科学的に考える!ワインと魚の相性論

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ワインペアリング
公開日 : 2022.3.4
更新日 : 2023.7.12
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科学的に考える!ワインと魚の相性論

ワインと料理の組み合わせを考える上で、世間に最も広く浸透しているのが「肉には赤ワイン、魚には白ワイン」という考え方です。


あまりにも広く語られているので、この説を盲目的に信じていませんか?魚に白ワインを合わせてみたけれど生臭かったという経験は本当にないでしょうか。


今回はそんなワインと魚の相性について科学的な視点で解説いたします。

目次

ワインと魚が生臭くなる理由

そもそも従来の説では魚に赤ワインが合わない理由として、味わいの強弱の他に、強いタンニンと魚を合わせると鉄のような風味になるためと言われていました。しかし、現在ではタンニン量と生臭さは比例しないと科学的に証明されています。


近年の研究で解明されたワインと魚を合わせると生臭くなる原因は、「魚類に含まれる脂(不飽和脂肪酸)が、ワイン中の成分によって酸化・分解されることで生臭い香りを発生させる」ということです。


この化学反応を促進させるワイン中の成分もいくつか特定されており、以下の成分を多く含むワインと魚介類は相性が悪いということがわかっています。

①鉄分


鉄分が酸化した不飽和脂肪酸と反応することで、生臭い成分を発生させる要因の一つだということが明らかになっています。


ワイン以外でも、マグロのお刺身を食べながらビールを飲むと鉄のような、血のような香りが拡がりますよね。あれはビールも鉄分を含んでいるためです。

※参考文献 田村隆幸: 醸協, 105, p.139-147 (2010)

②亜硫酸


ワインに使われる酸化防止剤(亜硫酸)が不飽和脂肪酸の酸化・分解を促進していることが判明しています。


しかしこの実験では亜硫酸が多くなれば多くなるほど生臭くなる、という結果は出ておらず、他の成分の影響がある可能性もあるとされています。

※参考文献 藤田晃子: 醸協, 106, p.271-279 (2011)

つまり赤ワイン・白ワインというカテゴリではなく、実際には鉄や亜硫酸の含有が多いワイン・少ないワインという分類が、魚介に合うかどうかを左右しているといえます。

ワインと魚の相性を良くする調理法

といっても、ワイン中の鉄分は畑からワイナリーまで様々な要因の影響を受けるため、一概に鉄分の少ないワインと括れないですし、亜硫酸の量はわかりませんよね。


そこで食材をワインに近づける、ワインと魚の相性を良くする調理方法をご紹介します。コツはカルパッチョやマリネの調理法に学ぶことができます。

①酸を加える


カルパッチョとマリネの共通点が酸です。カルパッチョはレモンを絞り、マリネはお酢を入れることで、それぞれ酸を加えています。


これは非常に理にかなっている手法で、柑橘類やお酢が含む酸が鉄分とくっつくことで、他の成分と反応するのを防いでくれるのです。


②オイルを使う


こちらも共通点ですが、どちらの料理もオリーブオイルをふんだんに使っています。


オイルが魚の表面をコーティングすることで、さらなる脂の酸化を防ぐことができますし、生臭い香りをオイルに閉じ込め揮発するのを防いでくれています。

お刺身に少し柑橘類を絞ったり、オイルを垂らしたりするだけで大きく変わりますので、ワインを片手に青魚などを食べる時はお試しください。

※すでに魚の鮮度が悪く、脂の酸化・分解が進んでしまっている状態から回復することはありません。

魚と相性の良いワイン

一概に出来ないことはわかったけれど、それでも魚と相性の良いワインを知りたいという方のために、科学的に考えられる魚と相性の良いワインをご紹介します。


もちろん例外は存在するということを前提にご覧ください。

日本産の白ワイン

鉄分が要因だったことを解明した実験の中では、国産白ワインの鉄含有量は比較的低いことが示唆されています。


この背景にはワイン造りの歴史が浅いことから古い鉄の機材が少ないことや、土壌の影響など多岐にわたると考えられますが、その中でもシュール・リー製法で造られた甲州が良いでしょう。理由は後述します。

ホンジョー 甲州 シュール・リー / 岩崎醸造

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ナチュラルワイン

亜硫酸と聞いてピンとくるのがナチュラルワイン。ただしナチュラルワインには具体的な定義がないので、亜硫酸が少ないことが保障されてはいない点には注意しなくてはなりません。


おすすめはイタリアのサッシカイアが造る赤ワイン「バルダ」。少し冷やしてカツオやマグロのお刺身と合せても、生臭くなることなくおいしく飲めます。


抜栓直後はナチュラルワイン特有の硫黄のような香りがする場合がありますが、空気に触れさせるとすぐに飛ばすことが出来ます。

バルダ / ボデガ・チャクラ

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酵母との接触期間が長いワイン

フランチャコルタやフィノ系のシェリー酒など酵母との接触期間の長いワインもおすすめです。


酵母のタンパク質は鉄分やタンニンなどを吸着してくれるため、長い間酵母と触れていたワインは鉄分が少ないことが多くなっています。上述の国産白ワインの中でもシュール・リー製法を推奨する理由も同じです。


特にフィノシェリーは、ワインと相性が悪いことで知られている、魚卵とも合わせられる稀有なワインです。

フランチャコルタ・アルマ・グラン・キュヴェ・ブリュット / ベラヴィスタ

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まとめ

確かにワイン造りの過程などの影響で、赤ワインは白ワインと比べて鉄分が多くなりがちなので「魚には白ワイン」は間違っているわけではありません。しかし近年は醸造設備や技術が著しく進歩し、ワインの常識も変わりつつあります。


こういう料理にはこのワインを合わせなきゃ!という発想の方が日本では多いですが、もっと自由に好きなワインと好きな食事を合わせて楽しんでみたら、新しい発見があるかもしれませんよ。

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