第25回 インテグレート

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公開日 : 2018.3.25
更新日 : 2023.7.12
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奇怪な用語が飛び交うワインテイスティング。フルーツや花ならまだしも、スパイスにミネラル、焦げ香??しまいには動物臭?! ですが、これにはきちんと意味があるのです。ソムリエ目線で、毎回難解なテイスティング用語や表現などを解明! あなたもイメージを膨らませてテイスティングに挑戦してみてはいかがでしょうか?

1 甘み

コンクールの再挑戦を志して、3年間、それまでとは違った感覚でテイスティングをするようになっています。それはいかにワインの個性を的確に掴み、コメントに落とし込んでゆくか、ということです。そこに、そのワインがよいか、美味しいのか、飲みたいと思うのか、といった思いや考えを巡らせることは一切ありません。プロの方でも、そんな風にテイスティングすることはあまりないかもしれません。そんな特別な状況、心境で、テイスティングと向き合っていて痛感するのが、世界的なレベルアップと技術革新です。そこにはさらに情報技術の発展も加わります。つまりグローバリゼーションです。これにより、大きく二つの現象が起きています。

一つめはワインの類似化です。以前は、ハーブの香りがしたらソーヴィニヨン、ピーマンの香りがしたらカベルネ・フラン、色が明るくて華やかな香りはピノ・ノワール、酸化熟成の印象が強ければスペインかイタリア、といった具合にステレオタイプに認識していっても、あまり問題ではありませんでした。現在では品種特性の理解や技術力によって、明確な個性の断定はしにくくなりました。ライチの香りがするからといってゲヴュルツトラミネールだとは限らないのです。

もう一つの現象は、ワインが洗練されてきたことです。選りすぐりの適熟果、有能なコンサルタントやワインメーカー、技術革新の進んだ機材、設備、ノウハウ、投資により、どんな国からでもボルドーやトスカーナを思わせるような洗練された品質のワインが生まれているのです。温暖な気候が象徴的なニューワールドの赤ワインは、色が濃く、ジャーミー(ジャム)で、しっかりとローストした樽香、ヴォリューミーで、パンチのきいたタンニンが個性であったといってもよいでしょう。そこに洗練が加わるのです。近年よく聞かれるようになった表現用語に、「インテグレート」「コントロールド」があります。ある個性が突出し、時には目立ち過ぎるがあまりバランスの悪さとなっていたものが、他の要素と溶け合う、バランスがとれている、抑えがきいていて過剰ではない、そんな時には使われる言葉です。

2010年ジェルノ・ランジュ / ボデガ・ノートンは、漆黒のようなブラックチェリーレッドで艶があります。香りは発散されず、おだやかで、かつ濃縮感が大変強く、カシスリキュール、木樽からのロースト香が際立っています。さらには、花やスパイス、土っぽさもありそうですが、それらが上がってるくるには十分な空気接触が必要です。味わいは、力強いアルコール感が印象的ですが、スムースで引き締まったボディは爽やかなフレーヴァーを備えています。あと5年くらいおけば素晴らしいバランスと深みを楽しむことができるしょう。今、味わうなら、鹿肉や赤毛牛をじっくり炭火焼きしたものなど、ダイナミックな素材をじっくりと、丁寧に調理した料理がよいです。ジェルノ・ランジュ、インテグレートされた、世界のワインの「今」を、感じることのできる赤ワインです。

「インテグレート」を感じるワイン

ジェルノ・ランジュ/ ボデガ・ノートン(アルゼンチン)

10,000 円 (10,800 円 税込)

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