好きなチーズや、ワインとのペアリングが見つかったらさらにワンランク上の楽しみ方を知りたくないですか?
チーズもワインと同じように“熟成”が一つの楽しみ。そしてワイン同様、奥深く難しいのも“熟成”の一面です。
今回はそんなチーズの熟成に詳しいナチュラルチーズ専門店「フェルミエ」の秀島さんに、チーズの食べ頃について訊きました。
ワインとも合わせてワンランク上のチーズペアリングを楽しみましょう!
【プロフィール】秀島貴明さん
父親の仕事の関係で幼少期より食べる機会が多かったチーズ。
生産者とのつながりの深い会社で働いてみたいという想いから2015年、チーズ専門店フェルミエに入社。
品質管理部の一員としてチーズのお手入れなどを担当している。
現地の美味しさを日本でも
―秀島さんは品質管理部ということですが、どんなお仕事をしているんですか?
チーズは主に空輸か船便で来るんですが、入荷したチーズを検品し、そのチーズをお客様の元に届けるまでにどこまで良い状態に持って行くか、という管理・手入れが主な業務です。
―チーズを管理・手入れする上で、大事なことは何ですか?
湿度と温度ですね。チーズのタイプや適性温度、状態ごとに冷蔵庫が違っていて、その中で管理・手入れ作業を行います。
フランスと日本とでは気候が違うので、チーズの味わいも変わってくるんです。
以前、フランスで食べたチーズがとっても美味しくて、日本で食べるものとは全く別物に感じました。
そんな現地で食べた美味しさを日本でも体感してもらいたいという想いから、なるべく現地の状態に近づけるようにと、努力しています。
入荷してきた時にそれぞれ状態が違うことが多いので、若すぎる時は水分を抜いてあげたり、逆に少し硬いときは保湿してあげたり、そういった作業でコンディションが変わってきます。
チーズの熟成の難しさと面白さを日々感じています。
チーズの変化を楽しむ
―このコートドールのチーズは熟成によってどう変化するんですか?
ウォッシュタイプのチーズですが、クリームが添加されているというのがコートドールの特徴です。
通常のウォッシュタイプのチーズは熟成すると苦味が出てしまうことが多いんですけど、コートドールはクリームによってその苦味が若干抑えられます。
日が経つと中の生地もとろ~としてくるので、非常に食べやすいチーズかなと思います。
ウォッシュチーズの入門編としてピッタリなチーズです。
―食べ頃を判断するのは柔らかさですか?
柔らかさと、あとは色味と香りです。
コートドールは熟成が進むと少し照りが出てくるので、表面のウォッシュされた部分がつやつやしてきたら美味しい状態ですね。それが行き過ぎてしまうとベトベトしてきてしまいます。
この熟成度合いによって香りも変わってきて、コートドールだとウォッシュ特有の香りがちょっと出てきたかなと思う手前くらいが食べ頃かなと思います。
ですが、好みはそれぞれなので何回か召し上がっていただいて、自分の好きな熟成度合いを見つけてほしいです。それを見つけるのもナチュラルチーズの面白さだと思います。
前提として賞味期限があるので、賞味期限の範囲内でいろいろと変化を楽しんでいただきたいですね。
もしお手元に届いたときに少し柔らかい状態だったらすでに食べ頃です。
同郷とのペアリング
―秀島さんがコートドールとお酒を合わせるとしたらワインですか?
普段チーズを食べる時、お酒と合わせることが多いですが、チーズのタイプによってはハイボールやビール、ジンなどと合わせることもあります。
ただ、ウォッシュチーズの香りや味わいはワインがピッタリだと思います!特に白ワインですね。
―コートドールは名前の通り、フランス・ブルゴーニュ地方で作られるチーズということで、ブルゴーニュのワインと合わせてみましょう!
左から
ブルゴーニュ キュヴェ・マルゴ / オリヴィエ・ルフレーヴ
ブルゴーニュ レ・セティーユ / オリヴィエ・ルフレーヴ
―いかがですか?
赤ワインも白ワインもどちらも合いますね!
「チーズに合わせるなら白ワイン」とずっと思っていたので、赤ワインがここまで合うのは意外です!
―ワイン業界でも「チーズには白ワイン」とよく言いますし、私も実際白ワインを合わせることが多いんですが、コートドールは想像以上に赤ワインと合いますね。
コートドールはクリームが添加されているので口に入れると甘やかな印象がありますが、この赤ワインと合わせるとさらにその甘さが広がる感じがあります。赤ワインの複雑さとコートドールがよく合います。
また、白ワインもチーズの酸味・塩味とバッチリですね!
―そうですね、シャルドネのふくよかさともよく合っています。同郷のブルゴーニュの赤ワイン、白ワインどちらとも一体感のあるペアリングになりましたね。
コートドールは半分ウォッシュ、半分白カビの要素を持っています。それが赤ワイン、白ワインどちらにも合う理由なのかなと思います。
―たしかに白カビチーズはクセがない分、赤ワインとも合わせやすいですね。
そうですね。私たちの中でも「白カビには赤ワイン、ウォッシュには白ワイン」というイメージがあります。
コートドールはその両方の側面を持ったチーズだから白ワインとも赤ワインとも相性が良いんだと思います。
―もう少し熟成したコートドールだと変わってきますかね?
熟成すると少し苦味が出てくるので白ワインのほうが合うと思います。旨味の中にある苦味の部分が強くなると赤ワインより白ワインのほうが合わせやすいです。
今回ワインと合わせてみて、コートドールは守備範囲が広いチーズだなとすごく感じました。
今日みたいな「若いかな?けど触った感覚は少し柔らかい」といった状態だとそのまま食べるのが美味しいですし、熟成して中身がドロドロになってきたらバケットにのせたり、ソースにしたり料理にも使っても美味しいです。
どんなワインやお酒に合うのかという予想をするのも楽しいですし、それを実際にやってみて今日のようにハマった時はすごく楽しいですね!
同じワインでも熟成によって味わいが変化し飲み頃があるように、チーズにも熟成の違いで食べ頃が変わります。そしてそれは人の好みによっても左右されるでしょう。
合わせるワインによってチーズの見え方も変わってくるかもしれません。
ぜひお好きな熟成度合いを探して、ワンランク上のチーズとワインの楽しみ方を実践してみてください!
秀島さん、ありがとうございました。
今回取材したお店はこちら
フェルミエ愛宕店
住所:東京都港区愛宕1-5-3 愛宕ASビル1F
TEL:03-5776-7720
営業時間:月~金12:00~19:00、土11:00~18:00
定休日:日曜日・祝日・年末年始及び夏季休業日
※場合によって日・祝営業あり