奇怪な用語が飛び交うワインテイスティング。フルーツや花ならまだしも、スパイスにミネラル、焦げ香??しまいには動物臭?! ですが、これにはきちんと意味があるのです。ソムリエ目線で、毎回難解なテイスティング用語や表現などを解明! あなたもイメージを膨らませてテイスティングに挑戦してみてはいかがでしょうか?
「ワインは時代を反映する」といわれます。1970年代はオイルショックによる経済恐慌でワイン商が破綻、結果ワインを寝かせておくことが難しくなり、熟成させなくても早くに飲めるワインが求められ、軽いスタイルとなりました。
アメリカ市場およびアメリカの批評家が強かった1990年代。ワインは色が濃く、アルコールのヴォリューム感豊かな、ポリフェノールたっぷりな赤ワインが求められます。いわゆるアメリカンテイストとフレンチパラドックスが主役になります。1990年代半ばのチリワインブームは「低価格ワイン」の市場席巻を誘引しました。ブドウ品種の個性が明解な親しみ易いワインです。
そして現代はというと、バランスのよさ、飲みやすさが求められるようになっています。カリフォルニアで起きた「IPOB」(In Pursuit of Balance = バランス重視)ムーヴメントは注目を集めました。ジャムのような香り、木樽がしっかり効いたワインという、カリフォルニアワインのイメージを払拭しようと、同志をもつ造り手たちが立ち上がったのです。近年では、批評家至上主義へのアンチテーゼ、環境変化などへ対応した「ニューカリフォルニア」と呼ばれるスタイルも注目されるようになりました。
これまでオールドワールド(ヨーロッパワイン伝統国)とニューワールドの違いとして明確であった、「香りの発散度合い」。ニューワールドのワインは香りの発散が強く、それが魅力でもありました。しかし現代では、インパクトの強い香りをもったワイン=ニューワールドとはいえなくなってきました。
そして、テイスティングターム(語彙)として、「Restrained=抑制された」がニューワールドのワインにも頻繁に用いられるようになりました。「香りのインパクトを求めてはない」と、生産者の方々からも度々聞くようになりました。
これもトレンドといえるものですが、食事の嗜好の変化とも伴っているものです。味付けの濃い(甘い)、ヘビーな料理から、より素材感あり、繊細な調理、味付けの料理が求められているのも世界的な傾向です。健康志向も手伝っているのは言うまでもありません。こういった食のトレンドがゆり戻ることは考えにくいですから、ワインにおける現行のトレンドはしばらく続いてゆくことでしょう。
フォルジュ・セラーズ、リースリング・クラシック 2015年は、熟度が高く、フレッシュ感があり、洗練かつ緻密。青リンゴ、白バラ、加えてコリアンダーやサンダルウッドの香りがアクセントとなります。全体に抑制された印象です。味わいはソフト、ふくよかな広がりをきめ細かな酸味が、流れるようなテクスチュアをつくるともに、全体にテンション(凛とした)を与えます。楽しみ方の汎用性が大変高いワインで、テラスやアウトドアでしっかり冷やして楽しむのもよいですし、おもてなしにも最適です。
洗練されたランチから、高級レストランのディナーにも相応しいと思います。これまで、ブドウの成熟には冷涼過ぎて、品質の高いワインを造るのが困難だった産地が、温暖化の影響でそれが可能になった、ニューヨークのリースリング。そんなストーリーは飲み手を惹きつけてくれるはずです。
「抑制」を感じるワイン
リースリング・クラシック / フォルジュ・セラーズ
(アメリカ ニューヨーク フィンガー・レイクス)
ジゴンダスの天才と称されるサン・コムのオーナー、ルイ・バリュオール氏が世界中を探して発見した新天地、ニューヨークで2011年から手がけるワイナリー。
こちらのリースリングは、リリース早々ワインスペクテーターの「2017年世界のワインTOP100」にて31位に選ばれるなど、大注目を集める1本です。