奇怪な用語が飛び交うワインテイスティング。フルーツや花ならまだしも、スパイスに、ミネラル、焦げ香??しまいには動物臭?!ですが、これにはきちんと意味があるのです。ソムリエ目線で、毎回難解なテイスティング用語や表現などを解明!
あなたもイメージを膨らませてテイスティングに挑戦してみてはいかがでしょうか。
近年、注目が集まりがちなのは新しいワイン産地です。昔から知られている産地のなかでは、そんな新興勢力におされて、伸び悩んでいるところも少なくありません。伝統というかけがえのないものが、かえって足かせとなってしまっている、とも言うことができます。「この土地のワインというのは、こういうものだ」という考え方です。
またそういう考えにおいては「時代が変わった」との嘆きも含まれているでしょう。確かに時代や世代の移り変わりにより、モノの捉え方、価値観、嗜好は変わってゆきます。一過性の場合もあれば、変わらない価値というものもあります。
フランスやイタリアといった伝統国の筆頭産地において変革を遂げているワインがあります。それはこれまでの認識や価値観をくつがえすものです。
今年、フランス南西部、ピレネーのワイン産地、マディランを訪問しました。ブドウ品種はタナ(タナットゥと発音されることもあります)、その名の通り、色が大変濃く、力強いタンニンで知られています。
しかし新世代の造り手は、タナはエレガントなワインを生むと言うのです。「ポリフェノールはカラダにいい」に、その比類のない豊富なポリフエノール分で世界的に人気となっただけに、過剰な抽出が行われていた、と振り返る造り手もいます。「渋みが強くないと認めてもらえない」、そんな感覚もあったのでしょう。適切な成熟をしたタナは果実の風味が際立った、なめらかな味わいのワインを生みます。「先入観は悪、固定観念は罪」といいますが、ワイン産地でもそれは同様なようです。
ネッビオーロもタンニンの強いブドウ品種として知られています。その代表はなんといっても、バローロ、バルバレスコです。
その両雄とともに古くからDOCGに認定されているワインがガッティナーラです。やや歪んだ形状のボトルが代名詞的存在と、古めかしいイメージは否めません。私も粗野な個性の伝統的なイタリアワインという認識をもっていました。
伝統産地の進化を感じるワイン
ネルヴィのガッティナーラ2015年は、際立った香りをもち、芳香性が高く、複雑です。ブランデー漬けのプルーン、スミレといった華やかさに、土っぽさ、ジビエ、ドライハーブや紅茶、鉄分質と深みを与える個性が加わります。さらにナツメグや甘草といったスパイスが感じられるのが特徴的です(ネッビオーロにスパイスの香りがあるのは稀なことです)。
香りにまとまりがあり、層を成しています。味わいはしなやかで、シームレス。繋ぎ目のない緻密なテクスチャーです。甘み、酸味、アルコール感といずれも緻密で調和がとれています。タンニンは完全に溶け込み、旨味が長い余韻のなかに感じられます。4年目を迎えるネッビオーロとしては異質と捉えても良いかもしれません。
ガッティナーラは、ピエモンテ北部に位置しており、ここではネッビオーロはスパンナと呼ばれます。アルバ(バローロ、バルバレスコがある)のそれとは別ものと認識すべき、緻密さ、しなやかさ、調和が特徴となっています。
ネルヴィは伝統的生産者ではありますが、名手コンテルノの傘下となり、個性を進化させています。ガッティナーラは今後、ますますスパンナとしての個性を確立、ネッビオーロとの差別化を図ってゆくことでしょう。
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名門ジャコモ・コンテルノが手掛ける「バローロ以外で造られる最高のネッビオーロ」。
ネッビオーロを100%用い、オークの大樽で30ヶ月熟成。華やかなアロマと熟成のポテンシャルを備えた逸品です。
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