【号外】 和食×アルザス

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レポート
公開日 : 2017.7.21
更新日 : 2022.5.19
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エノテカのワインバイヤーが、ワイン界で活躍する人々をインタビューしてとことん語り合う企画「ワインバイヤーズトーク」。今回は号外として、バイヤーが参加したディナー会の模様を実況中継する「一人バイヤーズトーク」をお届けします!

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安政三年(1856年)創業の京都 下鴨茶寮。伝統あるお店を人気放送作家 小山薫堂氏がオーナーに就任したのが2012年。その後2016年3月、東京の銀座数寄屋橋に誕生した東急プラザ銀座の11階にオープンしたのが、今回お世話になった「銀座 下鴨茶寮 東のはなれ」。このお店は暖簾をくぐると美味しい日本酒とアテが楽しめる”日本酒バル のまえ”が広がり、その右手奥にある小さな扉を開けると割烹料亭がお目見えする。クラフトビールや稀少な日本酒が揃う入口には何度か訪問したことがあり、ヴァイツェン飲みながらのTKG(たまごかけごはん)、稀少な日本酒而今(ジコン)を飲みながらのハムカツなど極旨ペアリングを堪能した記憶があったため、初訪問となる割烹料亭には図らずとも期待は膨らんだ。

今回もお料理のコーディネートをお願いしたのは森上久生氏。前々回のバイヤーズトーク号外に続き2度目の登場となるが、アルザスの生産者トリンバックのワインを知り尽くし、特に世界中のリースリングに造詣の深い森上氏のワイン×9品の日本料理デギュスタシオンランチは、食材とワインの長所を最大値で活かす調味料や香辛料使いがキーワードとなった。

目次

キウイとワイン?

リースリング・レゼルヴ 2014年トマト釜に水雲(モズク)と煽り烏賊 叩きおくらとキウイ酢ジュレ

初夏の陽気の6/6日火曜日。お店に着くと少し暑く感じる天気だったので、異なる食材から運ばれた酸味が一瞬にして身体を活性化させてくれ、2014年の特徴である溌剌とした酸味のあるワインとピッタリ。特にキウイの酸味との相乗効果が凄く良い。2品目の刺激的なスパイスとハーブ感が素材の良さを引き立て見事に白ワインに合っていたのは驚き。そしてワインに独特のとろみが感じられるので木耳を添えた料理長のセンスに感服。

金目鯛幽庵焼き 木耳(キクラゲ) コリアンダーとレモングラスの香

フランス人的に和食にはピノ・グリ?

ピノグリ・レゼルヴ 2014年甘夏と鴨の燻製 粒マスタード

ジャン・トリンバック氏が長年のペアリング経験から導いた結論”和食にはピノ・グリ”。3日前の銀座のお鮨屋さんでの会食でピノ・グリを持ち込み、鯛の昆布〆、車海老、穴子の握りと最高のマリアージュを体験したので、ジャン氏の理論に心底同感。今回はアルザスでもポピュラーな鴨肉との組み合わせ。赤身肉のクセにも負けず、皮に近い脂身がワインの旨味と合い、たっぷり添えられた粒マスタードの適度な酸味とも素敵に融合する。同席したワインジャーナリストの安齋さんは、”肉好きだけど赤ワイン嫌い”の方にオススメと仰られ一同納得。

白ワインが10年熟成?

リースリング・キュヴェ・フレデリック・エミール 2007年蛤と新玉葱 生姜 酢橘(スダチ)

トリンバック家8代目、フレデリックエミール氏の時代に国際コンクールで賞を受賞し、一躍国際的な脚光を浴びることになった功績に敬意を表してワイン名に。10年熟成による土っぽい大地の香りや完熟ピーチのフレーバーが複雑で、フルボディーではないが骨格感の充実した味わいが蛤の噛み応えや旨味とマッチ。鱧の歯ごたえのある食感をワインが優しく包んでくれる癒し系のマリアージュも美しく、海藻から作られる円やかな味わいの藻塩を振ることで更にワインの旨味が際立つ。

鱧天麩羅 アスパラ 大和芋海苔包み 藻塩

白ワインがオレンジワインに?

リースリング・キュヴェ・フレデリック・エミール 2000年天然大鰻西京蒸し焼き 茄子のピュレとつるむらさき

もはや白ワインの色ではなく黄金色に輝くオレンジワインに近い色調。香りは凄く複雑で、蜂蜜、オレンジの皮の砂糖漬け、アプリコット、ブラッドオレンジ、アーモンド等。静岡の天然大鰻の歯ごたえに一同驚く。白ワインなので白焼きではないのか、と質問を受けそうだが、白焼きではワインの強さが勝ってしまうので、1日西京味噌に漬けて食材にコクを与えてバランスを取る、との事。この様な発想がプロフェッショナルな仕事なんだろう。

シナモンやカレー塩とワイン?

リースリング・クロ・サン・テューヌ 2011年車海老 山椒焼き 青梅

アルザスの辛口白ワインの最高峰で、生産量が毎年約8,000本と極端に少なく、世界中で取り合いになるワイン。熊本天草の車海老は当然美味しく、ぴりっと効いた山椒がワインの旨味を助長し、添えられたシナモンを少し振ると、あら不思議。ワインの味わいが滑らかに感じるようになり、車海老との距離が急激に縮まった印象。カレー塩も同じ様な効果があり、ワインとのつなぎ役を誰に任せるかでペアリングの成否が決まるのだろう。味醂の甘さがほんのり感じられる炊き込みご飯は、何のワインを合わせても良いと言われたが、やはり極上の旨味を備えたクロ・サン・テューヌにして正解だった。

スイーツにスイートワイン?

ゲヴュルツトラミネール・セレクション・ド・グラン・ノーブル 2007年枇杷(びわ)のコンポート 茗荷 はちみつ檸檬

何皿食べても食べ飽きないクリエーティブ日本料理の〆は甘味。ワインは特別に造られた極甘口ワインで、アルザスでもポピュラーな果実、ミラベルに近い日本の果物である枇杷を甘く煮たスイーツ。甘いもの同士なので重厚感があり過ぎるかと思いきや、両素材のベタつかない天然由来の甘味と清涼な酸味が口の中をスッキリとさせてくれる。ここにもきめ細かい配慮があり準備頂いたスタッフの皆様に心より感謝。

森上 久生(もりがみ ひさお)

レストランサンパウやベージュアランデュカス東京などでシェフソムリエを歴任。数々のソムリエコンクールで受賞経験を持つ。2013年に独立し櫻井翔 主演 大使閣下の料理人では主演者の所作指導を行なう。第一回国際ソムリエ協会認定ディプロマ。

総料理長 本山直隆(もとやま なおたか)

京都と東京の日本料理店で研鑽をつむ。2016年3月にオープンした「銀座 下鴨茶寮 東のはなれ」に参画し、京都独自の文化を守りながら新しい食材や調理法を取り入れ日本料理の文化を世界に発信している。今回のトリンバックのワインは力強さを感じたので、添える調味料を工夫し意識的にワインとの距離感を縮めるよう努めた。

ジャン・トリンバック

フランスのアルザスで1626年創業の名門ワイナリー、トリンバックのセールスダイレクター。12代目にあたる長男ピエール氏がワイン造りを担当、次男のジャン氏が世界中を飛び回り販売やプロモーションを行いブランディングを担当している。今回の日本滞在中に新政、醸し人九平次、黒龍が好きになった日本酒ラバー。

トリンバックアイテム一覧
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