味わえば、ワインツーリズムが何倍にも楽しくなりそうですね。

まとめ

春には桜、夏には登山、秋には紅葉、冬にはスキーなど四季折々に自然を楽しめる高山村。


その時々で訪れなくては体感できない魅力が満載です。そしてどんな瞬間にもワインは寄り添ってくれるでしょう。


皆さんもワインとともにその土地の“味”を楽しんでみてはいかがでしょうか?

信州たかやまワイナリーについて

信州たかやまワイナリー


信州たかやまワイナリー

〒382-0823 長野県上高井郡高山村大字高井字裏原7926 営業時間:9時~16時(12時~13時はお昼休み) 定休日:年末年始

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