「ワイン」と「動物」と聞くと、何を思い浮かべますか。動物の絵があしらわれた可愛らしいエチケットが頭に浮かぶという方も多いと思います。
実は、ワインと動物の関わりはエチケットだけではないんです。
今回はワインの世界で活躍する動物たちをご紹介します。
馬
まずご紹介したいのが、「馬」の活躍です。
馬の力を借りた畑仕事は、まだトラクターなどの重機がなかった時代へ原点回帰しているようにも感じますが、今改めて馬の使用が見直されていると言います。
馬の主な働きとして挙げられるのが、畑を耕すこと。
通常、畑を耕すにはトラクターが使用されます。畑を耕すのはまさに骨の折れるような力仕事。畑の規模が大きければ大きいほど、広大な面積を一気に耕せるトラクターは欠かせません。
ではなぜ今、トラクターではなく馬なのでしょうか。理由は大きく分けて二つあります。
一つ目が、土壌内の微生物の活性化に繋がるということ。
ワインの味わいに大きな影響を与える土壌。土壌の良し悪しにはいくつか条件がありますが、条件の一つに微生物の存在があります。微生物には、土中に入ってくる有機物をブドウ樹が吸収できる栄養素にまで分解する働きがあります。
しかし巨大なトラクターを使用すると、その重さで土壌を踏み固めてしまい、微生物の減少につながる場合があります。その結果、ブドウ樹に十分な栄養がいかないことがあるのです。
そこで、活躍するのが馬たちです。トラクターに比べ土壌をやわらかい状態で保つことができ、微生物の活性化を促してくれるのです。
馬の使用が見直されている二つ目の理由は、気候変動につながる二酸化炭素を排出しないということ。
地球温暖化が進み、多くの農業がその影響を受けていますが、ワイン造りも例外ではありません。この気候変動による影響を少しでも軽減するための取り組みが行われています。
その一つとして、馬の使用が挙げられます。
20年以上に渡りサスティナブルな取り組みを続けているボルドーでは、メドック格付け第一級のシャトー・ラトゥールや、格付け第一級に迫るほどの品質と人気を集めるシャトー・ポンテ・カネをはじめとした多くのシャトーが積極的に馬を導入しています。
現在、フランスでは馬を貸し出してくれるサービスもあるのだとか。
土壌のため、環境のために、活躍する馬たち。ブドウ畑でその姿を見る機会はこれから増えていくかもしれません。
羊
次にご紹介したいのが、「羊」たちの活躍です。
愛くるしい見た目と「メェ~」と鳴く様子になんだかとても癒されますが、実は畑仕事において重要な働きを担ってくれているんです。
その働きとは、雑草の処理をすること。
畑仕事において、雑草の処理というのは重要ながらも非常に手間のかかる作業。草むしりを手作業で行おうとすると、かなりの時間と手間を要してしまいます。
また、その手間を省くべく使用される除草剤ですが、含まれる成分によっては、土壌を固めてしまい有機物に悪影響を与えてしまうといった理由から、現在使用が見直されています。
そこで活躍するのが、この羊たちです。
羊が雑草を食べることで、生産者は草むしりの手間が省け、除草剤などの使用を控えることで土壌への影響も防ぐことができます。また、糞などの排泄物はそのまま畑の肥料に。
つまり羊たちは、畑に生えた雑草をたっぷりと食べることでワイン造りに貢献してくれています。
羊にとっては食事が確保でき、ワイン生産者にとっては除草をしてもらえるという、win-winな関係性といえるのではないでしょうか。
フクロウ
暖かかい時期や、収穫の時期を迎えると「動物が農作物を食い荒らしてしまった」なんてニュースを目にすることがあると思います。
こういった被害の対象は、ブドウ畑も例外ではありません。近隣の森や山に住む動物たちがブドウを食べてしまうことがあるんです。特にアメリカではリスやネズミがブドウの実を食べてしまうといった被害が多く、生産者たちの頭を悩ませています。
そこで登場するのが「森の賢者」と名高いフクロウです。
アメリカ・カリフォルニアのワイナリー、マリマー・エステートでは、ワイナリーの敷地内にフクロウのための巣箱を設置しています。そこに棲みついたフクロウが畑に現れるリスやネズミを捕食することで、ブドウの被害を防いでいるのです。
これは動物たちの食物連鎖をうまく利用した例で、フクロウの他にも鷹やハヤブサを使うワイナリーもあり、トレーニングされた鳥を貸し出すサービスを提供している会社もあるのだとか。
まだまだ主流ではありませんが、自然に優しい方法として注目を集めています。
まとめ
今回紹介した動物の他にも、羊と同様に雑草を食べてくれるヤギやラマ、害虫駆除をしてくれるコウモリやニワトリなど、実はワイン造りにおいて活躍する動物たちは、まだまだたくさんいます。
「今夜飲もうかな」と思っているワインも、実は動物の力を借りてできたものかもしれませんよ。
ワイナリーがSNSなどで発信する情報に動物たちが登場することもあるので、気になる方はぜひチェックしてみてくださいね。