トロ・ボー&リニエ・ミシュロ。人気生産者に聞いた!「除梗するかしないか問題」

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レポート
公開日 : 2019.7.5
更新日 : 2019.12.20
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トロ・ボー&リニエ・ミシュロ
左から、ドメーヌ・リニエ・ミシュロの当主、ヴィルジル・リニエ氏とその息子(そっくり!)ドメーヌ・トロ・ボーの当主、ナタリー・トロ女史
今年4月、エノテカでもお馴染みの人気ドメーヌ「ドメーヌ・トロ・ボー」と、今年から取り扱いが始まった新鋭「ドメーヌ・リニエ・ミシュロ」より当主が揃って来日!
新ヴィンテージの出来など、様々なお話を伺いましたが、ブドウの除梗(注1)について対照的な取り組みをしており、とても興味深かったので、その点について詳しくレポートします。
(注1)ブドウの茎の部分をとってから破砕、醸造すること。通常多くの生産者が除梗して赤ワインを造りますが、一部生産者(特にブルゴーニュ)は除梗せず醸造することもあり、そのスタイルに注目が高まっています。
目次

エノテカスタッフにもファン多し!トロ・ボーの魅力

トロ・ボー
ドメーヌ・トロ・ボーは、ショレイ・レ・ボーヌに本拠地を置くドメーヌで創業は1880年。ナタリー女史が5代目を務め、コート・ド・ボーヌに約25ヘクタールの自社畑をもつ老舗です。
実直な畑仕事に裏付けられた、体に染み入るようなピュアでエレガントな味わいのワイン。そしていつも笑顔のナタリー女史に、エノテカスタッフも多くが虜になっています。

「生産量は少なくて悲しいけれど、本当においしいヴィンテージ」

トロ・ボー
さて、今回紹介していただいたのは、最新の2016年ヴィンテージ。2016年のブルゴーニュは4月の霜害と5月の2度の雹害に襲われ、収穫量が非常に減少しました。しかし、8月から収穫までは天候が回復し、暑い夏となったことで果実はしっかりと成熟したそうです。
この2016年ヴィンテージについては、ナタリー女史が
「生産量は少なくてとても悲しいけど、本当においしいヴィンテージです!」
と太鼓判を押すように、収量は低いものの高品質のワインが生まれた秀逸なヴィンテージだそう。

100%除梗にこだわる

トロ・ボー
ドメーヌ・トロ・ボーでは、先々代から100%除梗したブドウを使ってワイン造りを行っています。
その理由をナタリー女史に尋ねると「おじいちゃんの友人が除梗機を作っていたから(笑)」。
導入はそのような簡単(?)な理由だったそうですが、これまでずっと100%除梗したブドウを用いたワイン造りを貫いています。トロ・ボーのワインがもつ澄み切った果実味は、除梗によるところも大いにありそうです。
実はナタリー女史によると、ブドウが完熟した2015年に一度だけ、一部ワインの1/3にだけ除梗しない全房発酵のブドウをブレンドしたことがあったそうです。しかし最終的には、除梗したほうがいいワインができるという結論に至ったのだとか。
ドメーヌ・トロ・ボーでは、2014年からブルゴーニュでは珍しい高価な光学式選果台(注2)を導入して、より質の高いブドウの粒を選別するようにしており、日々どうすれば高い品質のワインが出来るか考えているそうです。
(注2)除梗したブドウの粒をコンピューターが画像判定し、不適格なブドウを空気砲で弾くことで選果する最新鋭の機械
「良いと思うことは取り入れたいけれど、うまくいっていることは変えたくありません。」
穏やかな表情ながらきっぱりと話すナタリー女史に、当主としての自信が表れていました。

モレ・サン・ドニの未来を担う新鋭

リニエ・ミシュロ
続いてワインの説明をしてくださったのは、モレ・サン・ドニに本拠地を置くドメーヌ・リニエ・ミシュロの3代目当主、ヴィルジル・リニエ氏。
ファミリーは1960年代からワイン造りを行っていましたが、当初は共同組合としてブドウを売っていました。1980年代からようやくドメーヌ元詰めを始めましたが、こっそり造って少しだけ瓶詰めするという時代もあったとか。
獣医を目指していたヴィルジル氏は、80年代から実家でのワイン造りに参画し、2000年にドメーヌの3代目を継ぎました。収量に重きを置いていた祖父や父の時代とは違い、品質を高めたかったと話すヴィルジル氏。父親とは対立することも多かったそうですが、最終的には自分の意見を尊重してくれたそうです。
こうしたヴィルジル氏の努力が実り、ドメーヌ・リニエ・ミシュロは2007年にはフランスきっての評価誌「旧クラスマン」で、ブルゴーニュ全体でも5軒しか選ばれない“Nouveau domaine et Domaine a suivre(初掲載かつ注目すべき生産者)”として紹介され、同誌の2009年度版では、デュジャックに並ぶ1ツ星評価を獲得するなど、気鋭の生産者として注目を集めるようになりました。

全房発酵にこだわる

リニエ・ミシュロ
ドメーヌ・リニエ・ミシュロで選果中のブドウの房
100%除梗のトロ・ボーに対し、こちらのリニエ・ミシュロは除梗をせず、ブドウを房のまま発酵させる全房発酵にこだわることで知られています。2006年から全房発酵を取り入れ始め、全体の50%ほどは全房発酵を行っているそうです。
その理由をヴィルジルさんに尋ねると、
「私が“このスタイルが好き!”と思った生産者(注3)は皆、全房発酵を取り入れていました。そこで私も取り入れることにしたのです。
全房発酵すると、ワインにはミントを思わせるスーッとした清涼感が生まれます。ただ、全房発酵する際には、完熟した健全な茎でなければならないため、選果には10名ほどのチームが当たり、2段階で選りすぐったブドウだけ使用するように注意を払っています。」
(注3)デュジャックやDRCも全房発酵を取り入れている生産者として有名
リニエ・ミシュロ
リニエ・ミシュロのワインは、王道中の王道とも言えるリッチネスとエレガンスを備えながら、深みとストラクチャーを併せ持っており、これこそが全房発酵のブドウ由来の味わい深さなのかもしれません。

まとめ

茎を取り除くことで、ブドウ果実のピュアな果汁をワインに仕立てる100%除梗によるワイン。一方で、あえて茎と共にブドウを房のまま発酵させることで、ワインに複雑味をもたせる全房発酵によるワイン。
ワインの神様と言われたアンリ・ジャイエが推進した100%除梗と、DRCが取り入れている全房発酵。
どちらのワインが優れているか、時として論争になることもありますが、今回来日したトロ・ボーのナタリー女史も、リニエ・ミシュロのヴィルジル氏も、とても自然な理由でそれぞれの手法を取り入れている点が印象的でした。
そして何よりも大切なのは、最終的に高い品質のワインを造ること。そのために、除梗派のトロ・ボーでは高品質なブドウの粒を選果する光学選果台を導入したり、全房派のリニエ・ミシュロではブドウの房の選果を大人数で行ったりと、それぞれに努力を重ねています。
「除梗するかしないか問題」はさておき、高品質なワインを造るために様々な工夫を重ねているお二人のことを思い浮かべながら、ワインを飲み比べてみてはいかがでしょうか?新たな発見や楽しみがあるに違いありません。
ドメーヌ・トロ・ボードメーヌ・リニエ・ミシュロ
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