プロのソムリエさんが自宅でワインを楽しむコツやプロのテクニックを紹介するコラム。
第11回目は「リストランテ・ラ・バリック・トウキョウ」のソムリエ、江木さんです。
すぐに真似できちゃうソムリエならではの楽しみ方は必見です!どうぞお見逃しなく。
【プロフィール】江木義宏さん
1972年 岐阜県生まれ
リストランテ ラ・バリック トウキョウ 支配人
日本ソムリエ協会認定ソムリエ
イタリアソムリエ協会認定ソムリエ・プロフェッショニスタ
皆様、こんにちは。リストランテ ラ・バリック トウキョウの江木義宏です。
ワインは、とかく「何を飲むべきか」や「どう飲むべきか」が語られ、それは大きな楽しみの一つでもありますが、それ故に難解なお酒であるかのように思われることも多々あります。
そこで私からは、あまり考え過ぎない「感性的ワイン選びのススメ」をお送りします。
五感でワインを楽しむ
さて、当然のことながら、五感を頼りにワインは色調や香り、味わいを楽しむもの。もちろん、その時間も。
しかし、人間の味覚メカニズムは、繊細で極めて複雑なものである反面、わりといい加減な側面もあります。ある実験で、無味無臭のピンクの色素を入れた牛乳を飲んでもらい、「何の味がしますか?」と尋ねると、驚くことに多くの人が「イチゴミルク」と答えたそうです。
また、ワインの色が確認できないように黒色のグラスなどで飲んでみると、赤ワインなのか白ワインなのか判断は意外と難しく、いかに普段、味覚だけでなく視覚を含めた五感で味わっているかがわかります。
このように、味覚は理論や知識、経験などでははかれない面白さも持っています。
それならば、豊かな味わいを楽しむワインも、たまには知識や理論ではなく、感性だけで選んでみると、新たな出会いがあるはずです。世の中には星の数ほどのワインがあるのですから。
気分や直感でワインを選んでみよう
「ジャケ買いならぬ、エチケット買いもあり」
私の経験上、素敵だな、洒落てるなと思ったエチケット(ラベル)のワインは、不思議とその味わいも好みであることが多いです。迷ったら、気に入ったエチケットのワインをさらっと選んでみてください。
「BGMに合わせて」
視覚が味覚に影響があるなら、当然、聴覚も。ノリノリなロックを聴く時は爽快な白ワイン、メロウなジャズの時は深みのある赤ワイン、軽快なポップスとは弾けるスパークリングワイン、なんて具合で私は楽しんでいます。もちろん、ノリだけです。その日のワインに合ったBGMを選ぶ楽しさもひとしお。
「絵画とも楽しんじゃう」
絵画の表現にはワインと共通するものが多いです。色調やトーン、生命力(感)、やわらかさ、力強さ、クラシカル…など。
絵画から受ける印象をワインに投影してみるのも楽しいですよ。ルノワールなら優美なコルトン・シャルルマーニュかなぁ、ダリならスペインのモダンでエッジの効いた赤だなぁ、なんて。
「思い込みを捨ててみる」
赤ワインは常温、肉には赤で魚には白、この品種は好みじゃない…何かで得た知識や一度二度の経験で思い込んでしまっていること、ありませんか?
一度忘れて、どんどんトライしてみてください。ワインは嗜好品ですから、当然選ぶものも偏りがち。
案外、あれ⁈そうなの⁈こんなのもあるの⁈と、世界がググンと広がるかもしれません。
まとめ
豊富な知識や精密な理論に基づいたセレクトやペアリングは、我々プロフェッショナルには必要不可欠なものであり、またワインラヴァーの方にとってもワインの世界の深淵さを経験できる素晴らしいものです。
が、たまには、こんな気軽で自由なワイン選びも楽しみ方に加えてみてはいかがでしょうか。そこには、きっと素敵な発見が待っていることでしょう。