奇怪な用語が飛び交うワインテイスティング。フルーツや花ならまだしも、スパイスにミネラル、焦げ香??しまいには動物臭?! ですが、これにはきちんと意味があるのです。ソムリエ目線で、毎回難解なテイスティング用語や表現などを解明! あなたもイメージを膨らませてテイスティングに挑戦してみてはいかがでしょうか?
栽培、醸造、情報技術の進歩により世界のワインの品質は大いにボトムアップされました。小売価格2〜3000円で素晴らしいものが容易にみつかるようになっています。有力なワインメーカーはコンサルタントとして益々活発に世界中の多くのワイナリーを手がけ、見違えるようなワインを生み出しています。また、大手ワイナリーが新興国など海外への進出を果たしています。これも品質向上に寄与しています。
こういった革新が続くなか、昨今生まれるワインは似通ったところがあります。以前は「ニューワールドはグリップがゆるめ」といえましたが、そうじゃないケースが増えてきました。「オーストラリアやチリのシャルドネは酸味がまろやか」とはいえなくなっています。つまり、産地の個性を明確に捉えるのが難しくなってきているのです。そんな流れを打開すべくと言ってよいのでしょうか。「その土地ならでは」のワイン造りが一方では進められています。
リージョン(地方名)より、小さいアペレーション、さらにサブアペレーション、ゾーン、サブゾーン、シングルヴィンヤードといった、より限定したエリアからのブドウによるワイン造りはさらに進められてゆくでしょう。ヴァラエタル(ブドウ品種名表記)ワインに対して、ブドウ品種をブレンドすることで、オリジナルブランド名のワインをリリースするというのも目立ってきました。たとえばオーストラリアのマクラーレンヴェールのGSMは定着した感があり、エリアのアイデンティティを確立しました。シャルドネ、ゲヴュルツトラミナー、ピノ・ノワールといったこれまでの概念ではあり得なかったブレンドのワインも登場しています。前回取り上げたコナンドラムのようにブレンド内容を明かさないケースもあります。こういった流れは主にニューワールドでみられますが、オールドワールドでもポルトガルなどではフィールドブレンドと呼ばれる一つの畑に様々なブドウが混植されていて、そこからワインを造るというのもあります。ブドウ品種ブレンドのワインの良さは様々な個性の調和にあると思います。ラスティックな香りに上品さを与えたり、厳しさのある味わいに柔らかみを与えたり、ラズベリーのようなフレッシュ感とチャーミングさのある香りとブラックベリーのような濃縮感と深みが加わったりと、オーケストラのように調和を織り成すのです。
料理とのペアリングにも優位性を持ちます。料理は一つのフレーバーだけで成り立ちません。主素材に加え、調味料、スパイスやハーブ、ソース、付け合わせと様々なフレーバーが混在します。そこには単一品種よりはブレンドワインがより緻密なハーモニーを生みます。シト・モレスコ 2014は、中濃度のダークチェリーレッド。クリアでピュアかつ、深みがあります。フレッシュラズベリー、スミレ、丁子、ナツメグ、バニラと洗練された印象の香りに、プラムピュレや土、森のキノコ、鉄 分 といった複雑な香り。味わいは活き活きとして、フレッシュ感のある酸味が全体をリフトアップします。ボディはスムースで、つばの出るようなテクスチャーと酸味・旨みが残ります。タンニンは豊富ながら大変緻密で旨みと溶け合います。ネッビオーロという複雑さと厳しさをもつ個性にカベルネ・ソーヴィニヨンが洗練となめらかさ、メルローがフレッシュ感と果実味を加えている、ブレンドならではの調和が楽しめます。ピエモンテ発祥の伝統料理、鶏肉をトマトと白ワインで煮込み、エビやエクルビスと目玉焼きを添える、「マレンゴ風」とぜひ合わせてみたいです。
シト・モレスコ
シト・モレスコとは「モレスコさんの場所」という意味で、1979年にアンジエロ・ガヤ氏が買い取った畑の一つ、以前のオーナーファミリーの名前に由来しています。バローロのセッラルンガ村、バルバレスコのトレイゾで造られたネッビオーロ、メルロ、カベルネ・ソーヴィニヨンをブレンドし世界を驚かせたガヤの意欲作です。
「ブレンド」を感じるワイン
2014シト・モレスコ / ガヤ赤(イタリア ピエモンテ)
5,800 (6,264 円 税込