先日、ワインショップ・エノテカ広尾本店にて「音楽×ワイン スペシャルトークイベント～極上の音楽とワインによる1日限りの特別対談～」が行われました。多くのゲストを魅了した特別なイベントの様子をレポートします！
クラシック音楽とワイン？と聞いて、皆様はどんなイベントを想像しますか？
今回のイベントの趣旨は、クラシックソムリエ×ソムリエ。クラシック音楽の専門家が選曲した音楽に合わせて、ソムリエがワインを選ぶ、また、その逆バージョンもあり、という、おそらくこれまで誰も試みて来なかったであろう、とってもユニークなイベントなのです。
左から、ルネ・マルタン氏、石田博氏、ナビゲーターを務めたクラシックソムリエの田中泰氏
しかも、それぞれを選ぶのは、クラシック音楽界とワイン界きっての一流選者たち。
クラシック音楽を選曲するのは、世界最大級のクラシック音楽祭「ラ・フォル・ジュルネ」の創始者であり、世界中で活躍するLFJアーティスティック・ディレクター、ルネ・マルタン氏。そしてワインを選ぶのは、2015年アジア・オセアニア 最優秀ソムリエコンクール優勝をはじめ、数々のタイトルをもつ日本を代表するソムリエ、石田博氏。ナビゲートをするのは、クラシックソムリエとして著名な日本クラシックソムリエ協会 代表理事の田中泰氏、というなんとも豪華な顔ぶれに、来場した60名を超えるゲストたちの期待も高まります。
今回は、今年の「ラ・フォル・ジュルネ2019」のテーマである「旅 – Voyage」をテーマにセレクトされた音楽とワインの紹介、そしてトークセッションが行われました。
「様々なブドウ品種がワインの中で踊っている」
「それでは、いよいよ、今年のLFJのテーマ「旅＝ボヤージュ」に合わせて石田さんがセレクトしてくださったワインと、ワインに合わせてルネがセレクトした音楽をお楽しみいただきましょう！」との田中氏の声で会がスタートしました。
まず、1本目のワインは、マルタン氏が選んだ曲に合わせて石田氏がセレクト。1曲目、オペラ「はかなき人生」のスペイン舞曲第1番に合わせて石田氏が選んだワインは、イタリアの白ワイン「ヴィンテージ・トゥニーナ」でした。
①ヴィンテージ・トゥニーナ／イエルマン
曲：ファリャ オペラ「はかなき人生」から スペイン舞曲第1番
公演番号：133、234
石田氏は、
「テンポがよく、弾けるような曲なので、赤ワインではなく、アロマティックな白ワインがよいと思いこちらのワインを選びました。ソーヴィニヨン・ブラン、シャルドネという国際品種のブドウに、リボッラ・ジャッラなど土着のブドウをブレンドしてあり、溌剌としてリズムのよい味わいが特徴的です。」
と、ワインについて説明。
マルタン氏「とにかくすごく美味しいです(笑)。この曲は、長い間パリで勉強していたスペインの作曲家が創った曲です。フランスとスペインという兄弟みたいな二つの国が関わっていますが、どちらかというとスペインが強く感じられる曲です。」
石田氏「まさにその通りですね。様々なブドウ品種がワインの中で踊っているような印象を受けます。」
様々な国にルーツをもつブドウ品種がブレンドされつつ、見事に一つにまとまっているワイン、ヴィンテージ・トゥニーナ。そして、フランスに渡ったスペイン人が作曲した名曲、スペイン舞曲。お二人のコメントを聞きながらワインをテイスティングしていると、どちらも様々な国の個性がブレンドされ、リズムよく響きあっている様が目に浮かぶようです。
皇帝×帝王 荘厳な響き
続いて、石田氏がセレクトしたワインに合わせて、マルタン氏が選曲します。石田氏がセレクトしたワイン「プロミス」に合わせて選ばれたのは、ベートーヴェン：ピアノ協奏曲第5番「皇帝」第2楽章でした。
石田氏
「ルネさんというと、名プロデューサー。ワインも名プロデューサーのものがよいと思い、名プロデューサーつながりでイタリアの生産者、ガヤによる1本を選びました。ガヤのカ・マルカンダ・プロミスです。
カ・マルカンダという名前は、ガヤがこの畑を手に入れるのがあまりにも大変だったため、その名前にした、というエピソードがあります。ラ・フォル・ジュルネというイベントも、(今でこそ世界最大級の音楽イベントになっていますが)最初は大変だったと思います。その想いも込めてこのワインを選びました。」
② プロミス／ガヤ
曲：ベートーヴェン ピアノ協奏曲第5番「皇帝」第2楽章
マルタン氏
「そのようなところまで想いを馳せていただき、心より感謝します。実際、結構大変でした。
そしてこのワインに合わせて曲を選ぶのも同じく大変な道のりでした。
ガヤは1800年代からワインを造っているとても歴史のある生産者であると聞きました。5世代にもわたって最高のものを造り続けており、ワインへの愛がある。これは素晴らしい作曲家を選ばなければ、と思いました。
そこで選んだのがベートーヴェンによる、ピアノ協奏曲第5番「皇帝」第2楽章です。
プロミスは非常に高貴で、かつ人間らしいワインです。エレガントであり、同時にブドウ畑に近い雰囲気があります。」
石田氏
「おっしゃる通りですね。ブドウはメルロにシラー、そしてサンジョヴェーゼという土着のブドウを使用し、土地らしさと洗練が同時に表現されています。」
ガヤは「イタリアワインの帝王」とも呼ばれる名生産者。会場では多くのゲスト達が、マルタン氏、石田氏による音楽、ワインへの知識と経験、そして感性に裏打ちされたコメントを聞きながら、じっくりと赤ワインのグラスを回して、二人の巨匠による音楽の響きとワインの味わいを確かめていました。
③ シャトーヌフ・デュ・パプラ・クロー・ルージュ
曲：チャイコフスキー イタリア奇想曲
公演番号：242
続いて、一同は、チャイコフスキー：イタリア奇想曲に合わせて石田氏が選んだ「シャトーヌフ・デュ・パプ」の荘厳さに浸った後、いよいよ最後のワインと曲の紹介です。
フランスを象徴する飲み物
石田氏によって「シャンパーニュはフランスを象徴する飲み物。これは外せないと思い選びました。」と紹介されたのは、シャンパーニュの名門、ルイ・ロデレールが手がける「ヴィンテージ・ロゼ・シャンパーニュ」。
④ ルイ・ロデール・ブリュット・ロゼ
曲1．サン=サーンス 序奏とロンド・カプリツィオーソ
公演番号：231（ピアノ伴奏版）
曲2． ショーソン コンセール（ヴァイオリン、ピアノと弦楽四重奏のための協奏曲 ニ長調 op.21）第2楽章 シシリエンヌ
公演番号：352
曲3． ビゼー 「アルルの女」組曲第1番 Ⅲ アダージェット
最後のワインについて、マルタン氏は
「このシャンパーニュがもつ官能、軽やかさ、エレガンス、全てを表現できるものがあるといいと思い、20世紀初頭のフランス音楽を選びました。しかしどうしても1曲に絞り切れなかったので、3曲の中から、皆さんに選んでいただきます！」
とコメント。
ということで、会場の皆さん、真剣な眼差しでワインをテイスティングしながら、3曲を聞き比べます。じっくりと曲を聞き比べた後、挙手での投票によって選ばれたのは曲1．サン=サーンス 序奏とロンド・カプリツィオーソと曲2．ショーソン コンセールが同率1位！という結果になりました。ゲストたちは、もう一度、自分で選んだ曲をじっくりと聞きながら、シャンパーニュを味わっていらっしゃいました。
音楽とワインの余韻に浸る
名音楽プロデューサー、ルネ・マルタン氏と、名ソムリエ石田博氏による、音楽とワインへの深い造詣と愛に満ちたコメントを聞きながら、音楽とワインを味わう・・・至福の時間はあっという間に過ぎ、多くのお客様がその場を去りがたいような、味わい深い余韻に浸っていました。
今年のラ・フォル・ジュルネは、5月3日～5日までの3日間、東京国際フォーラムを中心に開催されます。エノテカのワインブースも登場予定ですので、今回のイベントに参加できなかった皆様もこちらの会場に足を運んで、クラシック音楽とワインを楽しんでみてはいかがでしょうか♪
ラ・フォル・ジュルネ 2019 公式サイトはこちら
石田博
合同会社 Soupless 代表、レストラン ローブ ソムリエ、社団法人 日本ソムリエ協会 副会長
1969年生まれ。数々の国内ソムリエコンクールを優勝。2000年には、第10回世界最優秀ソムリエコンクール第3位。2011年 厚生労働省 現代の名工、2014年11月 内閣府 黄綬褒章受章。同年 第7回全日本最優秀ソムリエコンクール優勝。2015年アジア・オセアニア 最優秀ソムリエコンクール優勝。2016年第15回世界最優秀ソムリエコンクール セミファイナリスト2016年6月より目黒雅叙園顧問。同年6月30日にレストラン ローブを開業。
