第24回 甘み

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公開日 : 2018.3.25
更新日 : 2023.7.12
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奇怪な用語が飛び交うワインテイスティング。フルーツや花ならまだしも、スパイスにミネラル、焦げ香??しまいには動物臭?! ですが、これにはきちんと意味があるのです。ソムリエ目線で、毎回難解なテイスティング用語や表現などを解明! あなたもイメージを膨らませてテイスティングに挑戦してみてはいかがでしょうか?

1 甘み

ワインの味わい(香りを含めて)に多様性を与えているのは、なんといってもその香りの種類の豊富さにあるでしょう。プロフェッショナルテイスティングにおいては、香りの要素と味覚要素は別々に捉え、コメントしてゆくのが、セオリーとなっています。しかし、脳が感知した情報に人間は大きく影響を受けるということはよく知られており、脳が「酸っぱいものの香りだ」と感知すると、反射的に唾が出てきて、「酸味がある」と味覚も準備してしまいます。

テイスティングのビギナーに香りを表現させると、多くの人が「甘い香りがします」と表現します。これはセオリー上ではよくありませんので、修正する必要がありますが、決して間違ってはいません。ワインには甘みが確かに感じられるものがあります。残糖分がないにも関わらずです(多くのワインは、4〜6g/lの残糖分が含まれるのですが、その値だと一般に人間は甘みは感知しないといわれています)。その甘みの正体は、アルコールとグリセリンによるものと認識されていました。しかし、近年そうではないと研究者たちは疑問を唱え、その正体を掴むべく化学的な研究が行わています。そして、その一つが先日発表されました。木樽から抽出される、QTT(クエルコトリテルペノシド)とよばれる成分です。これはワインテイスティングにおいて大発見ともいえるでしょう。甘みの正体は他にもあると研究は続いていますから、注目です。

化学的ではありませんが、もう一つの正体は香りによる影響です(この場合、要因といったほうがよいでしょう)。よく熟したフルーツや芳しい花の香りから、「甘さ」を想起させ、結果口当たりに、「甘い」と感じさせているのです。このようにテイスティングは化学的でもあり、官能的でもあり、心理的でもあるのですね。

トーレス マス・ボラス2011は、スペイン地中海地方ペネデスから生まれるピノ・ノワールを使った赤ワインです。濃いめのルビーで、落ち着いた色調をしています。粘性もしっかりとしていて、成熟度の高さがうかがえます。芳香豊かで、グリオットチェリーの香りが際立ちます。加えて、牡丹、キャラウェイシード、シナモンと、甘みのあるものを想起させます。香りの奥には土っぽさもあり、深みを与えています。口当たりはしっかりと強く、なめらかで、甘みが感じられます。アルコールのヴォリュームもあり、噛めるような感覚です。酸味はきめ細かで、ボディに溶け込み、緻密なタンニンは、紅茶のようなアフターフレーバーを伴います。まだまだ寒いこの季節、身も心も温まるワインです。

「甘み」を感じるワイン

マス・ボラス/ トーレス(スペイン カタルーニャ ペネデス)

6,000 円 (6,480 円 税込)

 

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