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どうしてワイングラスを回すの?「スワリング」の効果

紫貴あき
紫貴あき
紫貴あきのコラム
公開日:2020.6.29
更新日:2020.6.30
スワリング
ソムリエが慣れた手つきでクルクルとグラスを回す姿はなんとも優雅なものです。このグラスを回転させることを「スワリング」と呼びます。
ではなぜスワリングを行うのでしょうか?今回はその方法、最近のトレンドについてもご紹介します。
目次

なぜグラスを回すのか?

スワリング
スワリングは玄人っぽく見せるための単なるパフォーマンスではありません。主に二つの目的が挙げられるでしょう。
一つは豊かな香りを楽しむためです。
回さずそのままグラスに鼻を近づけると、フルーツや花・植物といったブドウ果汁由来の香りが立ち上がります。このような香りを「第1アロマ」と呼びます。
その後スワリングすると、グラスの中でワインが広がり空気と触れ合います。このとき様々な香りが発散されていきます。
例えばパン生地、ヨーグルトのような香り。これら香りは醸造に由来しており「第2アロマ」と呼ばれます。
アーモンドのような香りを感じることもあるかもしれません。こういった香りは熟成に由来する香りで「第3アロマ」と呼ばれます。これらの香りは空気と触れ合うことで揮発されやすい性質があるのです。
ソムリエテイスティングや試飲テストなど、短時間でなるべく多くの香りを発散させて、ワインの素性を知りたいときにはスワリングは大切な手法なのです。
二つ目は還元状態を回避するためです。「還元」とは「酸化」と真逆の現象です。
醸造・貯蔵の段階で酸素と触れ合わせないように造ると、温泉卵のような香りが生じることがあります。ピュアな果物の香りがマスキングされてしまうのは何とも残念なもので、ワインの欠陥臭の一つに数えられます。
しかし空気と触れ合わせることでこの症状は改善できるのです。
レストランならデキャンターに移し替えるのも一つの手ですが、家飲みとなればデキャンターを持っている人は多くないもの。そんなときはスワリングでこの還元臭を解決したいものです。

スワリングに挑戦しよう

スワリング
エレガントかつ本格的にスワリングを行いたいものです。シチュエーションごとにその方法を紹介しましょう。
①座ってテーブルで
グラスの台を軽く押さえて、右利きの人は反時計回りに、左利きの人は時計回りに回します。これはワインがこぼれたときに人にかかりにくくするためです。
②立って行う
肘を支点にして、アンモナイトを描くようにくるりと回ります。このときも右利きの人は反時計回りに、左利きの人は時計回りに回しましょう。
③繊細なワインを飲むとき
ワインの中にはスワリングしすぎない方が良いものもあります(後述あり)。
こういった場合はグラスをそっと横に倒してグラスの壁面にワインのカーテンを作るように、ゆっくり一回ししましょう。スワリングと同じ効果が得られます。

回しすぎない方が良いワインがある

ワインの中には回しすぎない方が良いものもあります。
その代表選手の一つにスパークリングワインが挙げられます。理由は簡単、せっかくの泡が台無しになってしまうからです。
二つ目にアルコール度数が高いワインも激しいスワリングはおすすめしません。シェリーやポートなどの酒精強化ワインがその代表例でしょう。グラスを回すと香りの成分よりも先にアルコールが揮発して、鼻腔が「ツン」と痛くフルーツの香りが取りにくくなるためです。
三つ目に特定の白ワインも要注意です。具体的な品種にソーヴィニヨン・ブランなどが挙げられるでしょう。
グレープフルーツの香りが特徴の一つで「3MH(3-メルカプトヘキサノール)」というにおい物質に由来しています。しかしこの3MH、酸化に弱く消えやすいのです。グラスを回せば回すほど酸化が進むので、せっかくの香りが台無しになってしまいます。試験などで急いでいる場合は上述のように、グラスをやや横に倒して台をもってゆっくり回転させましょう。

ソムリエが考える新スタンダード

スワリング
もし日本を代表するトップソムリエが「グラスはもう回さない」と言ったら、きっと度肝を抜かれるでしょう。
しかし日本ソムリエ協会副会長の石田博さんは自著「ワインの新スタンダード」の中でスワリングについて一石投じているのです。
石田さんによれば、「グラスを回すのは試飲のために行うもので、食卓の場ですることでは本来なかったことと考えるべき」とばっさり。たしかにテーブルマナー講習においてもスワリングは「NG」な作法とされているようです。そればかりでなく同著ではワインのトレンドという観点からも「スワリング」の是非について語られています。
香りにインパクトのある酒が一世を風靡した1990年代。その後、アンチデーゼと誕生したのが「抑制美」にフォーカスしたワインです。こういったスタイルを目指す生産者たちは自分たちのワインが「グラスを回されることも望んではないでしょう」とも石田さんは指摘します。
つまりトレンドのワインを十分理解し楽しむためには、スワリングをしない方がむしろ玄人とも言えるのかもしれません。

まとめ

ワインの勉強や試験のときにはグラスを回す、リースリングだったらゆっくりと回す、「抑制美」あるワインに出会ったら回さないでゆっくり香りが開くのを楽しむ…などなどスワリングの効果を知っていれば、ワインやシチュエーションに応じてエレガントかつクールに楽しめそうです。
紫貴あき
紫貴あき

JSA認定ソムリエ・エクセレンス WSET ®Diploma/Recommended Tutor/Internal Assessor 第10回J.S.A.ワインアドバイザー全国選手権大会 優勝 かつてはワイン専門輸入商社にてマーケティングを担当し、世界中のワインに触れる。現在はアカデミー・デュ・ヴァンの教壇および各種メディアでワインの魅力を伝える活動を積極的に展開している

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