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酸素がワインに及ぼす影響

紫貴あき
紫貴あき
紫貴あきのコラム
公開日:2019.12.19
更新日:2020.3.11
グラスワイン
ワインと酸素の関係ほど複雑で込み入ったものはありません。
「猿犬の仲」「水魚の交わり」どの言葉を使ってもこの二つの関係性は完璧に説明しきれないでしょう。
なぜならワインにとって酸素はポジティブ、ネガティブといった両側面を持つからです。
目次

ワインが酸化するとどうなるのか?

グラスワイン
ワインが酸素の影響を受けて起こる変化を「酸化」と言います。リンゴを切ってそのまま放置したときのことを思い出してください。リンゴはどんどん茶色っぽくなって見た目が悪いばかりか、食べてみるとぼそぼそしてフレッシュさが失われてしまいます。
ワインの酸化も似た変化が起こるのです。まず一つ目に挙げられるのは色の変化。白ワインは色が濃く、赤ワインならば色が淡く変化します。このとき少し茶色のニュアンスが出てきます。
二つ目はフレッシュでフルーティな香りが薄れ、特徴のないフラットな印象になってきます。ワインによってはこの特徴を「良し」とするものもありますが、ソーヴィニヨン・ブランやリースリングのようにデリケートかつアロマティックさを売りにしているワインにとっては厄介な問題なのです。

ワイン造りにおける「酸化」

ブドウ畑
驚くことに酸化はブドウ畑から醸造場への輸送段階から始まり、出荷され家庭やレストランでのすべての段階に関わっています。それぞれ段階を追って説明します。

ブドウ畑

アロマティックなワインスタイルを望むなら、収穫の段階から酸化に気を付けなければなりません。
中でも夜間収穫は酸化を食い止めるための有効な手段として知られます。酸化は温度が高いと促進されやすいため、酸化からブドウを守りたいなら涼しい夜間に収穫を行うのは当然のことと言えるでしょう。機械収穫ならば速度も上げられるので鬼に金棒です。ニュージーランドのソーヴィニヨン・ブランが夜間に機械収穫されることが多いのはそのためでもあります。
その他、ワイナリーに到着するまでの冷却、醸造工程に入るまでに、気密式の容器に二酸化炭素や窒素などを充満させて酸素との接触を遮断する方法も有効です。
このように酸素と触れ合わせないようにするワイン造りを、「Anaerobic winemaking(嫌気処理)」と呼びます。

醸造

アルコール発酵の段階においても、酸化防止のために亜硫酸(SO2)の添加が行われるのが一般的です。
亜硫酸は酸化を防止するだけでなく、防腐剤として空気中の好ましくない微生物の働きを食い止める役割もあるため、ワイナリーでは欠かすことができない存在となっています。

貯蔵

貯蔵中に酸化からワインを守りたい場合は容器の選択が重要となります。ステンレス製タンクや、エポキシ樹脂ライニングを貼ったコンクリート桶での熟成ならば酸素との接触を妨げることが出来るため、ピュアな果実香味のワインとなります。
その逆に穏やかな酸化を促進させたいというケースもあります。例えば赤ワインは熟成中に少量の酸素があることによって、タンニンがマイルドで滑らかになります。加えて果物の香りがわずかに抑制され、腐葉土やなめし皮の香りが現われワインに複雑なニュアンスが加わります。
ここでポイントとなるのは木樽の大きさや貯蔵期間によって酸素接触の効果が大きく異なってくるということです。ボルドーなどで使われている225ℓのバリックと呼ばれる小樽は、大樽と呼ばれる1500ℓ以上の樽と比べて酸素との接触面積が大きくなるので、酸化の影響が大きくなります。

新たな技術

近年、穏やかな酸化を迅速に行うために、「Micro-Oxygénation(ミクロの酸化)」という技術も用いられるようになりました。これはパトリック・デュクルノ―氏によって開発されたもので、文字通り熟成中のワインにごく微量の酸素をストローのようなもので意図的に吹き込むという技術です。
この手法は若いワインもやわらかくなるため、「プリムール」という先物買いが一般的なボルドーでは、瞬く間に広がりました。

意図的に酸化を狙ったワインもある

グラスワイン
狙って酸化をさせ、それを「良し」とするワインもあります。その代表例がシェリーのオロロソ、ポートのトーニータイプです。
最近ではオレンジワインにも意図的な酸化を狙ったものを見かけることもあります。ちょっと珍しいものにはオーストラリア産酒精強化ワインのラザグレイン・マスカットも挙げられるでしょう。
酸化に由来するキャラメル、トフィーのような香りは、これらのワインにスケール感と馥郁
ふくいく

さをもたらしているのです。

家庭での酸素との付き合い

グラスワイン
自宅でもワインと酸素の関係は諸刃の剣となります。
ワインを開けたときに温泉卵や硫黄のような香りを感じたことはないでしょうか。これはワイン造りが極端に嫌気的に行われたときに起きる現象で「還元」と呼びます。不快臭の一つに挙げられますが、開けて少し置いておくと気にならなくなります。レストランならデキャンティングをお願いするのもいいかもしれません。
抜栓後は酸化がもっとも進むので要注意です。マヨネーズでもドレッシングでも蓋を開けた瞬間から急速に酸化が始まります。
特別な工夫をしなくても必ず実践してほしいのが冷蔵庫で保存することです。収穫の時にブドウを冷却したほうが痛みづらいのと同じで、ワインになってからも冷却保存した方が酸化しにくいのです。
あとは蓋をして保存すること。このときシンプルにコルクで蓋をするだけでもいいですし、専用キャップを使うのも良いでしょう。

まとめ

酸素とワインの関係を知ることによって、嫌気的醸造を行ってアロマティックにしたかったのか、意図的な酸化を狙っているのかなど造り手の狙いを知ることが出来ます。
自宅でも酸素の影響を知っていることで、よりワインが楽しめそうです。
紫貴あき
紫貴あき

JSA認定ソムリエ・エクセレンス WSET ®Diploma/Recommended Tutor/Internal Assessor 第10回J.S.A.ワインアドバイザー全国選手権大会 優勝 かつてはワイン専門輸入商社にてマーケティングを担当し、世界中のワインに触れる。現在はアカデミー・デュ・ヴァンの教壇および各種メディアでワインの魅力を伝える活動を積極的に展開している

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