店舗情報
ワインショップ・エノテカ グランツリー武蔵小杉店
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このショップのスタッフレビュー
【ワインと小噺】ねえカリニャン、盆と正月くらい顔を見せてね
三瀬
8月も終わりに差し掛かった今日この頃、皆さまいかがお過ごしでしょうか。
長期休暇を利用して、どこか遠くへ出かけられた方も多いことと思います。
グランツリー武蔵小杉は、普段以上に親子連れで賑わっています。
ああ、子どもたちは今、夏休みなんだな。
ああ、私も夏休みがほしい、子どもの頃に戻りたい......!
そんなことを考えながら、私は今日もお店に立っております。
......とは言いながら、実は私もお盆にまとまったお休みをいただいておりました。
ただそれはバカンスではなく、地元へ帰省するためのものでした。
私も、本当はバカンスに行きたい夏でした。
地中海に浮かぶ島のビーチで、くたびれるまで海で泳ぐ私。
夕暮れは砂浜に腰を下ろし、オレンジに染まる空と海をぼーっと眺める私。
夜になるとテラスで食事を楽しみながら、煌めく星空を見上げる私。
ワイングラスを傾ける私をくすぐる、涼やかな海風──。
そんな優雅な夏を夢に見ていました。
しかし現実を見ると、泳いだのは海ではなく市民プールです。
カラフルな浮き輪に乗る子どもたちの横で、黙々と背泳ぎをする私。
鼻に水が入り、ジタバタともがく私。
息も絶え絶えな私に刺さる、冷ややかな視線──。
プールで泳げば、せめて心だけでも子どもの頃に帰れると思っていたのに、実際には肉体の衰えを痛感するばかり。
せっかくの夏なのに、少しも童心に返ることができません。
このまま夏を終わらせてなるものかと思った私は、「いつでも童心に返れる場所」こと故郷へ帰ることにしました。
私が生まれ育ったのは、地中海ではないけれど立派な島──瀬戸内海に浮かぶその島は、名を「四国」といいます。
子どもの頃の夏休みのように、わんぱくに遊び回ろうかとも考えていました。
しかし、もうそんな体力がないことは自分でもわかっていたので、できる限りのんびりとした日々を過ごすことに。
そしてせっかくなら童心に返るだけでなく、ワインを飲んで大人ならではの夏も楽しもうと思いました。
実家への手土産として持って帰ったワインは、イタリアの赤ワイン。
地中海に浮かぶ憧れの地「サルデーニャ島」のワインでした。
サルデーニャ島は、四国より大きくて、九州よりは小さな島。
青い海に臨むビーチや、古代文明の石造遺跡を有する魅惑のリゾート地です。
ワインはといいますと、イタリア系ブドウのヴェルメンティーノで造るさわやかな白ワインや、スペイン系ブドウのカンノナウ(ガルナッチャ、グルナッシュ)やカリニャーノ(カリニャン)で造る凝縮感ある赤ワインが有名です。
今回私が選んだ赤ワインも、カリニャンを主体としたものでした。
アグリコーラ・プニカが手掛ける、モンテッスの2021年です。
夕飯終わりの食卓で、ゆったりと過ごすひと時に登場したモンテッス──。
団らんの中でグラスに注がれたワインは、深みあるルビー色に輝きます。
溢れ出すブルーベリーやバラのアロマ、さらにはハーブやスパイスの香りも多層的に現れます。
口に含むと、濃厚な果実味と溌剌とした酸、そしてグッと舌を掴むような強靭なタンニンが感じられました。
ボリューム感のある豊かな余韻の中、少し火照った頬に夜風が当たります。
「濃厚」「強靭」「凝縮」といった、まさにカリニャンの魅力がギュギュっと詰まった一本です。
当店には、他にもいくつかカリニャンで造るワインがありますが、私の飲んだ限りではモンテッスが一番パワフルに感じました。
この力強さは、もちろんサルデーニャの気候や土壌が育んだものでもありますが、ブレンドに使われているブドウも大きな要因の一つです。
スペインのアラゴン州カリニェナを原産とする赤ワイン用黒ブドウ、カリニャン。
可愛らしい音の響きではありますが、味わいはパワフルなブドウです。
なのでスペインでは、比較的穏やかなブドウであるガルナッチャとブレンドし、バランスを整えるのが一般的です。
しかしこのモンテッスにブレンドされているのは、カベルネ・ソーヴィニヨンやシラーといった、これまた力強さが魅力のブドウたち。
つまりカリニャンを和らげるのではなく、その個性を最大限に引き出した造りが、モンテッスの力強い味わいを生み出していたのです。
スペインという地元を飛び出し、サルデーニャ島の太陽を浴びて育つ中で、カベルネ・ソーヴィニヨンなどの素敵な仲間に出逢えた──。
モンテッスというワインには、カリニャンの若く活き活きとした青春の物語が見える気がします。
ただカリニャンは、樹齢を重ねると丸くなることでも知られる、なんだか人間のようなブドウです。
きっとこれから時が経つにつれ、ワインは落ち着きと深みが増した大人な姿を見せてくれるのだろうと、期待が膨らみます。
サルデーニャの地で成長していくカリニャンの姿を見ていると、私の中にも小さな親心が芽生えてきました。
「ねえカリニャン、盆と正月くらい、こっちにも顔を出してね。」
私は故郷の四国から、カリニャンにそう呼びかけました。
帰省するカリニャンを温かく迎えてあげるために、来年のお盆はスペインでバカンスを過ごそうと思います。
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ワインの数だけ、飲む人がいる。
飲む人の数だけ、ちょっと話したいことがある。
それでは皆さま、また次回の【ワインと小噺】でお会いしましょう。