イタリアが世界に誇る銘酒ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ。その中でもイル・マッロネートは、優れたワイナリーのひとつとして知られています。ワイン・アドヴォケイトでは手掛けるキュヴェのひとつが100点満点を獲得し「モンタルチーノにおける完璧なサンジョヴェーゼ」(2015年2月28日)とたたえられ、その実力を世界に知らしめました。イル・マッロネートは、クラシカルなブルネッロ愛好家にとって憧れの的とも言える存在です。

イル・マッロネートの歴史は、1974年に現オーナーのアレッサンドロ・モーリ氏の父ジュゼッペ・モーリ氏が1246年に建てられた歴史的建造物を購入したことから始まります。現在はジュゼッペ氏の息子であるアレッサンドロ氏がオーナーを後継。ワイナリー設立から50年以上を経た現在、イル・マッロネートはブルネッロ愛好家にとって憧れの存在とも言えるまでの地位を確立しています。

実際に世界にその名を知らしめたきっかけとなったのが、彼らが誇るトップ・キュヴェである、ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ セレツィオーネ・マドンナ・デッレ・グラツィエの2010年ヴィンテージ。このワインがなんとワイン・アドヴォケイトにて100点満点を獲得し、「モンタルチーノにおける完璧なサンジョヴェーゼ」(2015年2月28日)とたたえられました。

加えて、同キュヴェは2016年でも100点満点を獲得。2020年時点でワイン・アドヴォケイトにおいてブルネッロ・ディ・モンタルチーノとして100点満点を複数回獲得した唯一の銘柄であり、その実力は世界中の専門家や愛好家から高く評価されています。

サンジョヴェーゼの魅力を余すことなく表現するイル・マッロネートは、まさにイタリアが世界に誇る銘酒ブルネッロ・ディ・モンタルチーノを手掛ける、優れたワイナリーのひとつと言えるでしょう。

現在、アレッサンドロ氏は息子のヤコポ・モーリ氏に自身が学んだブドウ栽培、ワイン造りのノウハウを伝えています。そんなヤコポ氏が初めて自身の力で造り出したワインがロッソ・ディ・モンタルチーノ・セレツィオーネ・ヤコポ 2019年。その生産量はわずか3,000本ほどですが、すでに評価誌からも高い評価を獲得しています。

アレッサンドロ氏は、イル・ポッジョーネで醸造担当として働いていたマリオ・コルテヴェジオ氏と、あのカーゼ・バッセ®やモンテヴェルティーネの醸造コンサルタントを務めていたジュリオ・ガンベッリ氏という、サンジョヴェーゼワインにおける偉大な存在である2人の人物から指導を受けたことでも知られています。

彼が2人の偉大な師から学んだことは「サンジョヴェーゼというブドウの偉大さ」と「自然に敬意を持ってワイン造りをする大切さ」。当時14歳だったアレッサンドロ氏は「良いワインを造るためには、すべての物事にリスクペクトを持たなければいけない」と教えられたそうです。

もうひとつマリオ氏に教え込まれたことが彼の信条でもあった3つのP、「Passion（情熱）」「Patient（辛抱）」「Pulizia/プリツィア（イタリア語で清潔さの意）」です。自然的なワインを造ろうとすると、多大な労力が必要となり、これらの要素が必要不可欠。徹底して意識をすることを学びました。

だからこそ、イル・マッロネートでは畑でも除草剤や化学物質等は使用せず、醸造施設においては空調設備もなく、セラーの中でも極力人の手を加えないワイン造りを行っています。

イル・マッロネートが所有する畑は標高約400mで、モンタルチーノ北側斜面に位置するため冷涼な気候が特徴。土壌は主に石灰岩とガレストロで、粗い砂と様々な鉱物が混ざり合っています。

アレッサンドロ氏は、ブルネッロの伝統主義を厳格に守り「自然から厳密に導き出すワイン造り」という哲学を大切にしています。ブドウ栽培においては、前述したように人為的な介入を少なくし、除草剤や化学物質等は使用せず、自然な栽培にこだわっているのが特徴。サンジョヴェーゼが栄養豊富な表土で健康的に成長するように、ブドウ樹は十分な間隔をおいて植えられており、収穫量は畑1haに対して約38hL内に制限されています。

斜面のメリットを生かした日照量、かつて海底にあったという土壌からもたらされる豊富なミネラル感と、北側急斜面の冷涼な気候からもたらされる酸によって、造り出されるワインは、しっかりとした骨格と豊富な果実味、酸味のバランスが取れたエレガントな味わいに仕上がるのです。

アレッサンドロ氏は、醸造においても2人の偉大な師の教えに基づいて、自然にまかせた方法を採用。彼は「真のブルネッロは、ブドウの最良の部分、つまり皮下1ミリの果肉を抽出するために、多くの動きが必要だ」と語ります。

この部分に最高のアントシアニン、ポリフェノール、複雑でフルーティーな香りがあり、収穫後48時間の抽出作業が重要とのこと。彼のチームは2日間ずっと起きていて、常にマストを手で攪拌し続けます。アレッサンドロ氏は、この作業をビッグバンに例えて「宇宙の誕生であり、ワインの誕生なのだ」と表現し、この過程を重要視しているのです。

セラールームには空調設備が無く、通常のブルネッロにおいても発酵時の温度管理はしないため、温度は高い時で35℃以上になるそう。自然的なワイン造りを大切にするイル・マッロネートではセラールームに空調設備がなく、通常のブルネッロにおいても発酵時の温度管理はしないため、一般的な発酵温度に比べ高いのが特徴。微生物の安定性が低下し、良くない香りが発生するリスクもあるため、悪い微生物の働きを抑え良い酵母に働いてもらうためにもワイナリーを清潔に保つ必要があるからこそ、「プリツィア（清潔）」は特に大事。

こうして造られるワインは、活気に満ちていながらも複雑さを備えた、非常に洗練されたスタイルが魅力。サンジョヴェーゼ本来の個性が見事に引き出された、クラシカルなブルネッロを造り上げています。