奇怪な用語が飛び交うワインテイスティング。フルーツや花ならまだしも、スパイスにミネラル、焦げ香??しまいには動物臭?! ですが、これにはきちんと意味があるのです。ソムリエ目線で、毎回難解なテイスティング用語や表現などを解明! あなたもイメージを膨らませてテイスティングに挑戦してみてはいかがでしょうか?
「今日はとびきりのワインを開けるぞ」というとき、ワイン好きなら必ずやときめく瞬間です。しかし、同時に「こんなはずじゃないのに?」という経験をお持ちの方も多いはずです。特にブルゴーニュのグランヴァンともなると、頻繁に そのようなケースに出会います。
それは多くの場合、「ワインが閉じている」ことに起因します。ワインの香りには、「発散されやすい香り」と「発散されづらい香り」があります。前者は果実や花などのアロマティックな香りで豊かさを感じます。後者は、深みのある複雑な香りで、ミネラル、土っぽさ、スパイス、蜂蜜など熟成香ともよばれるものです。
これらの二つのタイプの香りは同時に感じられることはありません。図はあくまでもイメージなのですが、若い香りは最初は強く、段々弱まってゆきます。対して、複雑な香りは最初は弱く、段々強まってきます。 若い香りが下がってゆき、複雑な香りがまだ発展途上にある時期(収穫からだいたい3~5年)を「クローズ期」とよび、香りがもっとも少ない状態、つまり「クローズ」と表現するのです。
今回、ご紹介するボノー・デュ・マルトレイのコルトン・シャルルマーニュで思い出深い失敗がありました。15年ほど前のことです。ご注文をいただき、テイスティングをしてみると明らかに閉じている。当時白ワイ ンのデカンタージュに興味があっただけに、迷わずカラフェに移しました。香りはさぞ広がると思いきや、むしろ少なくなってしまいました。閉じているワインはカラフェに移したくらいで、すぐに開くものではなく、時間が必要なのです。
このテイスティングコメントは、開栓して、グラスに注いで1時間して書いたものです。
やや淡めのイエロー。若々しい輝き。粘性はしっかりとあり、成熟度の高さを伺えます。香りはピュアで、透明感があります。よく熟した洋梨、生アーモンド、木樽からのヴァニラは上品な印象です。石灰質のミネラル感による深みもあります。味わいはスムーズでバランスがよく、口中では豊かな広がりがあり、アルコールの熱さをかんじます。ボディに包まれた酸味はきめ細かさを与えます。余韻にはヴァニラとミネラルを残します。
このワインを楽しむためには開栓から十分な時間が必要です。家で楽しまれるならば、初日にグラス2杯ほど、翌日に残りを楽しむくらいで、ちょうどよいです。レストランであれば、食事前に開栓、カラフェをしてもらい、シャンパーニュ、ほかの白ワインのあとにサーブしてもらうとよいでしょう。
コルトンは赤ワインの名産地の一つでしたが、領主であった西ローマ帝国・シャルルマーニュ皇帝の白い髭が染まらないように白ワインを造ったところ素晴らしく、その後白ワインの名産地となった、という逸話に由来します。
現当主であるモリニエ-ル伯爵は、どんない良い年でも180樽以上は造らないという主義を徹底するなど、世界最高峰の白ワインの品質を守り続けています。
「閉じているFerme」を感じるワイン
コルトン・シャルルマーニュ グラン・クリュボノー・デュ・マルトレイ(フランス ブルゴーニュ アロース・コルトン )
19,000 円 (20,520 円 税込)