チーズを一口、ワインも一口さらに一口と、ワインが進むこの至福の瞬間は、ワインラヴァーにとって幸せのひと時ではないでしょうか。
日頃チーズを楽しまれている方は、「ナチュラルチーズ」「プロセスチーズ」という表現を聞いたことはありませんか?
実はこの二種は名称だけではなく、香りや味わいにまで違いがあります。今回はそんなワインをさらに愉しむ上で欠かせない、チーズの豆知識「ナチュラルチーズとプロセスチーズの違い」について説明します。
目次
そもそもチーズとはどんなもの?
チーズは、搾乳した乳から効率良く栄養素を摂取し、長期保存する為にチーズ造りが広まりました。乳をチーズという固形物に変えることで、移動にも便利になり、長期の保存も可能になりました。
チーズとは、乳成分の「乳たんぱく質」を収集し加工したものです。牛の乳から造られるチーズが一般的で身近なチーズですが、チーズを製造する乳の種類は牛の他にも羊・山羊などがあり、乳種によって、チーズの風味は全く異なります。
乳をチーズに変えるには?
乳をチーズに変える方法は、大きく3種類あります。
1.乳酸菌などの「酸」による凝乳
2.「凝乳酵素(レンエット)」による凝乳
3.加熱による凝乳
乳のタイプにより、たんぱく質を固める方法も変わってきます。分かりやすい例としては、温めた牛乳にレモンを加えると乳が分離する、「酸」による凝乳です。他には、日本でも人気のリコッタチーズなどは、加熱により乳清(ホエイ)が凝固しチーズが製造されます。
チーズのタイプ
チーズのタイプは様々あります。非熟成のフレッシュなものから白カビ・青カビ・セミハード・ハード・ウォッシュ・シェーブル(山羊)タイプのものまで存在しています。
こちらのタイプ分類は「ナチュラルチーズ」の分類の仕方です。牛の乳であっても製造方法によってタイプが変わり、水分量や熟成度合などの違いが生まれます。
ナチュラルチーズとは
ナチュラルチーズとは、名前のまま「ナチュラル」で自然なチーズ。搾乳した乳を酸や酵素等で凝乳し、発酵させ、乳清(ホエイ)を取り除き、固めたものです。自然なままの香りや味わいが特徴です。
例)カマンベール・ド・ノルマンディー(牛)、ロックフォール(羊)、モッツァレッラ・ディ・ブーファラ・カンパーナ(水牛)など有名なナチュラルチーズがあります。
ナチュラルチーズは、原料の乳の種類や凝乳の仕方、さらに熟成によっても香りや味わいが変わります。ナチュラルであるので、微生物や酵素などがチーズ中に生きて活動しているため、香りや味わいが熟成とともに変化していきます。
ワイン同様に、生産地の自然環境もチーズの味わいに影響してきます。季節により、餌の量や活動量も違う為、「食べ頃」が存在しているのもナチュラルチーズの特徴でもあります。同じ牛の乳であっても、海に近い場所で生育している乳と内陸部の乳では、チーズの味わいに違いが生まれます。
プロセスチーズとは
プロセスチーズは、「ナチュラルチーズを原料として」造られるチーズです。プロセスチーズの主な原料は、セミハードやハード系のナチュラルチーズです。
ナチュラルチーズを粉砕し、乳化剤(溶融塩)を加え乳化し、加熱しトロトロに溶かした後、冷却し製造されます。
プロセスチーズはナチュラルチーズと違い、高温で加熱していること・乳化の工程があることが大きな違いになります。
ナチュラルチーズとの香り・味わいの違い
プロセスチーズは、高温で加熱し乳化溶融の工程を踏むことで、ナチュラルチーズに存在していた微生物はほぼ死滅し酵素は失活します。その為、香りや味わいは穏やかになり熟成もこれ以上進まないことになります。
スライスチーズ・スモークチーズ・繊維状に割けるチーズなど、チーズの形状も様々に開発されているので、用途により選ぶことができます。さらに、ナチュラルチーズよりも保存性が上がる為、賞味期限も長くなります。味わいが変わらずに長く楽しめるのが利点ですね。
馴染みのあるカマンベールチーズはどっち??
身近で馴染み深い「カマンベールチーズ」。アルミ缶やプラスチック容器に入り、スーパーなどで手軽に購入できますよね。こちらはロングライフチーズと言います。
このチーズの商品表示には「ナチュラルチーズ」という名称が書かれています。製造工程で「加熱殺菌」して作られるのですが、「乳化」の工程を踏まずに製造されます。
高温殺菌しているので微生物は死滅し、酵素も失活しているので、熟成もそれ以上進みません。香りも味わいも比較的クセが少なく穏やかなので、ややプロセスチーズのような印象を受けますが、日本の分類方法では「ナチュラルチーズ」という名称になります。
まとめ
ワインを楽しむ上で欠かせないチーズ。ナチュラルチーズとプロセスチーズの違いは、細かく見ていくと製造方法の違いももちろんありますが、最終的には香りや味わいに大きく違いが見られます。
ナチュラルチーズらしい特有の香りや味わい、プロセスチーズらしい食べやすい味わい。双方の良さを理解しておくと、ワインとの合わせ方や料理へのアレンジもさらに広がりますね。