祖父の代から南フランス、ルーション地区でワイン造りを行い、かつて「ドメーヌ・サルダ・マレ」の代表を務めていたジェローム・マレ氏が、シャトー・ラトゥールで社長を務める幼馴染のフレデリック・アンジェラ氏とともに立ち上げたのが、こちらのドメーヌ・ド・フォンボノーです。彼らが手掛けた最初のワイン「マリウス」は、初リリース時から世界中で一躍注目を集め、それに次ぐ第２のジョイント・ベンチャーとして創業されました。

２人は「良質の水源」という意味を持つこのフォンボノーという土地に強く惹きつけられ、土地に備わる何世紀にも渡る歴史の重みに感銘を受けたとのこと。また、グルナッシュの幹が特異な形状に捻じ曲がって地中深く育つ独特のテロワールに素晴らしいポテンシャルを見出し、ワイン造りをスタートしました。

彼らのビジョンは、まずはテロワールをリスペクトすること、緻密にワイン造りを行うこと、常にデリケートなワインを目標にするということ。そのため、創業時からビオディナミ栽培を行い、テロワールが表現されたワインを生み出しています。

ワイナリーは、ローヌ地方、アンクラーヴ・デ・パプから数キロ離れたドローム・プロヴァンサルの南部に位置。ここは南ローヌでも北部にあり、北ローヌと南ローヌの伝統が混ざり合う場所です。南ローヌの中でもかなり冷涼な気候で、標高の高さと、ミストラル（ローヌ渓谷から地中海に吹き抜ける強風）、日照量の多さも相まって、フレッシュで深みのあるワインに仕上がります。

計46haある敷地のうち、17haがブドウ畑、残りはラベンダーなど他の作物の畑と、手を入れていない自然の森が半々ほど。ブドウ畑が占める比率が高いブルゴーニュなどと比較して、フォンボノーでは自然の中にブドウ畑があり、生物多様性が高いことが特徴です。周囲の自然を大切にしてバランスを整えることで、テロワールが表現された素晴らしいワインが生まれるという考えから、生物多様性を大事にしています。

畑の主体は砂質土壌で、その上を砂利が覆っている地質。水はけがよく、ミネラル感のあるワインに仕上がる所以となっています。砂質土壌の下には粘土質土壌があり、スポンジのように水分を吸収してくれるため、非常に乾燥したときはそこから水分を供給。これらの土壌のおかげもあり、南ローヌで素晴らしいワイン生み出しているのです。

ブドウ畑ではトラクターを極力使用しておらず、開花するまでは羊に雑草を食べてもらうなど、自然に寄り添うブドウ栽培を行っています。ブドウの質にとことんこだわり、2013年には厳格な認定基準を設けているフランス有機認証AB（アグリカルチャー・ビオロジック）を取得しています。ブドウの成長に合わせ、適切なタイミングで除葉、剪定、間引きを施すなど慎重なブドウ栽培を徹底しているため、その生産量は必然的に少量となるのです。

低温で発酵前浸漬を行うことで香りと色づきを引出し、その後ルモンタージュ（液循環）とピジャージュ（櫂入れ）を交互に実施。20日～30日間の発酵とマセラシオン（浸漬）を施すことで、骨格やタンニン、品種ごとに備わった特徴的な香り、果実味などのバランスを整えていきます。

その後、穏やかに圧搾。ステンレスタンクでマロラクティック発酵を行い、その後オーク樽にて熟成。清澄や濾過をすることなく、ブレンド、ボトリングします。このような徹底管理した醸造を行うことによって、各ブドウ品種特有のアロマと果実味、タンニンを見事に纏め上げたワインが誕生するのです。

非常に計算された濃密な仕上がりで、グラスに注いだ瞬間から実に魅惑的で華やかなアロマが広がります。ラズベリーやレッドチェリー、カシスなどの濃密な赤・黒系果実の香りに、甘草やカルダモン、クミンシードのような複雑なスパイス香、スミレの花のようなフローラルなニュアンスも。5年の時を経て一体となった甘やかで凝縮した果実味と綺麗な酸、まろやかなタンニンが下支えし、滲み出る妖艶な旨味に魅了されます。

お料理と合わせるならナヴァラン（仔羊の煮込み）やジビエ料理、チーズ（ブリー・ド・モー）などが、この凝縮された果実味やスパイシーさと好相性。 シャトー・ラトゥールの現社長、フレデリック・アンジェラ氏のワイン造りへの情熱とこだわりが詰まったワインの、円熟した旨味へと昇華した今まさに飲み頃ボトルを、ぜひお楽しみください。