「フランスの庭」と呼ばれる美しいロワール地方のワインの特徴とは?

ロワールのイメージ

フランスの北西部に位置しているロワール地方。

国内最長のロワール川流域には、ジャンヌ・ダルクがシャルル7世に謁見したシノン城をはじめとして、王侯貴族の住まいや防衛を目的として建設された城が100以上も立ち並び、多くの作家が愛したという美しい景観が広がっています。

今回はフランスを代表するワインの銘醸地でもあるロワール地方を4つの地区に分けて、その特徴をご紹介したいと思います。

ロワール地方の歴史

サンセール

1世紀から6世紀にかけて、大西洋近くのペイ・ナンテ地区にあるナンテや、ロワール川を上流に向かった先にあるアンジュー&ソーミュール地区のアンジェ、トゥーレーヌ地区のトゥールといった都市の近くにブドウ畑が存在したことが分かっています。ブドウ栽培を確立させたのはアウグスティヌス会やベネディクト会といった修道院で、輸出に水路を使用したため、ロワール川流域でワイン造りが発展しました。

ボルドー地方にも深い関わりのあるアンリ2世(ヘンリー2世)が1154年にイギリス王に即位したことで、英国宮廷やフランス宮廷でロワールのワインが多く消費されるようになり、品質の向上や生産量の増大に繋がりました。その後、輸出先の主要国であったオランダの商人が暗躍してブドウの栽培面積は拡大していき、1935年に制定されたA.O.C.(原産地呼称)では、Muscadet(ミュスカデ)、Quincy(カンシー)、Sancerre(サンセール)、Vouvray(ヴーヴレ)の4つがロワール地方では最初のA.O.C.として認められました。

ロワール地方の気候風土

ロワール

北緯47度前後というワイン産地としてはシャンパーニュに次ぐ冷涼な土地です。ワイン産地は、途中からトゥールからオルレアンに向かう本流流域と、ブールジュに向かう支流のシェール川流域とに分かれます。

西の海洋性気候から東の大陸性気候の気候に変化していくに従い、主要品種が白ブドウはシュナン・ブランからソーヴィニヨン・ブランに、黒ブドウやカベルネ・フランからガメイに変化していくという特徴があります。

ペイ・ナンテ地区の特徴

ミュスカデ

太平洋に近いロワール川の河口近くにあるナントを中心に、主要の白ブドウ品種の名前がつけられた産地・ミュスカデが広がっています。土壌はナントの北西部にあるアルモリカ山塊の火山岩である片麻岩や雲母片麻岩、花崗岩が主です。日照時間は長めで、ブドウ樹は海からの涼しい風を受けて成長します。

主要ブドウ品種はムロン・ド・ブルゴーニュ(ミュスカデ)、カベルネ・フラン、シュナン・ブランなど。ミュスカデにはシュール・リーという、醸造する際に発生した滓をそのまま底に残して旨味をワインに付加する製法が採用されています。これにより雑味を減らし、酸味を活かした軽快な白ワインが生み出されます。

主なAOC

Muscadet(ミュスカデ:白)

Muscadet-de Sévre et Maine(ミュスカデ・ド・セーブル・エ・メーヌ:白)

Gros Plant du Pay Nantais(グロ・プラン・デュ・ペイ・ナンテ:白)

Fiefs Vendé ens(フィエフ・ヴァンデアン:赤・白・ロゼ)など。

アンジュー&ソーミュール地区の特徴

ソミュール

アンジェから約40km上流に位置するソーミュールまでのこの地域では、様々な種類のワインが生産されています。土壌はスレート質の頁岩や、砂岩や石灰を含む片岩となっており、アンジェの東側にはテュフォーと呼ばれる白亜質の石灰岩の一種が見られます。これによって繊細なワインが生み出されます。海洋性気候で夏は暑く、冬は温暖。ソーミュール地区は海からの風が遮られるために半海洋性気候となっています。

主要品種はカベルネ・フラン、カベルネ・ソーヴィニヨン、ピノー・ド・ラ・ロワール(シュナン・ブラン)など。

主なAOC

Anjou Village(アンジュー・ヴィラージュ:赤)

Rosé d’Anjou(ロゼ・ダンジュー:ロゼ)

Saumur(ソーミュール:赤・白)

Quarts de Chaume gran cru(カール・ド・ショーム・グラン・クリュ:白甘口)

Savenniéres(サヴニエール:白)

Crémant de Loire(クレマン・ド・ロワール:泡)など

ロワール川の支流であるレイヨン川流域では、過熟したり貴腐化したピノー・ド・ラ・ロワールから秀逸な甘口の白ワインが生み出されています。

トゥーレーヌ地区の特徴

ブドウ

トゥーレーヌからオルレアンを目指し北上するロワール川流域に広がる地域です。西に位置しているアンジュー&ソーミュール地区同様に、多彩なスタイルのワインが生み出されています。土壌の母岩はパリ盆地のテュフォーで、表土は粘土石灰質やケイ酸混じりの粘土質となっています。温暖で湿度が高い海洋性気候と、降水量の少ない大陸性気候の両方に影響されています。

主要品種はガメイ、ブルトン(カベルネ・フラン)、ソーヴィニヨン・ブラン、シュナン・ブランなど。

主なAOC

Touraine(トゥーレーヌ:赤・白・ロゼ・泡)

Bourguell(ブルグイユ:赤・ロゼ)

Chinon(シノン:赤・白・ロゼ)

Vouvray(ヴーヴレ:白辛口~甘口・泡)など

Chinonはロワール川流域でも最高の赤ワインと名高く、カベルネ・フランから果実味溢れる重厚でバランスの良いワインが造られています。

サントル・ニヴェルネ地区の特徴

プイィ・フュメ

ロワール地方の一番東に位置し、フランスの中央部に位置しているワイン産地です。オルレアンから南下し上流に向かうロワール川流域と、その南を流れるシェール川流域にワイン産地が広がっています。土壌は粘土、石灰質、シレックス、砂利質など多彩で穏やかな大陸性気候ですが、冬と夏の気温差が激しい気候となっています。

主要品種はガメイやピノ・ノワール、ソーヴィニヨン・ブランなど。

主なAOC

Sancerre(サンセール:赤・白・ロゼ)

Pouilly Fumé(プィィ・フュメ:白)

Quincy(カンシー:白)

Chateâumeillant(シャトーメイヤン:赤・グリ)など

繊細で果実味豊かなSancerreとフュメ・ブランとも呼ばれるソーヴィニヨン・ブランから生み出されるPouilly Fuméが代表的な産地となっています。

まとめ

多彩なワインを生み出すロワール地方。ブルゴーニュやボルドーの影に隠れてなかなか注目されづらい産地ですが、長い歴史の中でヨーロッパの人々に愛されてきたワインが多く生産されています。

ショパンもこの土地を愛し、美しい景色にインスピレーションを得て多くの楽曲を生み出したと言われています。偉大な作家たちの創作に一役買ったと思うと、ロワールのワインをまた違った視点から飲みたくなってしまいますよね。

<参考>『2018 ソムリエ協会教本』一般社団法人日本ソムリエ協会

 

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