文学ワイン会「本の音 夜話(ほんのね やわ)」小説家・村田沙耶香さん登場!

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レポート
公開日 : 2018.4.26
更新日 : 2018.7.10
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小説家の村田沙耶香さんが話している
先日、第14回文学ワイン会「本の音 夜話」が開催され、小説家の村田沙耶香さんにゲストでお越しいただきました!
2冊の本が飾られている
ご自身のコンビニでのアルバイト体験をもとにした『コンビニ人間』が第155回芥川賞を受賞、大ベストセラーとなった村田沙耶香さん。実はワインが大好きでいらっしゃるそう!
泡がお好きとのことでお選びしたロゼ・スパークリングでの乾杯を皮切りに、ライター・山内宏泰さんナビゲートのもと、会がスタートしました。
目次

小説を書く第一歩として、まず絵を描く。

当日、大きなとても重そうなかばんを持って会場入りされた村田さん。その中身は、原稿と分厚い何冊ものノート。いつも大きなかばんに入れて持ち歩かれているのだそうです。
「新しい小説を書くとき、100枚綴りのキャンパスのノートを3、4冊使います。文字だけでなく絵もたくさん描いてあって、例えば登場人物の似顔絵や部屋の間取り、登場人物が住んでいる町の地図、あとラストを描いた抽象的な絵とか、ものすごく下手な絵がいっぱい描いてあります」
本と、グラスに注がれたスパークリングワイン
村田さんは小説を書く第一歩でまず登場人物の似顔絵を描き、そこに人物のいろいろな情報を書き足していく形で小説を書いていかれるのだそうです。ご著書の『消滅世界』では、主人公がワインやシャンパンなど、いろんなお酒を飲むシーンが登場します。
「どんなお酒を飲むかは、主人公の性格に併せて考えることが多いです。主人公の似顔絵を描いたあと、横にその人物の設定などを書くんですが、お酒が好きな人の場合はワインやビールが好き、などの情報を書いたりします。それはなんとなく主人公の性格によって決めるというよりも、もとから決まっているかんじがするんですね。この人はきっとこうだろうなあと」

小説を書く動機は、“知りたいから”。

村田沙耶香さんは、その作品の多くで、社会的常識や共有の価値観のほか、夫婦や家族など当たり前とされる人間関係に疑問を持たれ、そこで感じる違和感の正体を過激とも言える設定で徹底的に追求していきます。知りたいから書いている、というのが書く動機だと村田さんは話されます。
「私が小説を書き始めたのは小学生の頃。子どもの頃、私は“本当の本当”をすごく考える子どもでした。例えば、なぜ両親は私と兄にご飯をくれたり、お菓子を買ってくれたりするんだろう、隣の子にはあげないのに、という根源的問いがありました。自分が子どもだからという理由はわかるんですが、本当は何でだろう?というのを考えずにはいられない子どもでした。
純文学の世界に魅かれるようになったのは、“本当の本当”を知るための実験みたいなことをしている人がたくさんいるから。疑問ってない方が生きやすいかもしれません。でもそうした疑問を持っていることが、小説を書かせてくれたり、本を最後まで読ませてくれたりする。疑問を持っている人をもっと深い場所まで連れて行ってくれる。純文学や小説の世界はそんな場所であると思っています」

『コンビニ人間』の主人公は、私にとってヒーローです。

白ワインが注がれたグラスを持つ村田さん
芥川賞を受賞された頃は、ご自身もコンビニエンスストアで働いていらっしゃったということで、読者は『コンビニ人間』の主人公、古倉恵子さんと同一視しがちだったりしたわけですが、主人公と村田さんは似ていらっしゃるのでしょうか?
「残念ながら違いますね。似ているって言ってさしあげたいなと思うことが多々あるんですが…。この前も海外から取材に来られ、主人公とあなたは似ていますか?と聞かれまして。海外からはるばる来られてそう質問されているので、似ていますって言いたかったんですが(笑)、やっぱり嘘はつけず、だいぶ違う性格です、とお伝えしました」
どこが違うのでしょうか?
「物の考え方ですかね。そもそも彼女は顔色を窺わない人。一方、私は小さい頃から本当にビクビクして、誰が何を考えているかとか、嫌われないかとか、そういうことばっかり考える子どもだったので、どちらかというと彼女のようなタイプが憧れなんです。彼女のように誰に何と思われても平然とできたらいいなあと。古倉さんは私にとってヒーロー。彼女みたいだったら、きっと子ども時代もラクだったのではと思います。傍から見ればすごく変で異物として扱われたかもしれないけれど、ビクビクして萎縮して生きるよりかは、ずっと堂々と生きられただろうなと。そういう意味では、彼女みたいな生き方ができたらいいなっていう憧れを感じました」

苦しかった思春期。

村田さんが、小説の設定で思春期の世代をよく描かれるのはどうしてなのでしょうか。
「思春期は苦しかったです。とくに中学校は苦しかったので、印象的なものとして残っていて、何度も書かずにはいられないんだと思います。とくにいじめにあったとか、そういう経験があるわけではないんですが…。それこそ空気を読まなきゃいけない空間に押し込められて、誰か不当にからかわれている人を、本当はかばいたいけど、怖くて気づかないふりをしてしまう卑怯だった自分、そういう自分のことを忘れられないんだと思います。その頃に山田詠美さんの『風葬の教室』を読んで、自分の価値観で生きている主人公と出会い、こんなふうに素敵に生きたいって思ったのが、文学の世界にのめり込むきっかけだったと思います。
自分の価値観がある主人公、もしくは価値観を取り戻す主人公を書くことが多いのは、たぶん自分がそれを見失っていたのを小説に助けられて、「自分の価値観で生きていいんだ」ということを小説に教わったから。私の小説の主人公にも、自分の価値観で生きるということを取り戻してほしい、という願いが表れているんだと思います」

待望の最新長編小説『地球星人』を発表!

笑顔の村田さん
お話の最後には、待望の新作についてもお話が飛び出しました!
「今まさにかばんの中にはいっているのが次回作です。完成したら長めの作品になると思います。いつも以上にショッキングな場面や、グロテスクな描写があるかもしれません。私の父方の祖母が長野ということがあり、舞台の小説は長野になります」と村田さん。気になる最新長編小説のタイトルは、『地球星人』。4月7日発売の『新潮』5月号で発表されています。“『コンビニ人間』を超える衝撃作”とのこと、ぜひご注目ください!
聞き手の心に突き刺さる忘れがたいお話がいっぱいであると同時に、村田沙耶香さんを身近に感じられた、なんとも贅沢なひととき。最後には、たくさんの質問がお客様から寄せられ、そのひとつひとつにとても丁寧にお答えいただきました。村田さんご本人のふんわりとした雰囲気と、小説とのギャップに驚くお客様も多数。村田さんが醸し出す優しい雰囲気に包まれながら、ゆっくりとワインを味わう、貴重な一夜となりました。
イベント開催日:2018年3月20日
イベント撮影:小川恭平
本の表紙
『コンビニ人間』(文藝春秋)定価1,300円+税

当日、ご提供したワイン

サンタディグナエステラードブリュットロゼのボトル
サンタ・ディグナ・エステラード・ブリュット・ロゼ / ミゲル・トーレス・チリ (チリ セカノ・インテリオル)NV ロゼ 税込2,052円
詳しくはこちら
コートデュローヌブランのボトル
コート・デュ・ローヌ・ブラン / シャトー・ド・サン・コム(フランス ローヌ)2016 白 税込2,700円
詳しくはこちら
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