オーガニックなワイン造りを知る、5つのキーワード

ブドウ

除草剤や殺虫剤、化学肥料に頼らないブドウ造りとはどういうこと?
オーガニックな生産者たちが畑でどんな取り組みをしているのか、5つのキーワードで見ていきましょう。

おいしいワインは、自然界のすべてが生みの親!

ロマネ・コンティがコンサルタントに招いたことで知られる、土壌微生物学者クロード&リディア・ブルギニヨン夫妻。
80年代、夫のクロードは土壌内の微生物の数を計測。土壌は農薬漬けとなっており、「ブルゴーニュのブドウ畑に生息する微生物の数は、サハラ砂漠よりも少ない」と言及したそうです。(※)

オーガニックワインやビオディナミで最も大切にされているのが、環境における生物多様性。微生物を含めた様々な生物が豊かに暮らしてこそ、健やかな土が育ち、引いては健やかなブドウの樹と豊かな果実に繋がります。美味しいワインを造るということは、生産者たちの弛まぬ努力はもちろん、この世界の様々な生物の存在によって生み出されている、ということがオーガニック農業で実感することができます。

※参考資料:『フランス郷土料理の発想と組み立て〜 ビオワインの生産者15人がつくる50品のレシピ』 鳥海美奈子編 (誠文堂新光社)

keyword01 牛

牛

オーガニック農法において、牛は非常に大切な動物。
ビオディナミでは、雌牛の角に牛糞や調合剤を詰めて地中に埋め、春になってから取り出し、その中身を肥料として土壌にまきます。このようにビオディナミの調合剤で重要な役割を果たしているほか、たい肥としても使用されます。ガヤで肥料として使用しているのは牛糞。
たい肥はブドウの樹のみならず、雑草や土の中にいる微生物にも活力を与えてくれます。

牛

ちなみにシャトー・ポンテ・カネでは、ブドウ畑に調和と活力をもたらすため、牛や馬の他にロバも飼っているんだそうです!

keyword02 馬

馬

一般のトラクターは土を踏み固めてしまうことから、耕作に馬を導入するワイナリーが増えてきています。馬で耕すと、土に空気が入りやすく、柔らかでフカフカの状態になるとのこと。

ロデレールの馬

昔ながらの馬による耕作を行うルイ・ロデレール。

イル・ボッロの馬

イル・ボッロでは、馬での耕作を実験中。

ルイ・ロデレールシャトー・ポンテ・カネシャトー・ド・サン・コムシャトー・ラトゥールボデガ・チャクラなど、ビオディナミやオーガニックを導入する多くのワイナリーで馬による耕作を導入。

馬を何頭も飼育するワイナリーがある一方、従来のトラクターよりも土への負担が軽い軽量トラクターを導入しているワイナリーも増えています。

keyword03 雑草

雑草

数多くの生産者がオーガニック栽培を実践するピエモンテ。ピエモンテのブドウ畑の景観が特徴的なのは、ブドウの畝の間にも下草が生えており、一面緑色に見えること。

カヴァロットの畑

畝の間にも雑草が生え、一面緑色のカヴァロットの畑。

除草剤や化学肥料を一切使用しないバローロの生産者、カヴァロットの畑は下草が豊かに育ち、際立って濃い緑色に見えます。「地域レベルでこれだけナチュラルなワイン造りが実践されている生産地は世界的にも少ない」と、マッソリーノ現当主のフランコ・マッソリーノ氏。ちなみに、環境への配慮から、チリのモンテスではリャマ(ラクダの一種)に、ニュージーランドのシレーニでは羊に雑草を食べさせているそうです。エコですね!

keyword04 虫

虫

ビオディナミやオーガニック栽培では、ブドウに害をもたらす虫の駆除に殺虫剤ではなく、てんとう虫や環境のバロメーターとしてミツバチなどを利用します。

私たちが食べる野菜や果物の3分の1は、ミツバチが受粉することで実っていると言われ、ミツバチは農業において、実はとても重要な役割を果たしています。

養蜂

ボデガ・チャクラのミツバチの巣箱。モンテスやイル・ボッロでも養蜂を実践。

ミツバチの存在が大切なのは、蜂蜜を取るためでなく、生態系を維持させていることにあるのです。それに敬意を表し、アルゼンチンのボデガ・チャクラではブドウ畑にミツバチを飼っているそうです。

keyword05 土

ブドウの木

畑がバランスを崩し、様々な病害を発生することがあります。『ビオディナミ・ワイン 35のQ&A 』著者のアントワーヌ・ルプティ・ド・ラ・ビーニュ氏は、次のように言っています。「ブドウ畑が体調を崩す原因の八十パーセントは、人間と同じで「食生活」にあることがわかってきます。
(一部省略) ブドウにとって、バランスのよい、質の高い食べ物とは何でしょう。それは、自然の土、なかでも一般には見過ごされがちですが、貴重な働きをしてくれる土の中の微生物群です」(※)こうした理由から、ビオディナミやオーガニックでは、土の状態が最重視されています。

※ 引用(一部抜粋):『ビオディナミ・ワイン 35のQ&A』アントワーヌ・ルプティ・ド・ラ・ビーニュ著 星埜聡美訳(白水社)

ルイ・ロデレール醸造責任者に聞いた!自然農学者、福岡正信の教えとは?

福岡正信氏不耕起、無肥料、無農薬、無除草を特徴とする自然農法を確立した自然農学者、故・福岡正信氏。

福岡氏の教えは、世界のワイン生産者に大きな影響を与えています。ルイ・ロデレールの醸造責任者、ジャン・バティスト・レカイヨン氏もそのひとり。福岡氏の考え方から多くを学んだ、と度々言及しています。

レカイヨン氏が福岡正信氏のことを知るきっかけとなったのは、1990年、タスマニアでパーマカルチャー(持続可能な環境を造り出すためのデザイン体系)創始者である故ビル・モリソン氏に会い、福岡氏について教えてもらったことから。彼の豊かな生物多様性の考え方に魅了されたそうです。

「福岡氏の考え方と、ビオディナミは異なります。福岡氏は、ときには行動よりも忍耐(自然に対して何も手を施さないこと)が大切だと考えています。
一方、ビオディナミは自然界にあるものや調合剤を使い、エコシステムをより強化するよう、様々な行動を起こすことを重視します。そして、そこには厳格な規則や信念があります。ふたつの哲学は異なりますが、敵視しているのは同じ。それは単一栽培や工業的な農業だったり、生態系や生物多様性の欠如、農業における人間性の欠如だったり…。
結局のところ、両者は非常に似ているのです。福岡正信氏の農業は極めて理想的ではありますが、彼の考えは、私たちがどこへ行くべきか、ビオディナミはどうあるべきか、という視点をもたらしてくれます。ビオディナミを実践する際は福岡氏の考えを胸に、次のステップを考えることが重要だと思っています」

 

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