美食の街に佇むレストラン「タイユヴァン」の精神

諸外国の中でも特に食事の時間を大切にするフランス人。お腹が空いたから食事をするというより、その時間を楽しむ人が多いと言います。

フランスの首都、パリには数々の名店が軒を連ねますが、その一方で閉店を余儀なくされる店舗もあります。

そんな中、1946年の創業以来、パリの一等地に構える「ル・タイユヴァン」。三ツ星レストランの座を30年もの間守り続けるなど、名店がひしめき合う中で確固たる地位を確立しています。

そんなタイユヴァンの凄味とは一体何でしょうか。

タイユヴァンとは

1946年、パリ9区にアンドレ・ ヴリナ氏が「タイユヴァン・レストラン」をオープンしました。

店名「タイユヴァン」の由来は、中世にまでさかのぼります。1380年、フランス語で書かれた最古の料理本『ル・ヴィアンディエ』がギョーム・ティレルというグランシェフによって書かれました。

これを執筆した彼の通称が「タイユヴァン(Taillevent)」※だったといいます。

フランス料理の出発点となった伝説の料理人から名前をとり、レストラン「タイユヴァン」の名は付けられました。

※フランス語でtailleは「切る」、ventは「風」という意味。威勢の良い人という意味合いから「風を切る」というあだ名で呼ばれていたということが有力視されています。

その後タイユヴァンは、1973年から33年間、三ツ星レストランの座を守り続け、世界的名店の一つとして名を連ねるようになりました。

現在では、パリ、イギリス・ロンドンにレストランを保有するだけでなく、「レ・カーヴ・ド・タイユヴァン」という名のワインショップをパリとレバノンの首都・ベイルート、そして東京、横浜に展開しています。

生前、2代目オーナーのジャン・ クロード ・ ヴリナ氏はタイユヴァンの在り方について次のように語りました。

私たちが成功したとすれば、それは私たちがお客様を尊重しているからだと思います。

重要なのは、私がお客様にこの料理やあのワインを注文してほしいと思うことではなく、 “お客様が幸せであるか”ということ。それこそがこのグランメゾンの精神なのです。

タイユヴァンが目指すもの

食事の時間を大切にするフランス人。その時間をより楽しいものにするにはワインは欠かせません。

タイユヴァンは、1946年の創業以来“L’accord Mets & Vins”というコンセプトを掲げ続けています。日本語で“食とワインの調和”という意味です。

タイユヴァンがここまで高く評価されるのは、料理の美味しさはもちろん、料理とワインとのペアリングにあると言えるでしょう。

料理の引き立て役となるワイン、その役目を全うするためにはどのようなワインがふさわしいのかを考え、食事とのペアリングについてどこまでもこだわっているのがタイユヴァンなのです。

とはいっても人の味覚は千差万別。完璧なペアリングを追求することは極めて難しいと感じますよね。

しかし、タイユヴァンはこれまで創業から変わらずこだわり続けきた“食とワインの調和”を体現するためのペアリングの極意を持っています。

“食とワインの調和”の秘訣

そんなペアリングの極意をタイユヴァンで現在バイヤーを担当するNicolasさんから特別に教えていただきました。

まず一つ目のポイントは「生産地の組み合わせ」。これはペアリングの基本ともいえる、最も関連性が高い調和が生まれる組み合わせです。

同じ地域のワインと食材の間には間違いのないペアリングが生まれます。

代表的なペアリングがジュラ地方のコンテチーズと同じくジュラ地方で造られるヴァン・ジョーヌ。試していただければ、生産地を合わせるというペアリングの基本を実感できるはずです。

さらに「同等の組み合わせ」と真逆の「反対の組み合わせ」もペアリングのポイントとして挙げられます。

意外なことに反対の特徴を持っているものを合わせることでもペアリングが生まれます。例えば、軽く茹でた白身のお肉にボリュームのあるシャトーヌフ・デュ・パプの白ワインを合わせることで、よりペアリングが強固になるそうです。

他にも色を合わせる「視覚的な組み合わせ」、ワインと料理が互いに補い合う「補完性の組み合わせ」など、これら五つのアプローチから完璧なペアリングを生み出しています。

まとめ

タイユヴァンが目指す“食とワインの調和”。いわば、タイユヴァンで提供されるワインは全て食事のためのワインです。

だからこそ食事と合わせて楽しむことでそのワインも、そしてその食事も何倍にも美味しく感じられるでしょう。そんな食事のひと時はいつもより楽しく感じられる気がしませんか?

それがジャン・ クロード ・ ヴリナ氏が語るお客様にとっての“幸せ”であり、タイユヴァンが目指す姿なのです。