フランス・ボルドー地方の頂点に君臨する5大シャトーの一角、ラトゥール。
1855年に行われたナポレオン3世の格付けで第1級に評価されながら、今もなお進化し続ける脅威のグラン・ヴァンは、ボルドーのみならず、世界最高のワインの一つです。
今回の研修では、シャトー・ラトゥールの畑やセラーを見学。偉大なワインを生み出す秘密に迫りました。
シャトー・ラトゥールの歴史
ラトゥール(塔)の名が、文書に登場したのは1331年が最初。
元々防衛用の砦のようなものとして建築されたラトゥールは、フランスとイギリスの100年戦争において、このあたりの防衛の要だったそうです。
そして17世紀に入り、「われラフィットをつくりしが、わが心カロンにあり」という言葉を残した有名なセギュール侯の所有になり、現在のような高い評価を獲得します。
1767年には、なんと通常のワインの20倍の価格で取引されていたそうです。
その後、セギュール家による運営は20世紀まで続き、その後イギリス資本の参入などがありましたが、1993年6月、現在のアルテミス社に買収されました。
以来、ラトゥールの品質はめきめきと上昇し、歴史的にラフィットと筆頭としている1級の順列に揺さぶりをかける存在となっています。
偉大な畑「ランクロ」とは
「ワインの品質の8割は畑で決まる。」という言葉があるほど、ワイン造りに畑(仕事)の影響は大きいものです。
その点、ラトゥールの畑は、偉大なワインになることを約束されたものといっても過言ではありません。
シャトー・ラトゥールでは、全92haの畑を所有していますが、グラン・ヴァン用(1stラベル)には、ランクロと呼ばれる47haの区画のブドウのみを使用し、それ以外のワインに使用する区画とは完全に区別しています。
ランクロはメドック地区の中でも、特別に分厚い砂利質を持つことで有名な畑ですが、その偉大さ(特異さ)はエノテカスタッフでも一目でわかるほどでした。
他シャトーの畑にはないくらい大きな石が分厚く堆積しています。
そして、このランクロには、この分厚い砂利質に向くカベルネ・ソーヴィニヨンが支配的に植えられ、それがラトゥールの荘厳なスタイルに反映されているのです。
さらに、この優れた畑でラトゥールは2009年という早い時期から、ビオディナミで完全有機栽培を実践。
一般的にビオディナミは、通常のブドウ栽培に比べ数倍の労働力が必要といわれている上に、湿度が高くカビ病の蔓延しやすいボルドー地方ではさらに難しく、2018年現在でも極僅かなシャトーしか実践できていません。
偉大な畑と、手間を惜しまない畑仕事。品質を決める8割は間違いなく世界最高クラスでした。
超近代的な設備
前述のとおり、中世から高値で取引されてきたラトゥールのワインですが、1998年に新支配人フレデリック・アンジェラ氏が就任。今に至るまで、革新的な取り組みで品質を向上させ続けています。
その代表的な例が、2012年を最後にしたプリムール(先物取引)からの撤退。
一般的にボルドーのシャトーは、収穫の翌年に、まだ樽での熟成段階にあるワインをプリムールで販売します。
プリムールは、高級ボルドーワインが通常は収穫の約3年後にリリースされるために、収穫したブドウが収入となるのが遅いという問題を解決してくます。
それによって、シャトーの資金運営が楽になるため、ボルドー地方で伝統的に行われている慣行ですが、ラトゥールでは「飲み頃になった美味しいワインを販売したい。」という思いから、全てのワインを飲み頃までシャトーのセラーで寝かせることにしたのです。
熟成中のラトゥール。グレートヴィンテージと名高い2015年
これは、簡単なことのように聞こえますが、巨大な設備と資金力が必要になります。みなさんが3年間以上完全な無収入になるのを想像してみてください。
しかも、ラトゥールは「飲み頃」ということにこだわり、3年より長い期間熟成させてからリリースしています!
今回はそんな飲み頃に入る前のワインが眠るセラーを見学させていただきました。
さらにセラーの奥に進むと、美しくディスプレイされたコレクションルームも。ここには1800年代のラトゥールも保存されています。
まとめ
シャトー・ラトゥールがなぜ最高品質のワインなのか。それは、たゆまぬ努力とこだわり、そして神から授かった土地。全てが揃っているワインだからでしょう。
この記事を読んでいただいたことで、それが少しでも伝われば幸いです。
日常的には飲むことがないほどの高級ワインですが、特別な日には是非、シャトー・ラトゥールを選んでみてください。